第66話 畑を荒らす魔物とゴブリン①

 そのあとも行く先々の村に着くたびに、畑を荒らす魔物がいてとても困っていると相談を受けた。ある村ではウサギの巨大化した魔物がいて畑を荒らして困っている。


 実際に罠をかけて張り込んで、罠にかかったウサギは角を生やしていたりして「これは本当にウサギなのか?」と疑いつつも倒してみたり。


 そうかと思えば角を生やしたイモムシのバカでかいのが、野菜を食べまくっているのを見つけ「これは本当にイモムシなのか?」と疑いつつも倒してみたり。答えは全て


「魔物ですから!」


で済んでしまうんだけども。次から次へ現れる魔物を倒しながら、なんでこんなに魔物がいるんだろうか? と僕は考えずにはいられなかったのだった……



 でも世直しの旅にはイベントが必要不可欠。悪代官は魔物であり困っている人々は村の人々だ。僕は困った人を見かけたら原因となる魔物を倒しては食事を振る舞われ、千切っては投げ千切っては投げ、魔物をシャルリエーテ様と一緒に倒しまくり食べまくった。


 さすがにイモムシは断ったけどね。3人連れの僕たちは、ちっこい2人がやたら強くて、魔物を倒してくれるありがたい方たちだといつの間にか評判になっていた。


 照れちゃうなぁと言いながら角のついたウサギを瞬殺する僕たち。ジャイアントボアも角のついたウサギもデカいイモムシも、狩りに慣れてしまった僕とシャルリエーテ様の敵じゃなかった。 


 村については歓迎され、魔物を倒し食事を振る舞われる日々。これはこれで楽しい。いや、楽しすぎる! こんなモテ期が未だかつて僕の人生にあっただろうか!? いやない! 記憶にない!


 まぁ、僕が幼く見えたのか、そもそも言い寄ってくる女性なんていなかったんだけどね。それでも村長さんや村人さんたちから


「魔物を倒してくれてありがとうございました!」


とお辞儀じぎされて感謝されてお見送りまでされたら、僕は簡単に木に登ってしまう豚ですよ。ブヒヒ。


 人としての尊厳はどこに!? そんなものは魔物と一緒に置いてきました! 木に登って空まで行けそう! とか思って調子にのっていたら、やっぱり世直しの旅につきものの試練という奴は、大きな口をあけ息をひそめ、じっと僕たちを待っていたのでした……



 村々から相談を受ける。世直しだと全て引き受けて、魔物は食事になって、それを僕たちはありがたく頂く。


 そんな村巡りの日々になっていたある日、変な装備品を見つけた。見た目は普通の剣。でも強化した目で見ると、使い物にならないと思えるほどにボロボロなのだ。なんでなのかは分からない。かといって呪われているわけでもない。なんとなく気になったし、捨て値で売られていたのを言い訳にして僕はこの剣を買うことにした。


 その間も魔物に出会った。その中でファンタジーの定番ともいえるゴブリンが増えてきて困っているという相談を受けたのだった。ゴブリンもなめてはいけない敵らしく、女性は特に気を付けるべしとのことだった。


 世直しだ、困った人がいるならば、助けてみせようホトトギス。とか言いながら僕はそのゴブリンの巣を偵察にいった。多くもなく少なくもない。20匹程度がいるようだ。


 でもこれくらいの数なら僕だけでもいけそうだとは思ったけど、これはナルメシアさんからだされたシャルリエーテ様と僕の訓練でもある。抜け駆けで戦果を総取りはよろしくないのだ。実戦で得られる経験値は普段の訓練と比べれば段違いだ。


 ある意味、経験値が日常は足し算、実戦は掛け算で増えていくと思って良いと思う。そんな機会を失うのは僕にとってもシャルリエーテ様にとってもマイナスでしかない。


 そんなわけでゴブリンの数、装備品、周辺の地形、見張りの位置等々を頭に叩き込み僕は偵察を終え素早く帰るのだった……

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