第65話 畑を荒らす魔物
☆オリタルト視点☆
ナルメシアさんの注意を引けるほどには成長した。あとはどこまで自分を鍛えられるかだ。できればナルメシアさんから一本を取りたい。この旅のひそかな目標だ。
シャルリエーテ様はナルメシアさんと何かしらの訓練を重ねているようだ。シャルリエーテ様が歌を歌っているのが聞こえてくることもある。僕は正直なところ気晴らしに歌っているのかなと思っていた。
でも綺麗な歌声は聞いてて心地いいのでそのまま歌を聴きながら、うたた寝をしてしまうこともあった。起きると体力が回復してるような気もする。そんな不思議な感覚をもちながら僕は日常の訓練を行っていた。
今日も今日とてシャルリエーテ様とナルメシアさんの訓練の様子をしっかり見て考える。考えることはナルメシアさんのフェイントの複合技を防ぎ反撃をすること。
そのヒントは、きっとこのシャルリエーテ様との訓練でだしてくれていると僕は思っていた。強化魔法を魔力で操作して目を強化してよく見て考える。そして思ったのは、ナルメシアさんのシャルリエーテ様との戦闘で見せる手段は全部覚えたということだった。
つまり、シャルリエーテ様との訓練で見せるのはここまでですよ。これ以上知りたければ自分でかかってきなさいということだろう。
実際に戦ってみなければ分からないことは多い。シャルリエーテ様とナルメシアさんとの戦闘を見て学ぶ段階は終わったのだ。
あとは僕が気絶しないように戦う。少しでも経験値を得られるように、格上と戦う訓練から得られる経験値は計り知れないのだから。
◇
旅を続けて、僕たちはサウスノワイスという街へついた。
見るもの全てが新しかった。見たことないヤギや牛や馬の亜種、エリマキトカゲが巨大化したような動物。みんなこの水の少ない土地柄に合わせて少しづつ進化していった結果なのだろう。
そしてやはり気になるのはこの土地の名物! それはケバブというか肉のついた骨のやつ! という表現がバッチリといえる肉の塊だった。それを濃い目のタレで味付けして調味料でスパイシーに仕上げてある。
強引に
タレのみを黒パンに染みこませて食べる。黒パンは堅いけど、タレに浸せばたまらなくうまい。そしてさらにタレのしっかりついている肉を黒パンにはさんで食べる。これも文句なしにウマかった。
シャルリエーテ様もお肉とパンを頬張って、僕の食べ方を真似して黒パンをスープに絡めてニヨニヨしてたからおいしい食事が食べたいんだろうと思った。せっかくなので売っている調味料を僕は片っ端から買い占めた。
◇
そんな旅を続ける僕たちはサルタメルランという都市へたどり着く。またしても新しい街の未体験のおいしい料理に舌鼓う打つ。これこそ旅の醍醐味。そして宿屋のベッドで寝られる。地面が土より布団がいい。ふかふかでなくてもいい。質は問わない。
けれどスポンサーはシャルリエーテ様。ふかふかの布団でぐっすりだった。
お店も見て回る。見たことないものが結構あった。とはいえ、僕の興味は装備品の掘り出し物はあるかどうか。見ても全然分からない。物は試しと魔力操作で目を強化してみた。けどさすがに良いものかどうかは僕には分からない。
分かるわけないよねと思っていたんだけれど、怪しい雰囲気のお店で黒いもやもやが見える装備品があった。なんだろこれ? って思ってさわろうとしたら、ナルメシアさんに手を叩かれた。
「なんで? 僕は何か悪いことしました?」
とめそめそと話すと
「これ、呪われた装備品だから触っちゃダメ」
と、小さな声でナルメシアさんに言われた。「マジで!」と驚いたけど「じゃぁ、これは?」と同じように黒いもやもやが見えた装備品を指さすと
「よく分かるわね。それも呪われた装備よ。触らぬ神に
とのことだった。僕は呪いの装備かそうでないかは分かるようになってしまった。呪いの装備なんか使ってたら、死んでしまう可能性が
いい装備かガラクタかはナルメシアさんに丸投げでいいだろう。買いたいと相談したら、きっといい装備を選んでくれる。
僕は今まで来た道を確認する。旅は順調。食糧を買いに村に立ち寄った。すると村長さんらしき人が現れて
「畑に危害を加えている魔物がでてきて困っております。旅をするほど強い方であれば報酬もお出ししますので倒してもらえないでしょうか?」
と頼まれた。前世のテレビの影響で、旅に世直しの行動は必要不可欠と僕は思っている。シャルリエーテ様からも
「なんとか力になってあげたいですわね」
と言われて僕はもちろん「引き受けましょう!」と快諾した。勝手に受けた依頼だったけどナルメシアさんも
「仕方ないから手伝ってあげるけど、できるところまではシャルリエーテ様とオリタルト君の2人でやってみなさい。いい経験にもなるし困ったらなんとかしてあげるから」
と言ってもらえたのでこれはもう成功したも同然だった。
とはいえ、村の人たちの生活がかかっている。これは気を引き締めて望む必要がありそうだ。
畑を荒らしていた魔物の情報をまずは集めた。畑の足跡や村人の話を聞いて容疑者にあがったのは猪の魔物、ジャイアントボア。まだ容疑者の段階だ。現地で見張りをするには畑は広すぎる。そこで踏んだら盛大に音が鳴る罠を仕掛けておいた。
あとは罠にかかるのを待つ。できれば早く引っかかって欲しいので、罠の周辺に
◇
そして夜中にカラカラッと罠にかかった音が派手に響き渡る。
僕とシャルリエーテ様は急いでその音の鳴る現場に走る。そして現行犯逮捕だ。ジャイアントボアが罠に足を取られていた。容疑者が犯人であることが確定した。コイツが畑を荒らしていた魔物に違いない。
村人の証言とも一致していた。バカでかい猪だったという証言ともぴったりだ。人間も畑を荒らされたら生きていけない。畑は耕している人にとって生きていくために必要だ。
食べることは生きていくのに必要で、そこは魔物も人間も変わらない。けれど魔物に言葉は通じない。だから倒す。強いものが弱いものを倒す。生きていくために、守りたいものを守るために。
それは絶対に必要なことだ。そして僕たちは村人の味方で魔物を倒してほしいと依頼を受けた(仮)冒険者見習い。下手な同情は死に直結する世界だ。だから僕はシャルリエーテ様と連携をとる。
シャルリエーテ様が後方から、ジャイアントボアに光属性の攻撃魔法を撃って注意を引き、シャルリエーテ様に向かう魔物の首を僕は一気に横から切り裂く。
断末魔をあげて巨体が倒れる。「ドーン」という音と共に血しぶきを上げ横たわるジャイアントボア。シャルリエーテ様と「パンッ!」とハイタッチして勝利を祝う。
村人に倒したことを報告すると猪の魔物を食べることになった。村を困らせていた魔物を倒してくれた。僕たちに感謝してくれて、食事を振る舞って飲めや歌えの大騒ぎ。
僕たちは命に感謝。ジャイアントボアのお肉を満腹になるまで頂いて、村人も僕たちも明日を生きる糧にした。
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