第5話 夢宮ソウゴという残念な男
俺はファイナルゼータの掘っ立て小屋で目を覚ます。
朝が来た。至急されたカップ麺を作るべく。
ポットからお湯を注ごうとして。
少し照準がズレて手にかかった。
「あっづ!!!!」
寝ぼけまなこでやったのがまずかった。急いで水で手を冷やす。
すると台所の窓から。
「Here's Johnny!」
「ぎゃあー!?」
覗き込んでいた男が居た。
「誰だテメー!!」
「おやおやひどいじゃないか窮地を救った恩人に向かって」
「窮地……? はっ! まさかお前が夢宮ソウゴ!」
茶髪にの低身長、ロングコートの裾がだいぶ地面についている。
「ちっさ」
「ちいさくないもん!」
うわぁ、いい大人がもんて。
哀れみの視線を向けるとソウゴは俺を指さして言った。
「ボクの趣味は新人いびりだ! 付き合ってもらおうか!」
「悪趣味な野郎だな!」
「よしお前ら殺し合え」
突如として現れたクロノが物騒な事を言う。
というかこいつケインタイプ:ワープを私用で使い過ぎじゃなかろうか。
「さっすがクロノちゃん話が分かる~」
「次ちゃん付けしたら上空10,000メートルから落として殺す」
「こわっ!?」
どこからともなく取り出した杖を振るうクロノ、すると世界はファイナルゼータの基地から立方体の群れ成す謎空間へと変貌した。
「なんだここ……?」
「あんたに有利なように遮蔽物の多い空間を構築したの」
「えっケインタイプ:ワープってそんな事も出来るの」
「まっ、そんな細かい事はどうでもいいよね~改めましてボクは夢宮ソウゴ、ファイナルゼータ最強の男だ。ゼータ起動」
現れる巨大な砲塔、なんとか人間が持てるサイズ感。小柄なソウゴが持つとより大きく見えた。
「これがボクのZ、ガンタイプ:ウインド」
「俺の自己紹介いるか?」
「いらないよ花村大輝くん。さぁアーマータイプ:ファイアになりなよ」
「……ゼータ起動」
俺は炎の鎧に身を包む。
距離にして数メートル。
懐に入るのはたやすい――はずだった。
「
空中に展開される大量の銃器。
それらから放たれる銃撃の雨に俺は思わず防御態勢を取る。
「――ッ!」
本命が――来る!
「ウインドバレット、
不可視の弾丸が俺の腹を抉る。
どうしてどいつもこいつも俺の腹ばかり狙うんだ。
「どうだい、僕の銃撃は」
「もう、終わりか?」
「へ?」
俺は一足飛びにギアを超音速に切り替えると一気にソウゴの顔面を殴りつけた。
吹き飛ぶソウゴ。俺は高笑いをした。
「ハーハッハッハ! 散弾ではなぁ!」
「へぇ……存外、硬いんだね」
「アーマータイプは伊達じゃねーし!」
「じゃあボクも本気で行こうか」
――ウインドバレット、
不可視の砲撃が俺を襲う。
一気に上空に吹き飛ばされる。
「うわっ!? 高ッ!?」
「逃げ場はなくした、これが真撃ちだ。
長大のロングライフルから一直線に俺に向かって光線が放たれる。
俺はそれに拳を光速に加速させてぶち当てた。
「なっ!?」
「驚かれちゃ困るぜ先輩! 俺はまだまだ加速する!!」
光速の右手は消し飛んだ。しかし、まだ左がある。
俺は左腕を光速にギアチェンジすると。
一気にソウゴの砲塔を打ち砕いた。
両腕が消し飛んだ俺はふらふらと立ち上がる。
「……これが実戦なら死んでいたのは君だよ」
「勝てりゃなんでもいい」
勝負に命をかけるバカの集団。
それがファイナルゼータのハズだから。
とは口に出さないでおいたが。
空間が掘っ立て小屋の群れに戻る。
俺の両腕も無事だ。
「全く無茶するわねアンタ」
「お前ほどじゃないさ」
「お前って言うな!」
「ぶげらっ!?」
腹パンを喰らった。
もう食べたカップ麺を数えるのと同じくらい無駄に喰らっている。
「あーあまさか負けるとはね、ファイナルゼータ最強は返上かな」
「いや、確かにあんたのが強かったよ」
「そうかい? 勝者の君に言われても嬉しくないけど」
するとサイレンから警報が鳴り響く。
「エースギアだ! 動けるかダイキ! ソウゴ!」
「「応!」」
「良い返事だ。ケインタイプ:ワープ!!」
場所は――山奥?
「なんでこんな場所にエースギアが?」
「此処は有名なトレッキングコースだ。観光客も多い」
「その人たちが狙いってわけだね」
既に俺達はZで武装している。
すると上空に巨大な飛行船が現れたではないか!
「はぁ!? なんだアレ!?」
「母艦型……!」
「厄介だね、一気に大勢の人を攫う気だ」
銃器を展開するソウゴ。俺はそれをただ見るしか出来なかった。
「あいつを撃ち落とすためのチャージに時間がかかる。クロノ、観光客の避難を頼む」
「任せなさい、ダイキ、あんたは私の警護、他にエースギアがいないとも限らないわ」
「あ、ああ」
俺はクロノについていく。
トレッキングコースの休憩地点で、母艦を見上げる観光客たちが居た。
「みなさん! 少し転移酔いするかもしれませんが我慢してください!」
ケインタイプ:ワープを振るうクロノ。観光客たちの姿が消える。
「どこに送ったんだ?」
「とりあえず下山させたわ、あんまり遠くに移動させても別のエースギアに襲われる可能性があるし、アンタも下山して観光客の安否確認してきて」
「分かった」
すると、その時突風が吹き荒れた。
「来るぞ! ソウゴの大一番が!」
俺と戦った時以上のが来る。
そう確信した。
――ウインドバレット、
その無数の光線は母艦を打ち貫くどころか一欠片も残さず塵と化した。
「あれがファイナルゼータ最強……」
「ただ残念なとこがあって、極嵐を使うとソウゴは」
杖を振るうクロノ。
「こうなる」
そこに現れる気絶しているソウゴ。
「えぇ……」
「能力の反動だ。お前の超光速で体が消し飛ぶみたいに、こいつも砲撃の反動、バックファイアをもろに喰らうんだよ」
なんというか、どこまで行ってもファイナルゼータは残念な集団なのだと思い知らされたのだった。
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