第3話 亜空間の超決戦!!
数日後、しばらくはエースギアの襲撃も無く平和なカップ麺生活が続いた。
「ハロー、ダイキ」
「うわでた」
「人を妖怪みたいに言うな」
掘っ立て小屋に入って来たクロノは俺から週刊少年誌を取り上げらるとこう言った。
「今から修行してもらいますチェケラ」
「は?」
「ゼータ起動! ケインタイプ:ワープ!!」
景色が回る、回りきるとそこは宇宙が天蓋に広がる大パノラマだった。
「なんだ此処……」
「ここはバトルフィールド……エースギアを模した敵が出て来るわ、つまり今回は修行回!」
「!?」
「ほらお出ましよ!」
そこに現れたのは人型の機械、ロボットと言うよりオートマタと言うべきか。
俺はその違いは分からないけれど。
「じゃあなんで言いかえた?」
「心を読むのをやめろって言ってんだろ!」
「いいからはよやれ」
「クソッ! ゼータ起動!」
俺はアーマータイプ:ファイアに身を包み、突進する。
すると敵に拳を掴まれ投げ飛ばされる。
「うおあ!?」
「言っとくけど、そいつはエースギアの上位個体を模して造られてるわ。生半可な技は効かないわよ」
「そんなところに予算回すなら衣食住をなんとかしろ!!」
「苦情は予算食いの開発部に言ってちょうだい」
俺は背中のブースターで加速と停止を繰り返しステップする。
敵を翻弄しているつもり――だったのだが。
思いっきり腹パンを喰らった。
「もう俺の腹は限界だよ……」
「倒さないとこの亜空間は解除されないわよー」
「……そうだ。ちょっと協力してくれ、クロノ」
「ん?」
俺はとある提案をした。するとニヤリと笑うクロノ。
「いいじゃない、面白そう。ゼータ起動、ケインタイプ:ワープ」
すると今度はオートマタの姿が消える。それは空中に居た。
「空中じゃ身動き取れないよなあ!?」
ブースターで上空まで吹っ飛ぶと燃える拳をお返しにどてっぱらに突き込んだ。
腹から崩壊していくオートマタ。
これで勝利、天蓋が崩れ、亜空間が――
――別の亜空間に変わる。
白、白、白。白い空間に。
「なにこれ……?」
「あっ言ってなかった、これ三番勝負だから」
「はぁ!?」
次に現れたのは大型のオートマタ、俺の三倍くらいの身長がある。
俺は炎を放射する。
焼き焦がされるオートマタは炎を振り払いこちらに大きな拳を向けてくる。
俺はそれをブースターで回避すると返す刀で拳を見舞った。
腕を破壊する。威力が上がっている。
これが修行の成果か?
片腕を破壊されたオートマタはもう片方の腕をぶんぶん振り回す。
それをかわしながら、一気に距離を詰め、胸の中心を抉り取る。
「上位個体もこんなもんか」
亜空間が解け――
――今度は闘技場の様な場所に変わる。
相手は。
「私よ」
クロノが前に立ちはだかる。
「はぁ? 戦えんの?」
「ケインタイプ:ワープ」
俺は上空からダイブする羽目になった。
「ずびばぜんでじた」
「私の空間転移を避けきれたら修行は終わりにしてあげる!」
「なんだその無理ゲー!?」
「ほら行くぞ!」
杖を振るうクロノ。俺は目まぐるしく変わる景色に足場を見失わないように気を付けながら進む。
「止めりゃあいいんだろ!!」
「やれるもんなら!!」
俺はブースターを全開にした。
加速する。
杖が振るわれる。
景色が合わせ鏡のように連続する。
俺はその世界を延々と加速する。
音速を超えた辺りでクロノが怪訝そうな顔をする。
「まさかアンタ――」
「――そのまさか、だ!!」
杖を振るう前に辿りつけばいい。
無限に続くように見える亜空間は、その実、杖を振る事で切り替わる。
つまり杖が振るわれていない間は無限ではない。
その速度を超える。
クロノが杖を振るう速度を超える。
亜光速に近づいた辺りで流石に視界がブラックアウトしてきた。
しかし、無限回廊を作り出すクロノの額に汗が浮かぶ。
無限に等しい距離を詰めるために。
俺はいよいよ光速に入り始めた。
物理法則的に物体が光速になると宇宙ヤバいらしいが。
幸い此処はクロノの創り出した亜空間。
宇宙崩壊の心配はない。
俺はただブースターを吹かし続けるだけでいい。
炎に身を包み、真っ赤な流星と化した俺は。
いよいよクロノへとたどり着かんとしていた。
俺は超光速に至り、そして。
燃え尽きた。
「ハッ!?」
「よおバカ」
「一体何が!?」
「お前死んだんだよ一回」
「え!? じゃあなんで俺生きてんの今!?」
溜め息を吐くクロノ。
「あの亜空間内ではある程度、私の操作で色んな自由が効くんだ」
「生命の操作レベルまで!?」
「そうよ、褒め称えなさい」
「でも俺なんで死んだの?」
「おいバカ」
頭を小突かれた。
「人間が光速超えたら死ぬに決まってるだろ常識的に考えて」
「おっしゃる通りです……」
亜空間が解けていき掘っ立て小屋の群れに戻って来る。
「修行になったのかこれ……?」
「まあ力の制御は出来るようになったんじゃない? 及第点ね」
俺はアーマーパージして元の姿に戻る。
「うわパジャマダサッ」
「えっ」
富嶽百景デザインだったのだが、オシャレだろ普通に。
こいつさては和柄嫌いだな?
「ていうか24時間待機って言ってるでしょパジャマじゃなくて普通の服装で寝なさいよ」
「理不尽だ……」
俺はふととある疑問を唐突に思いつく。
「なんでZってバカしか使えないとか言ってんだ?」
「そらエースギアに対抗するためよ、あいつらはエリート集団の巣窟よ。当然、対抗する組織はバカの集まりになるわ」
「えぇ……もっと他に理由ないのか?」
ふと手を顎に当て考える仕草をするクロノ。
「そうねぇ、バカのがZ出力が高いのは事実ね、一般人なら光速超えなんて出来ないわよ」
「バカは光速超えられるってどんな理論だよ……」
そもそもZ出力ってなんだ。
「Z出力っていうのは……」
あっ、クロノもバカだからよく分かってないんだ!
とは言わずにおいたが代わりに重たい沈黙が舞い降りたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます