魔法学校対抗戦

第39話 スミラン魔法学校リーダー、リタ準備編

 そして3か月が過ぎた。


 僕の住んでいる西の王国、ぜルニシティ王国の現国王陛下であるシュナイダー・レゼルデン・ミットマイヤー国王のありがたいお言葉を頂いて、ついに王都の広大なエリアを使い魔法学校対抗戦が始まる。


 僕たちは初戦をスミラン魔法学校と戦うことになった。この魔法学校は水属性得意の魔法学校だ。


 基本的にはそれぞれの学校で得意属性があるけど、生徒たちは得意属性で縛られているわけではない。


 学校によってその属性の実績があるというだけだ。長い歴史の中で学校の得意属性の生徒が集まり功績を出した。そういう経緯がある。


 けれど逆に考えれば他属性学校にいって実力が認められれば、即戦力として戦える可能性が高いと考える生徒もいたりする。


 選手層の厚さとでもいえばいいだろうか? 例えば風属性で有名なネクサス魔法学校にいって代表選手になるより、エルバラン魔法学校に行った方が風属性のライバルが少なく代表選手になりやすいかもしれないと考えたり、厳密にはちょっと違うけどカガリ先輩みたいに考える人もいるということだ。


 そこにはそれぞれの戦略で考え方は違うけども、どこにいったって実力とやる気次第なのは変わらない。


「スミラン魔法学校のリーダーは誰なんです?」


と聞いたところ


「リタさんという女性です。水属性の魔法の使い手としてはスミラン魔法学校でトップですね」


とのことだった。


 僕は水属性が得意なリーダーのクラスに対戦しなかったため、特にこれといった水魔法対策を考えたことがなかった。


「どんな作戦で戦う人なんですか?」


「リタさんの得意戦法は水攻め。とにかく水量で圧倒してくる戦法らしいですわね」


「そう。そしてその戦い方は力技のごり押し」


「そうかと思えば水滴を飛ばして細かくダメージを積み上げる人もいる」


「どうやっているのか分からないですけど氷礫こおりつぶてを飛ばしてくる人もいましたね。」


「私たちと対戦した時、オリタルト君たちが泥沼を作って動きを封じてきたけどそれもできるとお姉さんは思うわよ?」


「でも多分だけど絡め手は苦手だと思うぜ。」


「へぇ、なんでそう思うんだよ?」


「正々堂々と戦うことが一番大切だと思っている。そういうタイプだ。曲がったことが大嫌いっていう典型のな。」


なるほどと僕はうなずく。


「自分に絶対の自信があるの。多少の小細工を仕掛けてもその圧倒的な魔力量でねじ伏せられてしまうのよ」


「負けたこっちは見下されている感じさ」


「それならみんなの訓練の成果を見るにはいい対戦相手じゃないですか」


 正々堂々というなら1対1の戦いを好むんだろう。こちらのツーマンセルがそのまま対策になっている。


「僕はちょっとやそっとの力で負けてしまうようなやわな訓練させたつもりはないですよ?」


 僕は先輩方にニヤリと笑って見せる。それを見て「オリタルトが自信満々なんて珍しい……」とみんながざわざわとしだすけど、


「僕たちの訓練の成果みせてやりましょう!」


と、負け癖はよろしくない。まずは気合いを入れて勝ち癖をつけるのだと、僕はみんなの気力を奮い立たせた。



 圧倒的な魔力量による水魔法の力押しに対しては、カクター君とグラシ先輩たちの頑張り次第だ。


 僕はまず相手の圧倒的な水量の攻撃魔法の対策を考えた。


 こちらの防御の要は旗を守る砦だ。相手は正々堂々と戦うことを望む。そして力技でくる。


 それならば絡め手で力技を封じ本来の力をださせずに勝つ。多分これがスミラン魔法学校にと戦う作戦としては正道だろう。


 けれど今回は魔法学校対抗戦で他の学校の強さを計りたい。正面から正々堂々その攻撃を防ぎきりその上で勝つ。


 優勝を占う前哨戦、実質は砦の防衛戦をしたい、そう思った。


 基本は空と地上からの波状攻撃で戦う。そう想定した場合、相手の攻撃が僕たちの城の完成より前に攻撃されて叩き潰されるのが先か? それとも僕たちの砦が完成し相手の攻撃を防ぎきって勝てるか?


 魔法学校対抗戦は僕たちの対戦相手だったリーダーのカクター君、カガリ先輩、グラシ先輩、シリス先輩が仲間だ。


 と思い、改めてカクター君を探して話をしてみる。


「カクター君は前の対戦では砦で守ってたけど攻撃に参加するつもりってある?」


と聞いてみると


「いやぁ、僕は防衛専門だよ。攻撃はみんなとの訓練で底上げできた程度だね……でもね。オリタルト君たちとの訓練で魔力量の底上げもできたし、以前よりずっと素早く砦も素早く造れるようになったと自負してるよ。」


と穏やかに話していた。


 人当たりが良いカクター君は戦闘タイプの人ではないんだなぁと思った。


 でも考えようによっては、2年B組のグラシ先輩と組ませれば最高の守り手になってくれるのではと思った。


 攻撃できないから時間稼ぎが限界だと言われればそうなんだけど、それはまた別の話。


 砦を突破され旗まで攻め込まれる状況なんてもう負け戦だしなぁ。そこから時間が稼げるならありがたいと割り切った方がいいと思うんだよね。


 守りの要はカクター君とグラシ先輩たちと決まった。


 僕たちが現状で考えうる最速で建造できる強固な砦。


 これで相手を迎え討つ。僕たちが狙うのはリタさんの戦闘不能、リタさんのバッジの奪取、そして敗北の意思表示のどれかだ。


 これが僕の考える今回の作戦だった。


 けど、普通なら採用しない作戦なんだよね。攻めている方はただ攻めているだけでも調子づく。


 相手がその場から撤退なんてした日には火に油を注ぐようなものだ。しかもその勢いをとめられなければ負けるのだ。


 戦いとは本来は命のやりとりだから。絶対に守れるかどうかわからないのにそんな危険なことをする必要なんてない。


 けれども、今回の対戦場所には回復の魔道具が張り巡らされ限りなく死なない安全な戦い。


 だからこそみんなの訓練の成果を試したい。そして自信をつけてほしい。


 7年連続最下位の僕たちエルバラン魔法学校は初戦を制し、今年は最下位から勝ちあがっていくんだ! と。


 だからこそスミラン魔法学校にまず進撃の狼煙のろしを上げ、そこから勝ち上がっていく、その前哨戦だと僕は思った。


 そうなれば攻撃だ。空を飛べる2年B組カガリ先輩。回復魔法の3年A組のシリス先輩と武闘派集団の皆々様。


 空と地上からの同時攻撃は組み合わせれば、僕たちエルバラン魔法学校の持てる手札としては最強の組み合わせといっていいだろう。


 さてと僕たちの方針は定まった。あとは相手の出方次第! 僕たちの訓練の成果をみせる時だ!

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