第22話レックスの対策




「離して下さい坊ちゃん……今ならまだ間に合います」


 騎士は冷たく……しかし、子供に諭すような口調で俺を突き放す。


「嫌だよ……みんなで助かる道を探そう!」


 俺は必死に頭を働かせる……


「アナタの命はアナタだけのモノじゃない! 貴族って言うのはね、自分を捨ててより多く人間を救わなくちゃいけないんだ……今ここで高々数百を救うために金がかけられた訳じゃねぇ! 数万……いやこの国全ての人間を救うために数百を……俺達を見殺しにしてください」


 騎士の言葉には合理性がある……人間は合理的と感情と言う相反する判断基準を持っている厄介な生き物だ。

 でも、合理性だけで最終的に判断できないのが人間だ……だから俺は我を通す……


「俺にそんな期待されても困るな……俺は知らない数万の命よりも知っている君達のために命を賭けたい……こんなワガママ言っちゃダメかな? ……」


 騎士達だって死にたくない。

 それは生物として当たり前の感情だ。

 でも、親や恋人と言った大切な他人のために自らの命を天秤にかけ俺を選んでくれた。それは素直に嬉しい。


「騎士として……騎士としてはっ! 認める事は出来ませんが……一個人としては坊ちゃんのそう言うところは好ましく思います……」


「だったら……俺と分の悪い賭けをしよう全員で生き残るか全員で死ぬかだ」


「あなたもイオン様同様に頑固な人だ……」


 村に着くまでに確認をして往復約2時間……今までの戦闘で1時間弱。冒険者が異変に気が付いたと言う、狼煙を屋敷の兵や騎士が見ていれば、完全武装でこの場に到着するのに最短4、5時間……分の悪い賭けではないな……


 騎士は思考を巡らせる。


「分かりました。坊ちゃんにも戦って頂きます。魔術主体でお願いします……進化種相手に庇えるほど私は強くないので……」


「あぁ……判った……」


 俺もこれ以上ワガママを言うつもりはない。騎士とは言っても俺のようなご落胤の警護に付いているような奴らだ。本邸や本家の屋敷にいる騎士と比べれば数段落ちる腕前と見た方がいい。別宅の騎士にとっては、進化種は対処が難しい……飾らない言い方をすれば手に余る相手なんだろうが主人公達のパーティーであれば言い方は悪いが雑魚になる。


 ゲーム的に言えば最下級職で、序盤の後半の敵と戦うようなものだ……幸いゲーム時代では、武器の攻撃力がいかに低かろうともダメージを与える事は出来た。召喚魔術で三体火力を呼んで薙ぎ払えばもしかしたら勝ち目があるかもしれない。


 一応奥の手としておこう……


「前衛は、片手剣士の俺と戦斧使いのヴォーギン、中衛に御者で元騎士のジョージさんと槍術士のケヴィン。後衛に坊ちゃん」


 重装の鎧を身に纏った巨漢の騎士ヴォーギンは、巨大な両手斧と大盾を片手に持ち発言を始める。


「俺の戦斧で奴の貧弱そうな後脚を狙い態勢を崩す」


 初老に差しかかった白髪の元騎士で、現在は御者をしているジョージは背中に背負った。複合弓コンポジットボウを手にする。


「では、ワシが弓で奴のツラを狙う……運が良ければ目を貫きスキを作れるだろう……それにワシには毒矢もある! 彼奴きゃつの動きを鈍らせる程度は出来るだろう……」


 中装の鎧を身に纏い、中槍に大盾を装備した爽やかな好青年が声を上げる。


「爺さん、もう歳なんだから無理するなよな……隊長……俺はジョージ爺さんと坊ちゃんを守りながら、槍で最低限のけん制とウィークポイントを狙いつつ大盾で奴の息吹【《ブレス》】を防ぐよ」


「じじい扱いするな! 見て居ろ! 奴の眼球を見事射貫いてくれるわ……昔本家の当主様より下賜された。彼の辺境の砦で倒されたモンスターの角珍しい樹木で作られた複合弓で射殺してやる」


「ジョージさん。俺達だって若……イオン様から前線都市アリテナのモンスターの素材で作られた装備を戴いている……そう簡単にやられるつもりはありませんよ。俺は皆のフォローに回るが……メインはヴォーギンの補助に回る……坊ちゃんは魔術とサラマンドラで援護をお願いします。もしもの時は逃げて下さい。最悪の場合ゴーレムを呼び出して防いでください」


「分かった」


 思い出せ。思い出せ。思い出せ!!

 ティラノサウルスや類似する恐竜の弱点を……最高時速は近年の学説では最高時速30kmで長距離走行が得意と言う説がある。俺は時速15km説を押しているため人間と比べてもやや鈍足と言える。


 ジュラ〇ックパークではティラノサウルスは、止まってるものは見えないと言う設定だったがそれはあり得ない。

 鷲よりも良い眼と鼻の幅が狭い事で、ワニのような開けた視野を獲得しており、優れた立体視能力と視野を誇っている。まぁ……ノベライズ版ではカエルのDNAで欠落したDNAを補ったから、そうなってしまったと説明れていたが……


 ティラノサウルス体高5メートル。全長13メートルは、兎に角骨折が多いと聞く、とりわけ鎖骨の骨折が多いらしい。奴も目測だが体高4メートルはあるから奴も似たようなものだろう……。

 

 やはりあの巨体を支える脚と、大きな頭部とバランスを取るために長く発達した尻尾が弱点だろう……


 よし、決めた俺の狙うのは……


 俺はとある作戦を立てた。




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【あとがき】


まずは読んでくださり誠にありがとうございます!


読者の皆様に、大切なお願いがあります。


少しでも


「面白そう!」


「続きがきになる!」


「主人公・作者がんばってるな」


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