第2話鋼の槍
俺は今、目の前で起きている現実を直視出来ずにいた。
なぜゲームの世界に俺がいるのだろう? と言う当たり前の疑問のせいで俺の思考は鈍ってしまった。
「シャオン。アナタこんな所に居たのね……お母さん心配したのよ?」
盛土の上の道から女給服を着た。見目麗しい女性が、俺に声をかける。
耳はロバのように長く尖っており、多くの人間がイメージするエルフと言った容姿であり彼女の存在で確定した。
やはりこの世界は地球の中世ヨーロッパ世界ではない。この世界は、ファイアーファンタジークエストの世界と見て間違いない。
「ごめんなさい。ママ」
俺は素直に謝罪して女給服を着た母に付き従村の中を歩く……
「料理長から牛乳を5L、バターを100g、チーズを1㎏、ワインと蜂蜜を貰って来るようにと言われているんですから、男手として付いて来たシャオンには、キッチリと働いて貰わないと困るんですからね……」
――――などと言っているが、ゲーム本編のシナリオが始まる前の今の状況を知るはずはないのだから、そんなことを言われても正直困る。
サブキャラである。【槍使いシャオン】が高位貴族とそのメイドの息子と言う設定は、どこかで見た事があったがまさか魔術が得意な種族である。エルフとの混血児だとは知らなかった。
正直外見は美形ではあったものの、エルフ特有の長い耳をしていなかったからな。公式から出ている攻略本でも買わないと、載っていない情報だろう……
「ごめんなさい。ママ」
俺は謝罪の言葉を口にして、彼女の後ろを着いて歩く。
この世界には数多くの亜人種がおり例えば、長命で魔術に優れたエルフ族、敏捷性が高い獣人族、膂力が高く背の低いドワーフ族、長命で最強の攻防力をもった竜人族など多種多様な種族がゲーム上存在していた。
その中でもエルフは遠隔攻撃に優れていたので、メインキャラクターはエルフを使用していたが、NPC《ノンプレイヤーキャラクター》専用種族というものも存在していた。それがハーフ種。人間族と他種族の混血であり、両者の特性を併せ持つため基礎能力が高い傾向にあったのだが……まさかエルフ種との混血だとは知らなかった。
だから槍使いでも魔術攻撃の威力が高かったのか……と今納得する事ができた。
俺はメイドである母の荷物を持って荷馬車に積み込む。
荷馬車と言っても引いている獣は、馬ではなく毛むくじゃらな牛のような生き物なのだが。
馬車に揺られて俺達は道なりに進んでいく……
「あらモンスターね……珍しい」
俺には何も見えないが、エルフ族である母にはモンスターが見えるらしい。もちろんスキルを使用した上での事だろうが……
「危険がないなら放っておこうよ……」
――――俺は命がかかっているのだから、慎重に行動するべきだと思って提案した。
しかし――――
「いい機会ね。シャオンあの孤立したモンスターを倒しない。ホラ早くなさい!」
まぁ確かにいい機会か……イベントで死ぬ可能性を潰すために一番手っ取り早い事は強くなる事だ。ボーナスと思って倒すとするか。
「コレを持っていきなさい……」
そう言って手渡された木箱の中には、革製の鎧が一式入っており、馬車の荷台には、よくあるRPG で城の兵士が持っているようなデザインの真新しい両刃の槍だった。
これはゲームでは【鋼の槍】と言う名称で、純粋な金属系の武器では序盤では中々優秀な武器であり、防御力も付属の盾は高くまさしく汎用性の高い優秀な武器と言える。
レザー装備一式も初期装備と言えるものだが、モンスター相手ではないよりはマシである。
ゲーム内では装備なしのいわゆる全裸プレイと言う縛りもあったが、この世界は現実である。いい武器にいい防具を使うそう。そうしなければ生き延びれないそう言う世界なのだ。
「これは?」
「あなたへのお祝いよ。貴方は使用人ではないし……あの人の子供だけど貴族ではない。だから将来の道は自分で切り開かないといけない……だからその手助けになりそうなものを揃えたのよ……」
ゲーム時代には片手剣、槍、大剣はガードモーションが存在し、敵の攻撃を軽減もしくは無効化できて、操作も簡単でモンスターの隙を付いて殴って盾を構えると言う、ヒット&ウエイ戦法が強く初心者向けとされており、公式でも盾持ち片手剣が主人公の公式立ち絵装備だった。
「本当は剣にしようと思ったんだけど……値段が張ってしまって、弓矢・ボウガンは消耗品だから……それで値段が安くても初心者向けって聞いた槍を買ったの」
ゲームと同じ値段設定なら、一番安い剣なら鋼の槍よりも安いのでハズだ。
恐らくは親心として傷ついてほしくない。死んでほしくないと言う理由で身を守れる武具である槍を選んだのだろう……ゲーム序盤のキャラクターで死ぬシャオンが槍を使っていたのは、初心者向けの武器だからだと思っていたが、こういう裏設定があったのか……と俺は思わず感心してしまった。
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