第20話 1年A組リーダー、トミー戦①

 僕たちは無事に決勝戦進出となった。次の対戦相手はA組のトミー君たちだった。


 B組との戦闘に勝ち上がってきたようだ。


 トミー君の得意属性は火だった。火を起点に攻めてくるだろうことが予想される。


 B組との戦いを見る限り間違いない。一方的に火魔法をぶつけ障害物をなぎ倒しB組のリーダーを戦闘不能にしたようだ。


 今回は作戦をみんなで相談してみることにした。


 D組との戦闘を経験してみんながどう考えるかを意見を聞いてみたかったからだった。


「火で何もかも燃やし尽くす勢いで攻撃してきたんだろう? 障害物も焼き尽くして。障害物を作る意味はあるのかな?」


「でも、そしたらどうやって相手の進撃を止めるんだ?」


「それに障害物がないと相手の攻撃をまともにくらうんだ。何もしなければそれこそ負けてしまうだろう?」


「水の壁とか作って防げないかなぁ?」


「水の壁の消費魔力を考えたほうがよろしいのではなくて? 水の壁を作っただけで、魔力切れになってしまいますわよ?」


「じゃぁどうするっていうんだ? 相手の火魔法をなんとかしないと危なくて近づけないんだぞ?」


 みんな行き詰っているようなので僕はちょっと発言してみる。


「基本的には何もしなくていいと思いますよ。戦う場所を森の中にするだけでいい。火が燃え広がり自分たちの安全すらおびやかす状態になると考えれば、普通なら森の中で火は使わないはずですからね」


「なるほど! たしかにそうすれば火で大っぴらに攻撃してこないはずだ」


「なら、森の中に拠点を作る感じでいいのかしら?」


「そうですわね。木や葉が目隠しになるし、視界も悪くなるから待ち伏せして狙い撃ちしやすいし……こちらからは相手の動きが手に取るように分かりますわ!」


「だな! 一人一人狙い撃ちして倒していく作戦だ!」


 みんなの話し合いで割と方針は固まったようだ。僕としても特に異論はなかった。


 ただ相手には森の中で、待ち構えていると思わせないようにするのがこの作戦のきもだ。


 僕たちは逃げるために仕方なく森の中へ逃げ込んだ。そう思ってもらう必要があると思った。


 狩りをしているつもりでいたのがいつの間にか狩られる立場になっていた。


 この立ち場の逆転が相手の心理状態に影響を与えるんだ。主に悪い方向に。


 そうなってくれたら勝ったも同然だろう。


 だからこそ捨てる前提で障害物である壁を進軍中は作成しておくことを提案した。


 僕たちはB組のように障害物を、火魔法で焼き尽くされたため仕方なく逃げだす。そして森の中におびき寄せたところを返り討ちにする。


 うまくA組をだませれば勝利に近づくと考えた。


 2日休みがあり3日目にクラス対抗戦のA組と戦闘をするということだった。学年別対抗戦でも同じ日程になるので、よく覚えておくようにとのことだった。


 2日の間にできる限りの準備をする。前々からできる準備はあらかじめしておく。どうやらそういうものらしい。


 そしていよいよトミー君たちと戦闘開始だ。


 相手のトミー君たちはガンガン火魔法で攻撃をしてきた。


 僕たちは予定通り障害物を作り魔法で反撃をした。けれど障害物は燃やされしまい、くやしがりながらその場所を捨てて逃げる。


 笑い声をあげながらA組のトミー君たちは、火魔法で攻撃をしかけてくる。


 うろたえながら逃げ込む先はみんなが待ち伏せしている森の中だ。


 逃げていく僕たちの行く先を見て森の中には逃げ込ませるなと、トミー君が大声をあげるがもう遅い。僕たちはそれぞれ森の中に逃げ込んだ。


「ちっ。森の中に逃げ込んだか。火魔法は使うな。森林火災になったら俺たちの命も危ない。俺は風魔法を使う。各自、火以外の得意魔法を使え!」


とトミー君はクラスメイトに指示を出す。


 トミー君自身は火が最も得意だが風魔法も使えるみたいだ。


 火の勢いを強めるのには風で燃え広がらせるのが、一番効率がいいからだろう。


 こういう森の中だったら火災にならずに安心して風魔法なら撃てるし、やっぱりみんな色々考えてるんだな。


 A組はトミー君を先頭に森の中に入っていった。


「うわぁ――――」


 と悲鳴が上がる。宙づりになったA組の男子の声だった。


 足を踏み込むとひもでからめとられ、真上に木の反動で持ち上げられるという魔法でもなんでもなく、森の獣を狩るための罠だった。


 宙ぶらりんになった者は頭に取り付けたバッジをとられて戦闘不能とみなされC組にポイントが入る。


 木に手を置いた瞬間、木から手が離れなくなる罠。


 もちろん足場にも同じ罠があり、地面から足が離れなくなる罠もあった。


 注意深く歩いていたのに、音がした方を向くと背後から魔法が飛んできたり。


 木の枝かと思っていたら、擬態化ぎたいかして隠れていたC組のメンバーにバッジを取られてしまったり。


 そのほかにも頭上から奇襲を受けたり。


 もっともやっかいなのはあちこちで悲鳴があがり混乱する中、逃げたりあわてて動いてしまったような、ちょっと団体から離れてしまった味方が次々と倒されていくのだ。


 ちょっと目を離し振り向いてみると、いたはずのクラスメイトがいなくなっている。


 これにはA組のメンバーは慌てふためいて恐慌きょうこう状態に陥った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る