第38話 マジックの種明かし

 ☆オリタルト視点☆


 先輩たちみんな驚いてくれたかなぁと、僕はどきどきしながら待っていた。


 1年生のみんなはどんな結果をだしたのだろうかと首を長くして待っていたら、カガリ先輩にじろっとみられた後、パンッと軽く頭を叩かれた。


 叩かれたところをさすりつつ「どうして?」と涙ながらに訴えると「うるさい」とまた叩かれた。


 理不尽だと思いつつもみんなの様子をみると「お前らなかなかやるなぁ」と、上級生が1年生をめて打ち解けている様子も見えた。


 まぁ、結果として良かったのかなと僕は思うことにした。


 そして本日の訓練の終わりに


「1年生のみんなは大分魔力操作の訓練に慣れてきたと思いますので、これからは強化魔法で魔力操作の訓練をしながらツーマンセルの訓練をしてもらいます。魔力操作は自分でできる操作数の限界で大丈夫です。自分のできる範囲でやってください」


パンパンと手を叩き注目を集めるようにして説明する。


「だるさを感じたら休むのは絶対守ってください。疲れたら休む。けれど、だるさは休んで取れるものではないです。しっかり睡眠をとることが必須です。だるさを感じたら魔力操作はそこまでにして、ツーマンセルの訓練を行ってください。僕からの注意点は以上です。では今日もお疲れさまでした。」


と今日の訓練を終了したのだった。


 それから1ヶ月も経った頃だろうか。


 魔法学校対抗戦まであと3ヶ月、シリス先輩とカガリ先輩からちょっと聞きたいことがあると僕は呼び出しを受けた。


 こ、これが愛の告白か! と思ったけど、2人一緒に告白なんてないかと冷静になってしまった。


 まぁ僕だしなと思うと、それは確かになさそうだなとストンと落ちて妙に納得してしまった。


 微妙にテンションを落としつつ呼ばれた場所に言ってみると


「どういうことなんだ!」


「1年生に何をしたの!?」


と美人な2人に詰め寄られた。


「なになに愛が怖い!?」


と僕が答えると


「何を訳の分からないことを言っているんだ!」


「本当にその通りです!」


とため息をつきながらカガリ先輩とシリス先輩にがっかりされた。


「そんなに僕を見て、あからさまにがっかりしなくてもいいじゃないですか。何かあったんですか?」


と気を取り直して答える。


「C組の1年に何をしたんだ? 明らかに1ヶ月前より強くなってるぞ。たかが1ヶ月であんなに強くなれるものなのか?」


僕は自信満々に


「マジックには必ず種があります。僕は強化魔法という種をC組のクラスメイトにきましたから。」


「私たち上級生はあんな急激な成長はなかったぞ?」


「そうですよ」


とシリス先輩も真剣な顔で、さぁ全てをあらいざらい吐けという勢いで問い詰めてくる。


「丁度、先輩たちも1ヶ月みっちり僕の訓練をしてもらって魔力操作に慣れてきたでしょう? 手順をふんで色々やってもらってますけど実はきてきたんじゃないですか?」


とジト目をすると2人とも目を背けた。やっぱりかと思ったので


「丁度いい機会です。先輩方にも1年のみんなと同じ訓練をしてもらって、ついでにマジックの種明かしもしましょうか。」


と僕はいつも通りいつもの闘技場に向かうのだった。


「先輩方は訓練を始めて2~3日で聞いた話なので、僕が何を言っていたのか理解できなかったと思います。今、先輩方は強化魔法を使って2~3個の魔力操作ができるような進捗状況しんちょくじょうきょうですよね? あと3ヶ月で魔法学校対抗戦があることや、1年生の今の状況を見て僕も大丈夫かなと思ったので次のステップへ進んでもらおうと思います。」


 先輩方はみんな初めから教えてくれればよかったのにと、不満そうな顔をしている。


 次の魔法学校対抗戦への準備期間を考えた場合それもありだったとは思うけど、魔力操作の下地を作ってからの方が良いと思ったのが一番の理由だった。


「最初に1度に2つ以上のことをすると混乱しやすいです。だから1ヶ月は1つのことに集中してもらいました。そろそろいい時期かなと思いましたので1年生にしてもらった訓練の内容を説明します。」


 1年生も興味津々の様子だった。説明してなかったしね。みんなごめんねと内心謝りつつ


「強化魔法を魔力操作で強化して体を鍛錬した場合、強化魔法で強化した所は通常より何倍も筋肉に負荷がかかります。でもこの方法で鍛錬する方が体感は楽なのに効果は絶大です。1年生のみんなもそれは感じたでしょう?」


と僕は問いかけると1年のみんなはコクコクとうなずいていた。


「そして魔力を使っているので魔力量も増えるし、魔力操作もしているので魔法自体の威力と精度もあがるというおまけつきます。でもこの状態を維持したまま体を動かすのが、思ったより難易度が高いみたいなんです。だから魔力操作だけをずっとしてもらっていたという訳です」


僕は自信たっぷりに説明する。


「だから体の鍛錬が魔法の訓練に通じるっていうことになるんですのね。」


とシャルリエーテ様は自分の訓練の成果に納得し、さっきは凄い勢いで問い詰めてきたカガリ先輩やシリス先輩も納得できたのか、唖然あぜんとしながら話をきいているようだ。


「なので1年生のメンバーに、魔力操作したままツーマンセルの訓練をしてもらったんです。ツーマンセルと同時に魔法の訓練もして最初は戸惑ってたみたいですけど、それが1年生が急激に成長したマジックの種です。でも魔法学校対抗戦もあと3ヶ月という状況ですので習うより慣れろの精神です。これからはみんな同じようにやってみてください!」


と僕は話をめくくるのであった。

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