第3話 無詠唱


 魔力量もある程度増えたと思う。だるさがそんなにでてこなくなったからね。僕が取り組むのは最初から最後までこの家の倉庫を探検して見つけた魔法書だ。


 全属性初級魔法が使えたことから考えてどうせなら全属性頑張ろうと思った。不得意は少ない方がいいだろうからね。そこで考えたのが僕なりの魔法学習方法だった。


 1週間で特に集中して訓練する属性を決める方法だ。


 例えば火を集中的にする場合は火を60%水土風を10%光闇を5%という感じに1週間頑張る。次の週は水を頑張る。その場合は水60%土風光を10%闇火を5%頑張る。


 というように山型になるようにまんべんなく訓練して他の魔法を忘れないようにメリハリをつけて訓練する方法だ。体を鍛えることは毎日ずっと続ける。6週間で魔法は6属性は1巡することになる。そのあとはまた6週間6属性を同じように繰り返していくだけだ。


 基礎体力はないよりあった方がいいと前世の経験から思う。テストだって1日に何科目もこなさないといけない場合がある。その時に体力がなければまともに頭が働かない。今、思い返すと戦う前に負けてたんだよなぁと思う。


 地道に鍛錬たんれんと魔法の訓練をしていったのだけどある時、強化魔法を鍛えるのと体の鍛錬は連動しているってことに気づいた。強化魔法をかけたまま動けるようになるってことは魔力操作がうまくなったってことで、それはつまり魔法の技術が上達しているってことなんじゃないかと。


 魔力量が順調に増え続けていることに自信を得つつ魔法書をワクワクしながら読み進めていく。けれども、やはり火は火事が怖いので最後だなと思った。


 まぁやっぱり最初の中級魔法は土属性が安心かなぁと考えた。土塊が飛んでいくと魔法書には書かれていた。土塊がどれくらいの大きさなのか謎なんだよねコレ。危ないかなぁっていうのも手伝って外に出て練習することする。


 そこら辺の説明もしてほしいなぁと少々魔法書に文句がでる。とはいえ、一回やってみればいいだろうと思い呪文を本を片手に読んでみる。詠唱が終わると右手の前に土が集まり塊となって空の彼方へぶっ飛んでいった。


 まじか。まともに当たったら死人がでそうな威力じゃないか。


 中級結構ヤバイな。とは思ったけど初めて中級魔法が発動したのだ。これは中級魔法を扱えるくらいに魔力があるってことだしだるさも感じない。


 まだまだいけそうだ!


 僕は初めての中級の土魔法を調子に乗って撃ちまくるのだった。そして案の定、魔力不足で気絶してた訳だが寒くない時期でよかった。風邪ひくとこだった。反省反省。


 その後、中級魔法の訓練と体の鍛錬を続け意識しなくても強化魔法を維持できるようになると、明らかに全属性の魔法の精度と速度と威力が跳ね上がっているのに気づいた。


 この世界の強化魔法って面白いもので、強化魔法を魔力操作して体にかけたまま鍛錬するとなぜか筋肉に負荷がかかる。重いものを動かしたりするのも強化魔法で楽なのに筋肉には通常の何倍もの負荷がかかっているようなのだ。この魔力操作をした強化魔法は筋トレのトレーニングを補助する器具のようなものだった。


 まさに使えば使うほど強くなる。それほどの効果があったのは嬉しい誤算だった。


 最初の頃は強化魔法の魔力操作だけで気絶してるときもあったけど、今では1日中かけ続けても問題ないくらいになっている。


 そして僕は強化魔法を魔力操作をして朝は体を鍛えた。昼から夕方は僕なりの魔法学習方法を実践し、7年ほど毎日コツコツ続けた結果、6属性全部の上級魔法を使えるようになっていた。


 そして魔法書の最初と最後に書いてあったイメージが大事という一文をふと思い出した。そこで目を閉じて体の中の魔法の発動までの魔力の動きをイメージした。魔法が発動するまでの感覚も再現して目を開けてみると手の先には砂が発生していた。


 ……これは異世界系の物語で有名な無詠唱じゃないですか‼

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