第84話 王国騎士団でのお仕事②

 そして旅が始まった。みんな旅に慣れたものだった。僕は馬車の馬をあやつりつつカガリ先輩に


「カガリ先輩は結構、旅をしてたりするんです?」


と聞いてみた。


「私は空を飛んで近郊の土地は日帰り気分でいけるから。空を飛んであちこち見に行ってたんだ。でも獣人の国はさすがに初めて行くところだから私も楽しみだ」


とニコニコしながら話してる。


「ナルメシアさんは獣人の国に行ったことはあるんですか?」


と聞いてみると


「もちろんあるわよ。耳も尻尾もモフモフも好きな人は好きよね」


 との返事に我が意を得たりと僕はうなずく。


「耳と尻尾とモフモフはロマンですよね。人族にはないですから」


 なんて話をしながら旅を続ける。日が暮れたらキャンプをして僕は周辺を探索してウサギと鳥を仕留めて血抜きをし颯爽さっそうとキャンプへ帰ってくる。


 ナルメシアさんは僕の倍くらい狩ってきている。さすがだなぁと思ったり、みんなの料理の腕を見て舌鼓したつづみをうち僕も頑張らねばと思うのだった。


 そんな旅だけど村につく。冒険者にしか見えないであろう僕たちは村の村長さんから


「魔物が現れて困っています。旅をできるくらい強い方であれば何とかしていただけないでしょうか?」


と相談を受ける。僕は


「旅に世直しはつきものです。お力になりましょう」


と僕は村長さんに話をしてみんなからも


「「「もちろん」」」


と合意を得てナルメシアさんにも


「みんなで解決しなさい。困ったことになったらなんとかしてあげるから」


と合意してもらった。そして魔物が現れたという話があれば積極的に倒していくということで僕たちの意志は固まった。


 これも世直しという名の実戦なのだ。実戦では多くのものが学べる。これは間違いない。負けたら死ぬというプレッシャーをいかに克服するかはとても重要だからだ。


 前回の旅と同じように罠を仕掛け魔物が現れたら現場に駆けつけて倒す。大抵ジャイアントボアなのでいい感じに夕食のメインが決まる。


 そして村の人々のご好意でジャイアントボアは調理され飲めや歌えの大騒ぎ。これも旅の醍醐味だと、最近僕は思うようになった。


 それに村によってジャイアントボアの料理の味つけが違うのでそれはそれでイイ! と思って食べている。使っている香辛料を教えてもらい、こちらもお礼ついでに自分のレシピを教えてあげる。


 ウマいウマいと食べる日々。太ってもおかしくない量を食べているけど、日々の訓練と、魔物退治で体を動かしていればトントンらしい。いい訓練だ。



 シャルリエーテ様もカガリ先輩もシリス先輩もナルメシアさんと毎日のように訓練だ。僕は特に質問されなければ答えない。


 聞かれれば自分の思うところは話している。けれど積極的に教えたりしない。何故ならナルメシアさんは僕より強いからだ。


 そこにでしゃばってもいいことなんてない。例えばナルメシアさんが「じゃぁ、これから先はオリタルト君が教えてあげてね」って言われてしまったら僕が教えてもらえなくなってしまう。それはとても困るからだ。


 そして何より実戦経験者の意見は奥が深い。


 似たような状況があったとしても、その状況でなぜその手段を取らなかったかを考えるだけでも意味があることが多い。


 自分で考えて最終的に分からないことは聞けばいいのだ。そのための師匠なのだから。


 そんなわけでいつもの魔力操作の訓練をしながら僕はナルメシアさんの思考回路を考えるため一挙手一投足をじっと見つめる。でもじっと見つめているとたまににらまれるので、そんな時は「えへへ」とごまかすために照れ笑いをする。


 そんな僕を見て、ため息をついてナルメシアさんはみんなの訓練に戻る。まぁ、そんないつもの日々だ。


 カガリ先輩は空を飛び攻撃魔法や弓を使って攻撃し、シャルリエーテ様は歌の支援魔法をかけてみんなを強化して木刀で斬りかかり、シリス先輩は回復して固有魔法をかけつつ杖で殴りかかる。それでもナルメシアさんからは一本とれない。


 やっぱりナルメシアさんはおかしな強さしてるよなぁと思いながら僕はみんなの訓練を見守る。


「僕も稽古に参加したいです」


とナルメシアさんに言ったら「君がいると手加減できないからダメ」と断られた。考えてみればそれもそうかと思った。


 相手によって手加減するかしないかの判断をいちいちするのは難しい。僕に攻撃するつもりで攻撃して別の人に当たれば気絶してしまうだろう。最悪あたり所が悪ければ死んでしまう可能性すらある。


 それにナルメシアさんは負けず嫌いだ。大人げないくらいに。シャルリエーテ様に、ナルメシアさんに殺されかねないからニヨニヨした顔をやめなさいと言われたことがあった。


 よくよくナルメシアさんの様子を見て、確かに殺されてもおかしくない殺気を放っていると気付いたので僕も無理は言わないようにしている。


 武器を持った状態で3人がかりで挑んでも一本取れない。奇襲をかけずに一本取れるという状況になるのは自分も含めてまだまだ時間がかかりそうだった。

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