第32話 カガリ先輩の不思議?

 そしてアルステナ先生から


「優勝おめでとう! よくやった! 今日はゆっくり休め! 多くは言わない。みんな疲れているだろうからこれで解散だ!」


とさっくり解散となった。



 翌日学校に行くとアルステナ先生から


「さて昨日1日ゆっくり休んだか? 学年別対抗戦が終わった。次は4ヶ月後、各地の魔法学校から代表者を集め協力して戦う魔法学校同士の団体戦がある。オリタルトとシャルリエーテ。2人は後で職員室に来るように。以上だ。」


と言って去っていく。


 ざわざわとする教室。僕とシャルリエーテ様は職員室に向かう。


 そしてアルステナ先生から改めてエルバラン魔法学校の代表メンバーとして出場しないか? と打診を受けた。


 もちろん僕とシャルリエーテ様は参加したいと伝えたのだった。


 そして代表メンバーが集められた。


 そこでは初めて見た人物もいたが1年D組カクター君、2年B組カガリさん、グラシさん、3年A組シリスさんと僕たちが戦ってきたメンバーがそこにはいた。


 カガリ先輩はスレンダーでしなやかな体つきの、けれどでるところはでているという肩まで伸ばした黒髪黒目。端正な顔の綺麗な女性だった。


 シリス先輩はいわゆるお姉さんって感じでちょっと目のやり場に困るくらい胸が大きく、背中まで伸ばした青髪青目。愛嬌のある笑顔からみえる八重歯が特徴の可愛い女性だった。


 戦闘中は必死過ぎてまともに見えてなかったんだけど、こんな綺麗で可愛い女性だったんだなぁとぼんやり考えていた。


 学年主任のサンジェルバ先生がガヤガヤとしていた生徒をたしなめ


「今までは対戦相手だったが、今度は代表メンバーとして一緒に戦うことになる。協力していい試合をするように。国王陛下もご覧になられる。みっともない戦いはするなよ!?」


と発破をかけられた。


「絶対に覚えておいて欲しいのは6属性の魔法学校の代表メンバー同士で戦うということだ。一応、対戦相手の学校名を読み上げるけど忘れていいよ」


とサンジェルバ先生が笑う。適当な先生だなーと僕は思った。


「魔法学校対抗戦の出場校は私たちエルバラン魔法学校が光属性、クスララ魔法学校が火属性、スミラン魔法学校が水属性、ラプサ魔法学校が土属性、ネクサス魔法学校が風属性、そして前回の優勝校であるヴォラス魔法学校が闇属性で名を馳せた学校という形になる。いきなり聞いても学校名なんて全部覚えられないだろう? あとで書面にして渡すから安心してくれ」


と、実際に説明を聞いてみたら「全部覚えられないだろう?」という意見には僕も激しく同意だし、書面くれるのは親切だなと思うとなんだかニヤニヤが止まらない。


「ちなみに対戦は3日に1回の総当り戦方式だ。次に戦うまでは2日の猶予がある。この間に何をどうするかは各学校の自由だ。ゆっくり休むもよし相手校の対策のため鍛錬するのもよし」


