クラス別対抗戦
第19話 1年Ⅾ組リーダー、カクター戦
「よく気づきましたね。その通りなんです。指示役を倒すのは実はかなり重要です」
僕はみんなが自発的に話をしてくれて、こういう結論をだしてくれたのを喜んだ。シャルリエーテ様を僕はよく気づいてくれたと褒める。僕から褒められて
「これくらい、当たり前ですわ!」
と自信満々に胸を張るシャルリエーテ様。
「ちなみにそれぞれのツーマンセルのパーティリーダーには、この指示役をお願いしたいというのもあります。でも弱いから指示役ができないかというとそうでもないです」
と付け加える。
「時間がないので現状はそう決めましたけど、前衛役は目の前の敵をみるので精一杯なのを考えると、後衛役の方が戦場を見渡しやすいというメリットがあるのも事実なんです」
と補足を伝えつつ良い状態で訓練のまとめができたと満足した。あとはクラス対抗戦で良い結果がでてくれればと思った。
◇
クラス別対抗戦の開会式が始まった。無詠唱が使えたという今はいない校長先生に話を聞いてみたいなぁと思ったりしていると、校長先生の長い話もさっくりと終わりいよいよD組との対戦だ。
みんなにD組の情報を集めてもらった結果、D組のリーダーはカクター君という男子生徒。土属性が得意なリーダーらしい。可もなく不可もなく、平均的な生徒という話だった。みんなの訓練の成果をみるのには丁度いい相手かなと思った。
「では、始め!」
と魔道具を使って声が大きく響き渡り競技開始だ。
魔道具に拡声器があるのかぁと前世を思い出しつつも、この競技場になっている広大なエリアすべてに響き渡るようにできているのは凄いなと思った。
とはいえ競技は始まった。カクター君が率いるD組は土魔法で壁を作り出し、その壁を使って相手の攻撃を防ぎつつ、魔法攻撃し進軍してくるというものだった。思ったより手堅い作戦だなと思った。
でも壁を作るのに時間がかかるようだ。だから僕たちが取る作戦は
「速攻でいきますよ! 壁を作られて拠点の守りを固められる前に倒しましょう!」
と指示をだす。
何もしなければどんどん守りを固めていかれてしまう。カクター君の得意なことは土魔法を使った物作り。だから時間を与えすぎてしまっては何を作られるか分からない。
ある程度の守りのメンバーを残して相手の陣地をめざし旗を奪う。D組は土魔法で全体を守れるように壁を作っていたので
「各自得意魔法で一か所を集中的に攻撃! 壁が崩れたらそこから相手の陣地になだれ込で旗を奪って!」
「わかりましたわ!」
とシャルリエーテ様も気合をいれる。
そしてカクター君たちの砦の壁に小さな穴が開く。
そこを起点にして複数人の魔法を集中させて人が通れる穴をあける。壁を作っていたD組の生徒たちはばらけていたため守りは薄い。早々に人が通れるくらいの穴をあけて突入しリーダーのカクター君を探す。
「見つけた。やっぱり2階にいたんですね」
そうカクター君に話しかける。
「そうだね。君たちがもっとゆっくり攻めてきてくれていたら僕らはもっと強固な砦だって築けたのに」
悔しそうに語るカクター君。だがまだ
「避けて!」
と指示をだす。カクター君は土属性の中級魔法を撃ってきた。
土塊をかわして僕たちの半数は風魔法で、突風をカクター君めがけて撃つ。
「今度はこっちの番! 突風に土魔法をのせて!」
と指示をだすとシャルリエーテ様はすぐに土魔法を撃ってくれる。シャルリエーテ様に続けと残りのメンバー全員で土魔法をあわせて撃つ。
D組のメンバーも異変に気付き、カクター君を守ろうとしていたけど
「砦の中に僕たちを入れてしまったのが敗因ですね。砦の守り方がバラバラでした。素早く指示をだし守るための戦力を集中すべきだったと思いますよ?」
と僕はD組の敗因をそう
突風の威力もさることながらその突風にのり、威力の上がった大小さまざまな土塊を、防げず避けることもできなかったカクター君たちは吹っ飛んで行った。
思った以上に風にのった土塊は威力が出ていたようにみえる。吹っ飛び方をみるに即死はしてないよね? とちょっと心配になるほどの威力だった。
治癒の魔道具がこのエリア内に張られていなかったら、カクター君の命が危なかったかもしれないと僕は胸をなでおろした。
そしてⅮ組リーダーのカクター君が戦闘不能ということで、僕たちの勝利が確定した。こうして初戦を制した。
けれど一番大きな収穫は2ヶ月頑張った末に手に入れた魔法の力と、ツーマンセルの戦い方を実戦で経験できたことだった。この戦いでみんなが実感した自分の力。
風魔法を使った人は風魔法の威力の確認。土魔法を使った人は土魔法の威力。その魔法の威力が2ヶ月前より確実に強くなっていると、僕たちはみんな自信をつけることができたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます