第93話 ゴリフラード商会
僕たちはゴリフラード商会から生贄を奴隷にしていたことの証拠、そして子供たちを奪還すると決める。そして生贄に娘を差し出さないといけないと言われてた獣人の家族にゴリフラード商会について聞いてみた。
「昔から代々続いている大きい商会だ。あの商会がなんで奴隷なんて扱っているんだ? この国の特産品の多くを取り仕切っていたはずだ。そんな商売始める必要なんてないだろうに」
と父親は不思議そうな顔をして話す。
その後、獣王にも報告した僕たちはゴリフラード商会についていろいろと調べてみた。まず昔からある老舗で大きい商会だということ。父親の話の裏もとれたことになる。そこで父親と一緒に獣王の元に訪れて
「ホントになんで奴隷の商売なんて始めたんでしょうね」
「手堅く商売してれば
とあれやこれやと相談していたら生き字引のウサギさんから
「奴隷の商売を始めたのはトップが最近変わってからじゃよ」
という重大な情報を頂いた。
限りなく黒に近いグレーだと思った。証拠があれば無事に生贄事件も解決だ。ここまで状況証拠と証言がそろっていれば黒なのはほぼ間違いないだろう。
「あとは証拠。生贄と奴隷の帳簿でもあれば解決です。そこでゴリフラード商会に潜入して証拠を見つけようと思います」
と僕は獣王に提案し、みんなの同意を得てゴリフラード商会に乗り込むことにしたのだった。
ゴリフラード商会に乗り込むのは獣王配下の獣人族たちだった。生贄に娘を差し出すところだった父親も来たいと言い出した。どうしても娘を奪おうとした奴に一言、言ってやりたいと言って聞かなかった。
「連れて行ってくれないなら俺は一人で乗り込む。今まで生贄になった子供と行方不明になったの俺らの仲間の名前がお前らには分かるのか?」
と言われ獣人族のみんなの信念を聞いていた僕は、仕方なく獣王に相談し了承を得た。でも後ろからついてきてくるだけですよ? と釘をさすのも忘れない。そして一緒に乗り込むことにしたのだった。
父親は娘をさらおうとした奴をとっちめようと気合いが入りまくっていた。とはいえ、この父親は猫族だ。素早さの猫族、つまり潜入捜査はお手の物だ。足音を消し気配を消して警戒をしている。しかも暗闇の中でも目が見える。これはほんとにありがたかった。
そして証拠となるものがありそうな書庫か宝物庫でもないものかと探していたところ、覆面を被った奴と出会う。
明らかに怪しいと判断した僕は問答無用で斬りかかる。その攻撃を相手はかわしたけど、鎧を切り裂さくことは成功し、そこからボトリと落ちたのは狐色の皮装備のようだった。
急にしどろもどろになった覆面の怪しいやつの覆面を僕は
「ちょっと待て。この方は俺ら獣人族の生き字引のウサギ様だ」
といいだした。僕は慌てて謝る。
「ごめんなさい。まさか覆面被ってるなんて思わなくて……でも狐色の皮装備なんていいんですか? 狐の皮装備は禁忌の対象で呪われるって聞きましたけど」
となんとなく感じた疑問を呟く。
「これは火牡鹿の皮装備じゃからね。色は似てるけど全く別物だから禁忌の対象じゃぁないんじゃよ」
「なるほど」
と生き字引のウサギさんの言葉に僕は頷き、ゴリフラード商会の証拠品を探すため再び行動を開始した。
その後ほどなく僕は宝物庫を見つけたので中を調べてみた。その宝物庫の中に床に転がっているボロボロの巻物を見つけた。誰一人として中身も読まず適当に扱っていたのだろう。それは誰が書いたか分からないけど人族の文字で書かれた物語だった。そこにはウサギ族の伝説とは結末がまったく違う物語と、今回の事件の核心となる狐族の秘密が書かれていた。
そして、ゴリフラード商会の書庫で生贄になった獣人族の情報と奴隷の売買の証拠が見つかった。そして
老舗の商人でもあるが、でっぷり太ったゴリフラ―ド商会のトップの人間は背は低めで歩くのも大変そう。けれど闇に染まったような目をして怒りのままに
「あの女狐め!裏切りおったな!」
と喚いていた。厳重な警戒をした牢屋へ入れられた。「女狐が裏切った」ゴリフラード商会のトップはそう言った。単に女のことをいったのか絶滅したはずの狐族のことを言ったのか。誰のことを言ったのか気になる点は残る。
翌日、ゴリフラード商会のトップに会いに行ったら自殺したとの話だった。タイミング的にみんなが他殺を疑うのにも関わらず強行してきた。何らかの方法による殺害が濃厚だと僕は考える。いくらなんでも敵の対応が早すぎる。証拠隠滅のためか? それともこの商人が核心に近づきすぎていたのか?
僕は宝物庫で見つけたボロボロの巻物を見ながら、ウサギ族の伝説と狐族の秘密について改めて考えるのだった。
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