第2話 僕ちゃんの言い分
僕ちゃんがお金を貰うのにはちゃんとした理由があるんだよ?
それは僕ちゃんだけ他の三人よりお金が無いからだ。
だって、さぁ
勇者は国が後ろ盾になるからお金が使い放題。
勇者保護法とかあってお金は使い放題、更にセトの実家は貴族だから「勇者」になったセトには幾らでも支援するんだ。
聖女には教会が後ろ盾になっているんだ、聖なるが売りだから、贅沢は出来ないけど、困らない金額が何時も支援される。
教会が行く先々で困った事が起きると、支援してくれるから全然お金に困らない、教会から良く金貨入りの袋を貰っている。
賢者は魔道研究所やアカデミーが支援しているから研究と言う名目でお金が使い放題。
毎月決まった金額が入ってきている。
それに比べて僕ちゃんは孤児だったから支援してくれる人は無い。
国から、僅かなお金が貰えるだけなんだよ。
しかも、このパーティー、貴重な素材が手に入っても「王が必要だから」「教会で必要なの」「アカデミーで要請が入っています」なんて言ってお金に変えないで送ってしまうんだよ。
だから、素材のお金は僕ちゃんには入って来ない。
勇者の使っている聖剣は手入れしなくても自動修復がついているし、聖女や賢者の杖は手入れが基本要らない。
だけど、僕ちゃんの使う剣は手入れも必要でお金が掛かるんだ。
簡単に言うと「剣聖」の僕ちゃんだけお金が無いのに支出が凄く多い。
他の三人の様にお金なんて要らないとは言えない。
この間の村のオークの巣の討伐だって、僕ちゃんが無理やりお金をとった訳じゃないよ。
余りにお金を持ってない僕ちゃんが不憫だから村長が「これを使ってくだされ」と銀貨2枚くれただけなんだよ?
一応、僕ちゃんも断ったよ?だけど、「どう見ても剣聖様の方がお金にお困りですから」と渡されたんだ。
「幼い子に体を求めた」だって誤解なんだよ。
あの子はああ見えて16歳で未亡人なんだ。
(注意:この世界では15歳で成人です)
セトは良いよね、聖女も賢者も恋人だから毎晩の様に部屋でアンアンギシギシやっているし。
この旅を初めてもう3年、毎日の様にそれを聞かされている僕ちゃんはどうすれば良いんだよ。
村で泊っている時にいつもの様にやりだしたから、外に出たんだよ。
そうしたら、「剣聖様、いつも1人でお辛そうですね」と彼女が声を掛けてくれたんだ。
生まれて初めて女の子を抱いた。
だけど、何だか悪い事したのかな? そう思って聞いたんだ。
「僕ちゃん、みたいな男の相手なんて嫌じゃ無かったの?」
「うふふ、嫌だったら誘いませんよ? それに剣聖様って話し方は変ですけど、お綺麗ですよ! 綺麗な銀髪に女性みたいに白い肌、本当に帝都の役者さんみたいです..寧ろ私みたいな田舎娘で未亡人が相手では勿体ない位です」
「そんな事ありません、君は凄く可愛いと思うよ!」
「本当に? だったら夜は永いですから朝まで一緒にね!」
生まれて初めて女の子と経験した。
何回か体をを重ねた後、聞いたんだ。
「僕ちゃんが剣聖だから相手してくれたの?」
「ソード様位お綺麗な方なら村人でも関係ありませんよ..だけど剣聖様だからという下心もありますね」
「どうして?」
「だって、剣聖様との間に子供が生まれたら必ず剣術系のジョブがつくんですよ、そんな子供、女だったら欲しいに決まっていますよ」
話を聞くと勇者、聖女、賢者の三大ジョブは「魔王討伐の為のジョブ」だから子供には引き継がれない。
だけど、剣聖は「常時ジョブ」だからかなりの確実で生まれた子に剣術系のジョブがつくのだそう。
「それなら良かった」
「全く、魔王討伐の旅をしていないなら、夫になって貰いたい位です!もう少し剣聖様は自分の魅力に気が付くべきですよ!」
「ありがとう、本当にありがとう」
「嬉しいのは私の方です..それじゃもう少し頑張りますか?」
気が付くと朝になっていた。
「魔王討伐が終わったらもう一度ここに来ても良い?」
「剣聖様が覚えていてくれたら寄って下さい、これからも過酷な旅を続けるんですから忘れても文句言いませんわ、うふふふっ」
もし子供が出来ていて彼女が一人だったら僕ちゃん、結婚を申し込んでも良いかも知れない。
魔王討伐で死ぬかもしれないから「待って」とは言えないけどね。
これが何で僕ちゃんが悪い事になるんだろう。
話し方が気持ち悪いって言われても。
僕ちゃんは孤児だったんだ。
育ててくれたシスターが敬虔な人で「俺」って言うと「ソード君が不良になった」って騒ぐから「僕ちゃん」を辞めれなかった。
まぁ今でも「ソード君可愛い」って連呼する人だし、育てて貰った恩があるから「俺」って言えなくなっちゃったんだよ。
勇者であるセトより弱いのは仕方ないと僕ちゃんは思うよ?
聖剣に守られているんだから、木刀勝負なら僕ちゃん負けた事は無いよね?
いつも僕ちゃん、ルシオラちゃんもユシーラちゃんも守ってあげたよね?
回復魔法も、防御魔法も最低限しか掛けて貰えなくても..何時も傷だらけになってさぁ。
セトにはすぐに魔法を使うのに僕ちゃんは薬草でいつも賄っていたよね。
それでも、駄目だったのかな。
魔剣グラッドだって僕ちゃんが1回だけ貰った物じゃないか。
3年間旅をしてたった1回貰っただけの物..それすら僕ちゃんから取り上げるんだ。
もう良いや..三人に何を言っても無駄だよね..
どうせ僕ちゃん、要らない子なんだよね..
「お世話になりました..さようなら」
三人から返事も無かった..そのまま、僕ちゃんは立ち去った。
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