第4話 天然系お嬢様とズキューンバキューンですわ!!
ん? あれは確か……。
「おーいミコさーん」
「あら、ダイキさん、おはようございますわ」
ますわ!? 前から思ってたけど口調変だよな……。お嬢様言葉ってやつ?
「なにか御用でして?」
「ああ、いやこの前のお礼を言ってなかったと思って」
「この前……ああ、群生型との戦いの時の話ですね。お気になさらず、これもノブリスオブリージュの一環です」
なんだっけノブなんちゃらって。
確か、貴族の務めとかそんなような。
「そうですね、大いなる力には――」
「セイヤー!!」
「タトバッ!?」
どこからともなく(たぶんケインタイプ:ワープを使って)現れたクロノに空中からみぞおちに向かって蹴りを喰らった。
俺はもんどりうって倒れると、なんとか上体を起こしながら言った。
「いきなりなにしやがるテメェ……」
「だから打ち切られかねないパクリをするなぁー!」
たまにこいつの言っている事が分からなくなる。すると俺に手が差し伸べられる。
「大丈夫ですか?」
ミコさんだった。俺には彼女が天使に見えた。
「ミコ、そんなバカに気を使う必要なんかないわ!」
「いいえ、同じファイナルゼータの仲間同士、背中預ける以上、信頼関係の構築は必須、これは必要な事ですわ」
……えっ、この人めちゃくちゃ良い人なのでは!?
俺は歓喜に震えていた。
「なに泣いてんのあんた……きもっ」
「ぎもぐない!!」
ファイナルゼータに来てから初めて触れた優しさに俺は感涙していた。
ああ、救いはあったんだ……。
その時、警報が鳴り響く。
「エースギアが出た! 行くわよ二人共! ゼータ起動! ケインタイプ:ワープ!」
景色が一瞬で切り替わる。そこは商店街の一角だった。
「ホント時と場所を選ばないよな……」
「悪の組織なんだから当たり前でしょ」
その時、悲鳴が響く。
巨大な翼を持つ機械の鳥。
『来たな!
「今、すっごく不本意な呼ばれ方をした気がする……!」
「いいからさっさと片づけてしまいましょう、ゼータ起動、ソードタイプ:ファイア」
炎を纏った
俺は慌てて。
「ゼータ起動!」
アーマータイプ:ファイアに身を包み追いかけた。
この人、ミコさんてまとも過ぎないか? 本当にファイナルゼータの一員か?
バカの要素が見当たらない。
『喰らえ! 音撃砲!!』
キィィィンという甲高い音共に破砕が続く。するとミコさんが。
「危ない猫ちゃん!!」
そこら辺に居た猫をかばってその音撃砲とやらをもろに喰らった。
「いや……今、猫、射程範囲外にいたよね……?」
そう放射状に広がる音撃砲のちょうど当たらない部分に猫は陣取っていた。
それを無理にかばったから逆に射程範囲に入ってしまったのだ。
「良い人なのに! 良い人なのに!」
「ほらそこ現実に幻滅してないでさっさと助けに行きなさい」
俺はブースターで加速して鳥とミコさんの間に割って入る。
「ダイキさん……ごめんなさいわたくし……」
「細かい事気にすんな。俺バカらしいし、俺は気にしないよ」
「きゅんっ」
今こいつ口できゅんって言わなかったか。
『おい! 馬鹿共! こっちをよく見ろ!』
鳥の足元には男性が一人捕まっていた。
『こいつがどうなってもいいのか!』
「人質……!?」
「卑怯な……それでも戦士ですか!」
『馬鹿共に何を言われようとうなあ!』
音撃砲が再び見舞われる。
俺達はそれをまともに喰らい吹き飛ばされる。
するとクロノが前に出た。
「く、クロノ……?」
「人質は私に任せなさい。あんたらは左右からあの鳥を挟撃するのいいわね?」
俺達は無言で頷くと二手に分かれて駆け出した。
『そんな貧相な杖で何をするつもりだ?』
「だれの身体が貧相だテメェ!?」
誰も言ってねぇよそんな事……。
俺は加速した拳を鳥へと向ける。反対側には刺突剣を構えたミコさん。
クロノの杖が振るわれる。
すると――
『馬鹿な!? 男はどこに!?』
「ここよ」
先ほどまで鳥の足元に居た男性がクロノの隣に移動していた。
やっぱり便利だなケインタイプ:ワープ。
そして挟撃が決まる。拳と剣が鳥の胴体を打ち貫く。
『エースギアに栄光あれぇぇぇ!!』
爆散する鳥。
「これで一件落着――」
その時だった。
クロノの呻き声が聞こえた。
驚いて振り返るとそこには先ほどまで倒れ伏していた男性に首を絞められているクロノの姿があった。
「は!? おいあんた何やって!?」
『これだから馬鹿と言うのだ……』
人工音声のような声、男性の化けの皮が剥がれ、機械の身体が露わになる。
「エースギアでしたの……!?」
「嘘だろおい……」
『さあこの女を殺されたくなければファイナルゼータの基地の場所を言え』
「わ、私の事は気にせず攻撃しろ!」
そんな事出来るはずもない。
あんなにバカバカ言われ腹パンを喰らった回数も数知れず。
しかしファイナルゼータにとってクロノは生命線なのだ。
見捨てられる訳が無い。
降参しようとしたその時。
機械仕掛けの人型、そのクロノの首を掴む腕が吹き飛んだ。
『なっ!? どこから!?』
「だ、誰が!?」
「超々遠距離射撃、こんな事が出来るのは彼しかいませんわ」
「彼……?」
「夢宮ソウゴ、ファイナルゼータの銃器使いですわ」
次々と放たれる銃撃の雨あられ。
あっという間に人型エースギアは穴だらけになった。
「どこから撃って来てるんだ……?」
「おそらく10キロ以上は先からでしょうね」
「じゅっ!?」
俺は遠くのビルの屋上がキラリと光ったのを見つけた。
まさかアレか?
「あっ、それよりクロノ!」
「けほっけほっ、あーひどいめにあった」
「大丈夫なのか?」
「なんとかね、しかしソウゴまで出さなきゃいけなくなってきたか」
その手には杖が握られていた。
「まさか首絞められながらケインタイプ:ワープを使ったのか!?」
「ふふん、まあね」
「相変わらず無茶をしますわね」
ふふっと笑うミコさん。
クロノはいつもこんな無茶しているのだろうか。
バカの集団。
それは命をかけて人を守る。
自分の命をも省みないという意味なのかもしれない。
そう俺は感慨にふけっていた。
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