第8話 忘れられた聖剣
僕ちゃんは今、丘に来ている。
それは、今日朝飯を食べている時に面白い噂を聞いたからだ。
その内容は、大きな石に聖剣が刺さっているそういう噂だ。
その聖剣はその昔、勇者ルードルが石に突き立てた物らしい。
今ではこれが観光になっていて、銅貨3枚で剣を引き抜く事に挑戦する事が出来るとの事だった。
勇者ルードルが剣を刺した後に「この剣に俺の全てを残した、相応しい者が手にした時にこの剣は抜けるであろう」そう言ったそうだ。
その為、この剣を抜けば「勇者になれる」とか剣の達人になれる。
そういう伝説があるそうだ。
僕ちゃんの剣聖は凄く費用対効果は悪いんだ。
剣を完璧に使いこなす代わりに剣を限界まで使いこなすから剣が直ぐに壊れてしまう。
だから壊れない丈夫な剣は喉から手が出るほど欲しい。
「さぁ見て行ってくれ、銅貨3枚で聖剣にチャレンジ出来るぞ、見事抜く事が出来れば聖剣は貴方の物、もしかしたら勇者になれるかも知れない」
この商売が始まって250年誰も抜けない。
そういう話らしい。
良い商売だよね、だけど聖剣かどうかは解らないけど、250年経ってこの状態なら自動修復が付いているに違いない。
普通に250年経っているなら錆びて朽ちる。
朽ちないという事は最低でもミスリルレベルの素材は確定だろう。
思ったより繁盛していない。
多分もう抜けないと諦めているんだろう。
「僕ちゃんも挑戦して良いかな?」
「はいよ銅貨3枚ね..抜けたら勇者だよ、頑張って!」
僕ちゃんは剣聖だ。
聖女よりも賢者よりも勇者よりも剣聖が優れた点が一つある。
それは剣だ。
剣だけなら僕ちゃんは誰にも負けない。
「はい、3枚」
「頑張ってね」
僕ちゃんは剣を握り、剣と心を併せるようにした。
他の人間には感じられないかも知れないけど、剣には心がある。
良い剣には作り手の想いが込められている。
その剣の想いに答えるように振る。
それが重要なんだ。
見つけた。
そんな声が聞こえた気がする。
その瞬間、剣が光り輝き岩からスルリと抜けた。
「うん、抜けた..これでこの剣は僕ちゃんの物だね!」
「そんな、そんな、剣が抜けちまうなんて..あああっ俺の商売が終わってしまった..ああ250年の我が家の歴史が終わった」
何だか可哀想になったから収納袋から一番安い鉄の剣を刺してあげた。
「僕ちゃんの名前はソード、剣聖だから、剣聖が刺した剣として商売すると良いよ」
まぁ錆びるけどね。
まだブツブツ言っていたのでそのまま立ち去った。
この剣を知る為に街の外に出た。
しかし、凄い剣だ、僕ちゃんが今迄手にした剣で一番かも知れない。
セトが持っていた聖剣より上かも知れない。
軽く振るだけで、大木が斬れた。
強く振ると風が起り、更に強く振ると風の刃が木を切り裂く。
同じ事が他の剣で出来るかと言えば出来るが、鋼鉄の剣でも同じ事を2回もすれば恐らく壊れる。
それなのに、この剣は刃こぼれもしない。
僕ちゃんは 鑑定(剣特化)を使った。
これは剣聖のジョブを貰った時に身に着いた物。
他の物を鑑定したら名前位しか解らない。
だけど、剣に関してなら 鑑定(上級)すら上回る。
忘れられた聖剣(真聖剣)
攻撃能力 SSS(1万)魔族を斬る時上昇値あり。
特殊能力:不破(人界に置いて壊す事は不可能) 自動修復 極み(粉々に破壊されても復活する)
聖なる加護 聖魔法付与 光魔法付与
所有者:ソード(他の者が振るう事は出来ない)
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可笑しい、僕ちゃんの 鑑定(剣特化)でも読み取れない何かがある。
更に言うならこの剣の由来が何も読み取れない
だけど読み取れた情報だけでも凄い、どう考えてもセトの持っている聖剣を越えている気がする。
これがあれば、多分セトには負けない気がする。
少なくとも勇者ルードルが振るっていた剣だから聖剣。
だけど、忘れられた聖剣、その意味が解らない。
この場所に聖剣がある。
それは皆が知っているし、勇者ルードルの剣と言うのは有名だ。
なら「忘れられていない」
それなのに「忘れられた聖剣」というのはどう考えても可笑しい。
まぁ、解らないし僕ちゃんが考えても仕方ないよね?
今はこの素晴らしい剣が手に入った、それだけで良いよー
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