第9話 偽聖剣物語

「本物の聖剣が消えただと!」


「はっ」


「それで持っていったのは勇者なのか?」


「違うようです」


「なら問題ない、大方封印が緩まって剣の上級者が持っていったのだろう? 気にする必要は無い..だが念の為行方を追ってみてくれ」


「はい」




勇者ルードルが聖剣を岩に刺した。


聖剣が要らなくなり平和な時代が訪れた時、聖剣はその使命を終え眠りに入る。


その時の眠らせ方は勇者が選ぶ、教会に預ける者、湖に沈める者、聖剣に思いを込め眠らせる事が多い。


ルードルは聖剣を相棒の様に思っていて「見守って欲しい」そう考え、自分の故郷であるアルフの大岩に突き刺した。


こうして聖剣は次の魔王が現れるまで眠りについた。


魔王が居ない以上、ルードルでももう聖剣は抜けない。


この聖剣が必要になる時は魔王が復活した時だ、そう考え自分のスキル等も剣に付与し、自分は残りの生涯を農夫として過ごした。


それから月日が流れ、再び魔王が復活した。


その魔王の名前はマーケル、自分自信が今迄で最弱の魔王である事を知っていた。


だが、この魔王は能力が無い物の魔族を凄く愛していた。


どうせ戦っても自分は殺されるだけだ、そう思ったマーケルは此処で思い切った手を使った。


それは、聖剣そっくりな剣を作らせ、本物の聖剣とすり替える方法だった。


聖剣とすり替えるのだから鈍らでは直ぐ気づかれる。


だから、その素材に自分を使い、そしてその能力の付与に攫ってきた聖職者20名の魂を使った。


魔界1の職人に最強の剣として打たせた。


更に、聖の力が使える堕天使に聖印を刻ませ、鑑定であっても絶対に見破れない偽聖剣を作った。


そして、聖都教会への帰還能力も付与した。



自分が現れた..だから勇者に選ばれた者があの聖剣を抜きに行く。


そのチャンスこそがすり替えるチャンスだ。


聖剣はそれこそ神でも無いと壊せないし、場所も動かせない。


なら、その聖剣を偽物としてしまえば良い。


人間が魔王を倒すには 聖剣 勇者 聖女 賢者が必要だ。


その中から「聖剣」が無くなれば、魔王は倒せない。



やがて勇者が現れ聖剣を抜こうとした。


大岩から聖剣を抜こうとしたが抜けない。


勇者ロウガは慌てだす。



抜ける筈は無い...魔王が死んでしまった今、聖剣もまた眠りについた。


もう魔王が死んでいる以上、本物の勇者でも抜けない。



今回の作戦の為にこの街の聖職者を殺して入れ替わった。


「勇者様、聖剣が入れ替えられた可能性がございます」



ついていた、今回の勇者は1人で剣を抜きに来た。



「何だって! それで本物の聖剣は何処に!」


「それがこれが本物だという者がおります」



ロウガがその剣に触ると剣は光り輝いた。


「これこそが本物に違いない!」


偽の聖剣は魔王から作られている、だからこそ勇者を感じて光る。


用意周到に魔族は魔王が居るように装って戦った。


それがマーケルの意思だった。


そしてロウガはその策略にまんまと嵌り用意された偽の魔王を倒し凱旋した。


偽の魔王を倒した偽聖剣は、聖都教会へと自ら帰還した。




これが、人類で最後に魔王に勝ったとされる勇者ロウガの真相だ。



これ以降、勇者が魔王に勝てることは無くなった。



この偽聖剣は凄く質が悪い事に、魔王と戦う時までは、聖職者と堕天使のせいでほぼ聖剣なのだ。


魔王と戦う時に本来今まで以上に力を発揮する筈の聖剣が裏切る。


見かけは今迄と同じに光り輝く、だが元の剣の1/50以下の力に落ちる。


魔王が強いのではない、只の鈍らで斬りつけるからこそ通用しない..それだけだ。



だが、この真相を知る者は人間には居ない..


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