第83話 王国騎士団でのお仕事①

 王国騎士団でのお仕事は訓練に始まり訓練で終わる。何ごともなければ訓練漬けの毎日だ。ところがだ。


「これからの訓練や日常会話は獣人族の言葉で全てしてもらう。会話は全ての基本だ。気合いを入れて覚えろ!」


 ラルタザイア団長からのお達しだった。せっかくなのでいい機会と思い、僕は獣人語を勉強しまくった。武闘派集団の先輩方は獣人語には苦戦していたようだけど、たくましくなっていた。この1年でさらに強くなったみたいだ。


 僕もそんな訓練と獣人語漬けの毎日を過ごしていたら、3か月くらい経ったある日、ラルタザイア団長に呼び出された。


「失礼します」


「オリタルト君。君の任務が決まった。獣人の国に行き、もし魔王が復活した際は協力してほしいという国王陛下の意向を伝え、協力してもらえるという約束を取り付けてくること。何か質問はあるか?」


と、淡々とラルタザイア団長は話した。これが僕のお試し入団のお仕事らしい。


 でも、こんな重要な役目を体験入団者に与えちゃっていいの? なんか国の未来を左右しそうな役目ですよ? これ。と思ったので


「そんな重要な任務、体験入団者に任せて大丈夫なんですか?」


と思わず聞いてしまった。


「もちろん、君一人に任せるのは酷な任務なのは分かる。なので同行者をこちら側で選んだ。旅の準備をしておくように」


 酷な任務なのは分かってもらえてるのか。とすると同行者さんにお任せでいいのかなぁ思ったので念のため


「はい。ちなみに同行者って誰なのかお聞きしても?」


「うむ」とラルタザイア団長は頷き


「シリス、カガリ、シャルリエーテ、ナルメシアの4人だ。君も顔見知りだろう? ノルレンゴースと戦ったものと、魔法学校対抗戦当時の主な協力者だ。適任かと思ってな」


 なるほど、ほんとに新人研修なんだなと思った。シリス先輩以外は新人ばかりで戦闘というか護衛はナルメシアさんに任された形なんだろう。 


 ナルメシアさんがいれば安全は保証されたようなものだし、そうと決まれば獣人族の方々からどうやって協力を取り付けるかを考えた方がいいのかなと僕は思った。


「分かりました。旅の準備をして獣人族から協力を取り付けられるよう精一杯頑張ります!」


「うむ。任せた。話は以上だ」


「はい、失礼します!」


と言って元気よく僕は部屋からでた。そしていそいそと旅の準備をする。一回長旅をしてきたので大体の目安が分かる。


 必須なのはまず旅の食事をおいしく仕上げる調味料と、いざという時の保存食かなと思った。水は魔法でさくっと作ればいいのだ。これだけで荷物はかなり軽くなる。


 着替えと装備一式とキャンプ道具等々をそろえて最終確認。いつでも旅にでれますよ! という状態になった。


 みんなと旅か~。素直に楽しみだなと思った。獣人の国にも行ったことはないしどんな国なんだろうと楽しみで仕方ない。(犬耳猫耳モフモフゥ~!)と頭の中では止まらないリフレインがこだましている。


 獣人の国は東にある。長旅になりそうな雰囲気だ。獣人の王様にもうまくいけば会えるのかなぁと僕の妄想は止まらない。


 獣人族の猫耳犬耳尻尾を見てみたいんだよなぁ。見れるだけで僕は満足だし、動いてる耳や尻尾を見れた日には、この世界の神様に感謝の念を抱かずにはいられないだろう。

 

 旅の出発日の前日、ワクワクが止まらない僕はなかなか寝つけず、危うく寝過ごしそうになった。危ない危ない。旅の準備を念入りにしておいてほんとによかった。遅刻するところだったと僕は胸をでおろすのだった。


 遅刻寸前の僕とは違ってみんなもう集まっていた。


「ごめんなさい。みんな待たせてしまって」


と僕はまず謝った。


「遅刻した訳じゃないんだから謝らなくてもいいのよ? 気にしすぎね! お姉さんは気にしないしみんな大丈夫だと思うわよ?」


とフォローしてくれるシリス先輩。僕も


「昨日、これからの旅を考えたらワクワクしすぎて、なかなか寝れなくて遅刻しそうになっちゃいました」


と、たはは~と笑いながら話をする。


「「「私も楽しみだ(です)(ですわ)!」」」


と綺麗に返事がハモった。そうか、やっぱりみんな犬耳猫耳モフモフたちとの出会いが楽しみなんだなと僕は一人納得しているのだった。


 ナルメシアさんはそんな僕たちの様子をにやにやしながら見ている。前は無表情だったのに最近は何か心境の変化があったのか、色んな表情をするようになった気がするんだよなぁと僕はぼんやり思うのだった。

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