第3話初陣ラプファング
あの村は主人公が生まれた村だ。だからこの道には、チュートリアルで出現するレベルのモンスターしか出現しないハズだ。
この肉体……シャオンの母が見たモンスターは恐らくは、猪型のモンスターであるブルホーンか、恐竜型――その中でもラプトルの様な見た目ををした。下位の竜種であるラプファング程度で、ゲームでは序盤の良い経験値で防具の素材程度の認識だったが、実際問題イノシシやラプトルを相手に、槍と盾のみと言うのはいささか不足に感じる。世界観の都合であっても楽をするために銃ぐらいは欲しかった。
ゲームではブルホーンもラプファングもレベルで言えば、5~15レベル程度と幅はあるものの基本的に、序盤の敵なのでステータスは高くない。
「シャンとしなさい! ラプファングの一頭や二頭相手にできないと、冒険者には成れないわよ!!」
――――と檄を飛ばされるが、正直に言って勝てる気がしない。
普通に考えて恐竜に、人間が勝てる訳はない事を世界的大ヒット映画で学んだ。
ぼう恐竜パークのカラー版リメイク一作目における。ヴェロキラプトルとティラノサウルスを見れば、誰だって同じ感想を抱く事だろう……。
まぁ3作目は最近復元図が大幅に変更されて、ウナギのような尻尾に改造されたスピノサウルス無双だったが……それとワールド版も比較的好きな映画だ。
正直に言えば近づきたくないので、出来ればボウガンか弓でチクチクと攻撃をしたいところだ。
俺がウジウジしていると……
「はぁ……仕方ないわね……アナタには己の力量を知り自らの程度を弁えて、恐怖を乗り越えて勇気を手に入れて欲しかったんだけど……仕方ないわね……」
母は呆れたような口調でそう言うと、両手を開いて俺にかざし魔術を発動させた。
「ファストアタック、ファストガード、ファストスピード」
それはゲームでは最下級に位置する。単体・
「これで、攻撃力も防御力も速度も向上したわ……後はシャオンの腕しだいよ……行きなさい」
俺はもう何を言っても無駄だと思ったので、大人しくモンスターを倒すことにした。
「はぁ……行ってくるよ……」
俺は槍を手にしてモンスター目掛けて進んだ。
◇
俺は考えたどうすれば、安全に狩猟を終える事が出来るだろう……ヤツの爪は脚も腕も数センチにも及ぶ鋭利なかぎ爪状になっており、攻撃を受ければ肉は抉れ傷跡が残る事は容易に想像できる。
ゲームでは『毒』の描写はなかったが、現実世界において恐竜に見た目だけは一番近い爬虫類、それに鳥類は雑菌の温床と言えるほどに汚く、インドネシアのコモド島等の島に生息する。コモドオオトカゲ《コモドドラゴン》は、口内に7種類以上の腐敗菌が増殖しており、噛み付かれた獲物は敗血症を発症させ捕食する……と考えられていたほど不衛生であるので、新型が世間を騒がせている某、新型日光冠ウイルスで除菌、殺菌、抗菌を改めて叩き込まれた現代人にとっては、今まで以上に忌避すべき対象と言っていい。
安全に狩猟するためには、一撃で命を奪うために頭か心臓を潰す事が最も効率的だ。次点で足を狙い移動能力を削ぐ事と言えるだろう……
ゲームのモンスターであるラプファングに類似した多くの恐竜は絶滅しているが、実際は生き残りが存在する……鳥類だ。
鳥類はラプトル系統の一種である始祖鳥 (時代で種族は変わるが、それはより古いモノが発見されただけで) から進化したものであり、鳥類は恐竜のグループの一種である
現在ティラノサウルスに最も近い歩行方法と言われているニワトリの視野は、有効視野が左右合わせて23~26度と言われており、他の生物と比べてもかなり視野が狭い生物だ。
しかし奴らの目は紫外線を知覚することでより明るく視ることが出来、首を振る事で疑似的に視野を広げているのだ。
実際目の前に居るラプファングも、鳩や鶏のように首を振っているし歩いている時は顔を突き出して、パントマイムのようにその場に頭を固定して体を持ってくると言った動きをしており、脚の着き方のお陰で静かに歩いている。
俺は生唾をゴクリと嚥下した。
「はぁ……はぁ、はぁ……」
喉がカラカラに乾いている。酷く緊張しているせいだろう……手汗も足の裏にも酷く汗をかいている。
逃げたい。
正直に言ってこんなバケモノと戦うぐらいなら、もっと手ごろな小型モンスターを狩って経験値を獲得したい。
異世界に転生しての初戦で1メーター強はある。ラプトルと戦えは流石に鬼畜ゲー過ぎる。
しかし、この程度の苦難を乗り越えられないようでは、コレから先に起こる事がほぼ確定している死亡イベントを乗り越える事は、今眼前に居る脅威よりも困難である事は想像に難くない。
俺はラプファングの左後ろにある岩陰に隠れて機会を伺う……
脚が止まり仕切りに鼻先を地面に擦り付けている。
良くは見えないが舌をチロチロと出して、トカゲや蛇のように匂いを嗅いでいるのかもしれない。
恐らくは、エサを見つけたのだろう。地面の穴に口先を突っ込んで小動物を捕食しようとしているようだ。
「ふーーーーーっ」
俺は息を整えて槍を構える。盾はバックラーで手に革ベルトで固定してあるので、両手で槍を操ることが出来る。
右手は添えるだけ、左手で槍の柄の後方を持って俺は岩影から飛び出して、行き良いく『
イメージは槍術の最下級スキル『疾風突き』の要領で、威力は低くてもいいから狙ったところへ、最速の一撃を叩きこむつもりで放った。
刹那。
槍の穂先が光りを放つ。
ブスりッ!
硬いナニカに当たった手触りが、穂先から柄に伝わって来るが構わず奥に差し込む。
「ギョエェェェェェェェェエエエエエエエエエエエエッ!!」
ラプファングは、耳を
表情とは言っても、鳥類は少しでも体を軽くするため表情筋は殆どない。しかし翼を持たないラプトルであれば鳥よりは表情がある。
恐らくは原始鳥類の近似種である。オヴィラプトルを含む一部の羽毛恐竜の近似種と類似した特徴を持つであろう。このモンスターにとっては犬の尻尾のような、感情表現を司る求愛器官と見てまず間違いはないだろう。
動物が好きだった俺の知識では、猛禽類であるオウム科の鳥は冠羽が全開に開いていいれば、恐怖や驚き、好奇心を表すサインなど冠羽である程度感情を読み取る事が出来るらしく、今回のラプファングの感情表現も類似しているようだ。
槍の穂先は、見事ラプファングの脚の付け根に刺さっている。
今だ!!
俺は槍の柄の後ろの方を左手で持つと、そのまま体重を乗せて刃を斜め上方向――――いわゆる剣術で言うところの逆袈裟斬りの方向に、槍の穂先に着いた刃を動かして、ラプファングの筋肉その深層部を切り裂き、出血と痛みで移動能力低下をする事を狙う。
――――ザクリ!
刹那。
血飛沫が舞い。
まるでシャワーや噴水のように、勢い良く鮮血が噴出する。
どうやら太い血管を切り裂くことに成功したようだ。
ゲーム的に言えば、異常状態の出血と脚部の部位破壊と言った所だろうか? 恐らく後数分時間が経過すれば、出血死させることが出来るがそんな事をしてはもったいない。
前世での俺のゲーム知識を試すことが出来る。またとない絶好の
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