 こんこんと額に指を当ててサンジェルバ先生は注意点を話す。


「但し前日、ぎりぎりまで訓練して当日魔力切れをおこすなんてミスはするなよ? 他は全て自由だ。以上!」


とのことだった。


 メンバーを見ての感想は心強いにつきた。


 トミー君はアルダイア大森林で火災を起こしてみんなに責められて落ち込んでいたうえに、リーダーとして戦っていたのに代表メンバーには選出されなかったようだ。


 かわいそうにと思う反面、あれだけ大問題起こしてたら仕方ないよなぁと思うところもあった。


「みんなそろって心強いなぁ、たはは~。」


と言うと


「「「それはこっちのセリフだ『です』」」」


と全員から返事がありちょっと緊張してしまった。


 魔法学校対抗戦の意義として建前は魔法学校の交流や魔法の発展のためと言われている。


 実情は国のお偉い方たちが優秀な生徒を知るのに便利な制度なんだろうと僕は思う。生徒は自分をアピールしたいし国は優秀な生徒を知りたい。


 お互いウィンウィンな関係になれる仕組みと言える。


 とはいえ、僕は冒険者希望なので就職先にはならないからあんまり興味がないんだけど、戦いには俄然がぜん興味があるのだ。


 3年のシリス先輩から今回の魔法学校対抗戦にそなえて意見が聞きたいと言われた。


「空飛べる人が2人いると戦況は楽になるんでしょうね」


と僕は戦闘前に一番思っていたことを伝えた。


 空を飛べる人が2人いたなら僕たちはカガリ先輩たちに負けていたと思うからだ。


 地上と空。この2領域で攻めれるならばとても優位に立てる。


「空を飛んで攻撃魔法をできる人をもう1人ね」


とシリス先輩は思案していた。


 あとは2人でパーティを組んで戦う練習をしたおかげで有利に戦えましたと伝えた。


「そうね、たしかにあの戦い方は私たちのメンバーとも互角以上に戦えていたわね。」


とシリス先輩は頭にペンをあてて思い出している様子。


「ええ。1人より2人がいいんです。ツーマンセルっていうんですけど。もちろん多ければ多いほどいいんですが、人数を増やして連携が取れなくなるのは困るんですよ。だからまとまりとして2人なんです。でもツーマンセルを複数集め、さらに上位のリーダーを決めればその集団はさらに活躍できるのでないかなと」

 

 1人の力では弱くても連携がだいじだと思うと僕は率直にそこは伝えた。


「参考にさせてもらうわね。ありがとう」


と話は終わりかなと思っていたらシリス先輩はちょっとためらってから


「オリタルト君。君たちのクラスって放課後、自主訓練をしているって聞いたんだけど?」


「えぇ、してますよ。僕がした訓練を改善したものを提案してそれをしてもらっていますけど?」


 意を決したようにそれでもどこか緊張気味に


「もしよければその訓練に、私たち代表メンバーの希望者だけでもいいから参加させてもらえないかな?」


「お。それはぜひ俺も参加さえてもらいたいな。」


「私も参加したい!」


と次々に声が上がる。


 優勝した1年生の訓練がどんなものなのか気になるんだろう。カガリ先輩以外全員が希望した。


 シリス先輩が


「カガリさんあなたは参加しないの?」


と心配していたがカガリ先輩は


「そういうの、私はいいので」


と言って去っていった。


 それを見てこの学校に多数いるであろうカガリ先輩のファンらしき女の子たちはカガリ様はやっぱり孤独で孤高ここうでカッコイイわよねー! そこがイイのよ! とワイワイ騒いでいるのだった。


 それから僕たちは代表メンバーで合同訓練も行った。


 1年C組の生徒のみんなも一緒に訓練だ。C組のみんなは緊張しまくっていたけど、そのうちきっとなじむだろう。たぶん。


 僕のツーマンセルの訓練は採用された。


 カガリ先輩以外の人がカガリ先輩と同等に飛ぶことと攻撃魔法を両立できるかは、風得意な人たちの頑張り次第かなぁと考えていた。


 シリス先輩の武闘派集団のメンバーも、連携をとるように訓練を行うというんだから脅威きょういという他ない。


 ただでさえ1人でも強いのにうまく連携を取れるようになれば格段に戦力はあがる。


 取れる選択肢も増えるだろう。僕は自分で考えた6属性の訓練の行動計画を立て、いつも通り淡々と続けるのみだ。


 とはいえカガリ先輩が参加しないのはどうにも違和感があった。


 興味津々って感じで聞いてたから参加してくれそうな気配はあったのに。参加するかどうかを聞かれた途端、急にかたくなになったようにみえたんだよね。


 希望者だけって話だから僕の考えすぎならそれでいいんだけど。


 余計なお世話だっていうのは重々承知の上なんだけど、ちょっと聞いてみるかなぁと僕はカガリ先輩を探すのだった。

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