第74話 黒い泉の沸くところ悪魔舞い降る①
ナルメシアさんのご機嫌を取りつつも、訓練を続ける日々。王女サーラ様の護衛も問題なく平和な日々。けれども村の人々から魔物の出現の情報はあとを絶たない。
なんでこんなに魔物が多いんだろう? と疑問に思った僕は
「最近になって魔物が増えたんですか? それとも前からこんな感じなんですか?」
と聞いてみた。すると
「いや、最近なんです。昔はこんなに魔物はいなかった。魔物も大きいものはいなくて、もっと小さくて畑を荒らしてもたいした被害はでなかった。魔物に襲われて命を落とすことを考えれば、理不尽であっても仕方ないと納得できるくらいの小さな被害だったんです」
と言うのだ。さらに
「晴れてたと思っていたのに、急に天候が悪くなってバケツをひっくり返したような大雨が降ったりする。そのせいで作物がダメになる。さらには土砂崩れが起きたりして道が通れなくなってしまったりするんです」
と、嘆く村長さん。でも……これ、おかしいんじゃないか? と僕は思った。最近になって大きな魔物が増えている? 最近畑を荒らす魔物が増えた? 最近天候がおかしい? 作物がダメになるほどの雨が降る? さらに土砂崩れが起きた?
最近になってが続きすぎじゃないか? 3つ以上偶然が続いたらそれは割と必然だ。
でも、今の段階では僕の心配はただの空想で単なる被害妄想だ。大きな魔物が増えているというだけだ。そう思いたい。
だから安心するために「ちょっと調べてみませんか?」とシャルリエーテ様に相談した。
「いいいですわよ」
と二つ返事で調べることになった。僕は周辺一帯を駆けずり回る。
そして一つの異変を見つけることになる。
黒い泉を見つけたのだ。魔力が集まりすぎた場所というべきだろうか。
すぐにシャルリエーテ様とナルメシアさんに相談する。黒い泉を見つけたと。顔色を変えたのはナルメシアさんだった。
最近ご機嫌斜めだけど、いつもは無表情な人なので珍しいこともあったもんだと思った。逆にナルメシアさんが顔色を変えるほどのことが起きている。そういう意味でもあったのだ。
すぐにゼルニシティ王国へ報告しなければと言って伝書鳩のように知らせることができる「メルシードマーク」という緊急時の特別な魔法を使った。本当に緊急時にしか使ってはいけない魔法だそうで、この魔法をみんなが使うとだいじな情報が伝わるのが遅くなる。その結果、人が死ぬことになりかねないという理由からだそうだ。
「黒い泉の沸くところ悪魔
そうナルメシアさんは
「悪魔ってなんですか?」
と疑問に思ったので聞いてみた。
「魔族や魔物の上位存在とでもいうべきかしら。君が魔法学校対抗戦の後で戦ったザルノタールみたいな相手よ?」
「あんな奴がまた出てくるっていうんですか!?」
ちょっとそれは想定外。あの時は警備隊は負けてしまったけど、僕たちも魔法学校のリーダーたちが協力してくれたし、弱体魔法があったから倒せたようなものだ。
今は4人旅だけど、どうなんだろう。ナルメシアさん1人でいけるものなのかな。
「私だけなら、戦って勝てないと分かれば逃げに徹すればいい。けれどサーラ様、シャルリエーテ様、そして君をかばいながら逃げるのはさすがに無理」
けれどナルメシアさんは諦めない。だからすぐに緊急時の魔法でこの事実をゼルニシティ王国へ伝えたのだろう。
「けれど避けられないなら、状況全てを利用して勝つしかない。頼りにしてるんだから……頑張ってね!」
とウィンクされた。こんなキャラの人だったっけ?
ザルノタールと同じくらいか、それ以上の脅威。あんまり戦いたくない相手だけど、降りかかる火の粉は払わなければ火傷する。放置しておけば死に至る。
そして僕は作戦を考える。基本的にはナルメシアさんが主軸となる戦闘になるだろう。他のメンバーはなるべく戦いに加わらず応援に徹してもらった方がいい。
死んでしまったらなんのための旅だったか分からなくなってしまうからだ。サーラ様は応援に徹してもらう。
正直あんまり戦いたくない相手だけど、魔王復活を阻止するためには、ナルメシアさんの言う通りあらゆる状況を利用して何とかするしかない! と僕は気合いを入れるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます