第86話 オーガとの戦い②

 とりあえず見えるオーガを殲滅した僕たちは廃墟の城の様子を伺う。特に廃墟の城からオーガがワラワラでてくるということはなかった。


 けれども、ここで全てを倒したといって城の中を見ずに帰るという選択肢はない。廃墟の城の中を探索し、何もないと確認するまでがこの依頼の達成条件だとみんな思っている。


 だからこそ城の中を探索しやすいようにシリス先輩は光魔法で明かりを灯してくれる。かなり明るくなった。戦闘に支障はでないだろう。それでも離れたところは暗い状態だ。油断はできない。


 僕たちは顔を見合わせ頷き、廃墟の城に足を踏み入れる。僕は一番前を歩き、シリス先輩とシャルリエーテ様が中間に並んで、一番後ろにカガリ先輩という陣形。


 基本的にはシリス先輩を死守だ。このパーティーの生命線を守る。そのための布陣となる。


 さて、1階をひたすら歩くけれどもオーガは1体もいない。いらないかなとは思ったんだけど、一応この城の地図も作りながらの探索だ。そして思ったよりもこの城が広いことに気付く。


 1階の探索が終わり、次は2階へと階段を上る。そして2階も何もいないことを確認する。次は最上階の3階だ。ここにもいないようなら廃墟の城にはオーガはいなかった。4体だけしかいなかったということになりそうだ。


 みんな何もいなさそうだと、ちょっと緊張も緩みがちな感じだ。


「何もいないね」


と汗を拭きながらカガリ先輩が呟き


「そうですわね」


と頭をかしげながらシャルリエーテ様がうなずく。そんな2人をみて


「私の見せ場がないよ~」


とシリス先輩が嘆く。シリス先輩の見せ場があったとしたら、結構ピンチな時だろうからそんな時は来ないでほしいと僕は思うのだった。


 そして3階も異常がないことを確認する。ほっとした様子の3人。なんかもやもやして納得がいかない僕は地図を見て考える。


 僕がオーガならどう動くか考える。知能はそんなにないと言われているけどゴブリンメイジのように進化した存在もいた。今回のオーガにもそのことがないとは言い切れない。


 そして3枚の地図を見比べて見るとみえてくるものがあった。1階と2階の北東には広い通路があった場所だ。本来なら建物の構造上あってもおかしくない広い通路が3階の北東は壁になっていることに気付いた。たまたま利用されてないだけの場所ならいい。でも例えばこの場所が魔法で隠蔽いんぺいされていたとしたらどうだろう? 


 そんなことができる存在がこの場所にいるとしたら? じっと息をひそめて耐えることが最善策だと判断できる奴がいたとしたら? それは脅威としかいえないだろう。間違いなく倒しておかなければ未曽有の被害を生み出す敵になりかねない。


「気になる点があります」


と、みんなに話しそこを探索しましょうと僕は提案するのだった。


「「「行きましょう」」」


とみんなの合意を受け僕たちは細心の注意を払い3階の北東の角に移動する。この場所に何かある可能性が高い。みんなには離れていてもらい遠隔魔法や弓を準備した状態で待機してもらう。


 僕は目に強化魔法をかけてじっくり見る。見ただけでは特に異常はない。触って感触を確かめコンコンと壁を叩いて歩く。本物の壁だった。


 けれども壁を叩いたら微妙に音が違う部分があり、強化した目で注意深く見ると、ここだけ微妙に壁の色が違い材質も違う。隠蔽の魔法でごまかしている? この壁の向こうには何もない。だからこそ何かがいるのだ。息をひそめている敵がいる!


 僕はみんなに警戒するよう合図をして無詠唱で魔法を展開。一気に壁を吹き飛ばす。その壁を壊して現れた空間には玉座に頬杖ほおづえをつき、足を組んで座ってるオーガチーフとその側近ともいうべきオーガメイジ2体がそこにいた。


「人間にしてはなかなかやるな。この場所を見抜くとは、小僧」


とオーガメイジはニヤニヤしながら話しかけてくる。


「さっさとでていって倒してしまえばよかったのだ。なぜこんなに警戒する必要がある? 相手はたかが人間だぞ?」


と、オーガチーフはご機嫌斜めだ。


「オーガ4体をあっさり倒した存在ですぞ。油断なさるな。我らに気付かなければその程度。こいつらがいなくなったあとで存分に人間どもを殺して食べればいいが……」


顎髭あごひげをなでるオーガメイジは舌なめずりをして


「気付かれたものはしょうがない。食べる順番が変わっただけのことですからな。我らにとってはたいした違いはない。食事に行く手間が減っただけ、これから楽しい時間が始まるというだけのもの。ヒッヒッヒ」


と不気味にわらう。オーガの上位種3体が相手となる。雑魚のオーガがいないだけ、まだマシな方と言えるだろう。


 カガリ先輩が攻撃魔法をしかけ弓を放つ。それをきっかけにシャルリエーテ様の歌の支援魔法とシリス先輩の固有魔法。僕は強化を全て済ませて相手を見据えそしてにらむ。


 そしてオーガメイジとの間合いを瞬時に詰め、右上の肩口からカラドボルグで僕は斬りかかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る