第4話 星凪の儀
上級魔法を使えるようになりやることはやったという達成感があった。そこで母さんに僕は話をしてみようと思ったのだ。
「母さん、魔法書に書いてある上級魔法までできるようになったらどうしたらいいんでしょうか?」
と夕食の時に聞いてみた。すると
「上級魔法までできるの?」
と本当に? というような顔で聞いてきたので、「そうです」と答えると
「呪文を覚えるところがまず一番最初につまづくポイントだから、頑張って何も見ないでいえるようになるまで覚えることが大事ね」
とにこやかにまったく信じてない母さんは答える。
「はい。呪文はもう覚えたんです」
と僕が答えると目を見開き
「‼ ……もう覚えた? そ、それなら次は魔法が使えるようになるまで繰り返す感じかしら……ね?」
と疑っているような母さんだったが
「はい、本に書いてある上級魔法までは全部使えるようになったんです」
「!!! 上級魔法まで全部使えるようになった!?」
今度は開いた口がふさがらなくなっていた。秘密にするようなことでもないだろうと思って
「上級魔法までなら無詠唱でできるようになりました」
と話すと
「!!!!!!」
と口をパクパクとさせながら言葉にならないくらい驚いているようだった。母さんはなぜそんなに冷静なのかと逆に問い詰めるような勢いで
「上級魔法まで本当に使えるの!?」
「はい」
と答えると目に涙をためて
「上級魔法まで全部使えて無詠唱まで……オリタルトは天才ね! 母さんの自慢の子だわ!」
なにやら浮かれまくっているようだ。子供にすぐ天才って言うのはやめてほしい。ちょっとできたからって
そんな人生はもうこりごりだ。前の人生と同じ間違いはしない。
「そんなに浮かれないでください。小さい頃だけ天才なんて場合もあるんですから」
と僕が言うと母さんは首をかしげつつも
「あとは……
「英雄譚の本ででてましたね」
「そう! 強いジョブを授かれば将来性は抜群! しかも魔法を全属性つかえるなんて‼ ちなみに15歳だから。星凪の儀があるのって」
「15歳って今年じゃないですか!」
「そうよ! うふふ。楽しみね!」
母さんは終始浮かれ気味だった。
◇
そして今日は星凪の儀のある日だ。
ジョブが授けられる日。みんな15歳になったものは教会へ向かう。どんなジョブを授けられるのかは人生がほぼ決まってしまうくらい重要なことだ。料理人なら目指すは自分の店を持つことや王宮の料理長だし、剣聖や賢者なら魔法学校を卒業したあと王国騎士団に所属したりすることになるらしい。
魔王もいない平和な世の中に王国騎士団も何もいらないと思うなかれ。人の敵はどこまでいっても人なのだ。魔王がいなくても人同士の争いはなくならない。せちがらい世の中だなぁ。
まぁそんなわけで人が並んでいる。歓声があがったり静かだなと思っていたら泣きながら歩いてくる子がいたりして試験の結果発表みたいだなと思っていた。
実際、試験の結果発表だよな。こんなの。でも努力も対策も傾向もない。15歳になって鑑定を受けたら人生が決まってしまうのだ。でも前世を思えば特にやりたくもない資格試験に落ちて、ひっこみつかなくなってずるずると受け続けたのを思い出すと気は楽だ。
だって目標は神様が決めてくれるのだから。あなたに向いた適性はこれですよと教えてくれる。こんな楽なことはない。自分の適性が分からないから人生
魔法の練習は楽しかったし使えても困ることなんてないだろう。何のジョブをもらったって楽しく生きていける自信が僕にはある!
どんなジョブでもどんとこい! と僕は安心しきっていた。
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