第21話 1年A組リーダー、トミー戦② ☆トミー視点☆

 ☆トミー視点☆


 俺はA組の仲間が次々とやられていくのを見て、何とかこの状況を打破だはしなければと考えていた。


 敵の姿は見えないのに味方だけが一方的にやられていく。


 俺はこの状況を好転させるため、あえて森に火魔法を放ちその混乱に乗じて森から逃げる作戦を実行する。


 残っているものだけでも撤退すべきだと思ったからだ。


「みんな、森から出るんだ! このままだと全滅する! 火を放つから急げ!」


 指示をだし火魔法の基本ファイアーボールを撃ちまくり、森の外へ向かって走りだした。


「火に乗じて逃げろ! 森から出さえすればなんとかなる。あんな奴らのいいようになんてさせるものか!」


と内心忸怩じくじたる思いで森の中を駆け抜ける。


 あとちょっと、もう2歩あと1歩……よし森を抜けた! と思って振り返るとそこに味方は誰もいなかった。


 取り囲むように出てきたのは、C組のオリタルトとその仲間たちだった。


 オリタルトから


「トミー君。森にファイアーボールを撃ちまくって森を火事にするなんて、森の中で気絶してる味方も全員殺す気なの? 一応、僕の仲間が君のクラスメンバー全員を安全な場所に避難させておいたよ」


と言われカッと頭に血が上った俺は、全力で中級魔法を連発して放った。魔力をすべて使いきった。


 だがそこには平然と立っているオリタルトがいた。


「俺の全力の魔法攻撃をくらって無傷だと。そんな馬鹿なことがあるわけが……」


「頭に血が上った時点で君の負けだよ、トミー君。蜃気楼しんきろうって知ってるかい?」


その言葉にハッとする。


「まさか……水魔法でお前自身の幻影を作り出した?」


「そのとおり。君は蜃気楼で作り出した僕の幻影に、全力で魔法を無駄打ちしたんだ。たいして難しい魔法でもないだろう? いつもの君ならおかしいって気づいたに違いない。でも森に火をつけたのは失敗だったね」


 俺はそう言われてハッとする。


「そうか。森の炎の熱で蜃気楼がさらにわかりにくく……」


「そうだね。味方が一人もいないことで冷静な判断力をなくした君は、全力で魔力が尽きるまで魔法を使った。そして僕たちに囲まれている。まだ続けるかい?」


 ここまで計算してたのかと俺はひざをつき力なくこうべれた。


「……俺の負けだ」


「ということでこの勝負。僕たちの勝ちだ!」



☆オリタルト視点☆

 

 僕は拳を振り上げ勝利宣言する。C組の生徒は勝利をみんなで叫ぶのだった。


 1年生で僕たちは優勝した。


 このエルバラン魔法学校で最高学年は3年生だ。


 エルバラン魔法学校は、生徒同士の交流を学年を超えてしてほしいという理念をかかげている。


 だから学年を超えて競い合う機会を作っているとのことだった。


 次は4ヶ月後の10月に学年別対抗戦があると、改めてアルステナ先生から話があった。

 

 1年生では僕たちが優勝したのでC組が出場。2年はB組。3年はA組が優勝とのことだった。


 早速情報収集だ。


 上級生のことを知っているクラスメイトを集めて話を聞いた。


 2年B組はカガリさんという女性リーダーがまとめていて、風魔法を得意属性としているそうだ。


 孤独で孤高ここうでカッコイイと評判。なんでこんな情報が集まるんだろうと悩んでしまうけど、何でもいいから情報を集めてくれって言ったからかなぁ? 頼み方も注意した方が良いのかホントに悩んでしまう。


 3年A組はシリスさんという女性がリーダーで、聖女のジョブを授けられ光魔法を得意属性としているとのことだった。


 聖女は泣かない鉄の女という噂もあるそうだ。これ何の役に立つ情報なんだろう? と僕は本気で頭を抱えるのだった。


 カガリさんは風魔法で空が飛べる。


 シリスさんは特に回復魔法が得意とのことだった。


 学年別対抗戦は総当たり戦になるとのことだったし、どちらのチームとも必ず戦うことになる。


 どちらの相手も作戦を練らないと一筋縄ひとすじなわではいかなさそうだと、これからの戦いを見据みすえ、僕は身を引き締めるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る