第12話 夏休み、久しぶりの再会!
期末課題も無事クリアして、待ちに待った夏休み。
わたしたちは、元いる世界へ帰るため、《神の間》へと集まっていた。
「それじゃあエリヤ、ゾーン、またね」
「ええ。2学期、またお2人に会えるのを楽しみにしていますわ」
「はい。ソラは休みすぎて、覚えたことを飛ばさないよう気をつけてくださいね」
「ゾーンこそ、勉強しすぎて頭のネジ飛ばないようにねっ!」
「――まったく、ソラとゾーンは仲がいいのか悪いのか分からないな」
苦笑しながらそう笑うスペース様の言葉で、リオン先生やエリヤ、周囲ににいるメイドさんたちに微笑ましい顔をされていることに気づく。
は、恥ずかしい……。
こんなんで仲いいわけないじゃん!
……まあべつに、今は嫌いなわけでもないけどっ。
「諸君、期末試験の突破おめでとう。どの《魔法空間》も素晴らしい出来だった。次に顔を合わせるのは夏休み明け、9月1日の午前9時だ。くれぐれも規則を守って、【魔法空間師見習い】として節度を守って楽しむように」
「「「はいっ」」」
「……うむ。それでは、元いた世界への転送を開始する」
スペース様がそう言って私たちに手をかざすと、それぞれの足元に魔法陣が輝く。
こうして、わたしたちは久しぶりの帰省を果たした。
◆◆◆
「おかえり、空!」
「お母さんただいまっ! ……お父さんは仕事?」
「そうよ。でも今日は空が帰ってくるから、残業はしないって言ってたわ」
「相変わらずだね」
「そういえば、あさひちゃんたちから何か聞かれた? むこう、電波繋がらなくてこっちと連絡取れなくてさ」
「4月半ばごろ、空の既読がつかなくて心配ってあさひちゃんが。だから、山奥だから電波が繋がらないのかもって言っておいたわ」
お母さんナイス!
あとでグループチャット――は追うの無理そうだから、せめて個人チャットだけでも見ておこう……。
「そうそう、修行場所がお城でね、すごかったの! 専属のメイドさんもいたんだよ? わたし、最初間違った場所に転送されたのかと思って焦っちゃった」
「ふふ、すごいわよねあのお城。お母さんもたまに行くけど、いつ見てもドキドキしちゃうわ」
「えっ!? お母さん今でもあそこに通ってるの?」
「たまにね。だってお母さんも現役の【魔法空間師】だもの。活動報告書を提出しに行ったり、同窓会があったり、スペース様とお話したりすることもあるわよ」
えーっ!?
もしかして、わたしがいる間にも来てたのかな?
でも、なんとなくそれは聞いちゃいけない気がする……。
「あそこの食事は豪華だから、うちのじゃ物足りなくなっちゃうかもね」
「うーん、たしかに豪華なんだけど、でもわたしはやっぱりお母さんの料理が好きかも。なんか飽きちゃうんだよね……」
「まあ嬉しい! じゃあ今日は、空の大好きなハンバーグカレーにしようかしらね」
「本当!? やったー!」
そういえば、食堂にカレーがないのはどうにかしてほしいな!
2学期が始まったらリアに相談してみよう。
「晩ごはんの時間までまだあるし、あさひちゃん家に行ってきたら?」
「そうだ、あさひちゃんたち元気にしてるかな」
つむぎちゃん、みおちゃん、ひなちゃん、ゆずはちゃんも。
チャットを確認してみると、あさひちゃんから「山奥にいるから繋がらない」という話を聞いたのか、5月以降はほとんど何も着ていなかった。
たまに「チラッ」とか「そら、元気?」とか着てるくらい。
グループチャットは相変わらず大盛況だから、まあ元気ではあるかな。
追えてはないけど、最後らへんを見たら「中学の勉強無理すぎ」「宿題多すぎない!?」とか書いてあってほっとした。分かるー!
わたしはグループチャットに、早速『ただいま!』『連絡取れなくてごめん!』『電波繋がらなくてスマホ死んでた』と打ち込んでみる。
すると早速、みんなから次々と驚いた顔のスタンプが送られてきた。
よ、よかった……忘れられてなかった……。
その後、『そら、おかえりー!』『山奥ってなにごと?』『電波ないとかウケる』と次々と文章が届く。
いつものみんなのいつも通りの反応に、思わずじわっと涙が溢れる。
そんな中、1件の個人チャットが送られてきた。あさひちゃんだ。
『そらおかえり! 元気にやってた?』
『ただいまー! 元気だよ! スマホ死んでてごめんね!』
『ううん、元気ならよかった! もうずっと会ってないし、久々に会いたいな』
『わたしも! 明日あさひちゃん家行っていい?』
『もちろん! 楽しみにしてるね!』
あさひちゃん、元気そうでよかった。
明日が楽しみ!
「お母さん、明日あさひちゃん家に行ってくるね」
「久しぶりね~」
「あ、そうだ! ねえ、わたし昔お母さんの《魔法空間》入ったことあるよね!? 病気で入院してたとき!」
「あら、ばれちゃった?」
「夢に出てきて思い出したの。くーちゃんがもてなしてくれた」
「ふふ、そうだったわ。あのときは本当、空もよく頑張ったわね」
まだ幼かったし、あんまり明確に覚えてるわけじゃないけど。
でもお母さんも大変だったよね。
家事をしながらお仕事もして、毎日のように家と病院を往復して。
「……あの赤い飲み物、また飲みたいな」
「赤い……ああ、ローズヒップ&ハイビスカスティーね。せっかくなら、明日あさひちゃん家に持っていったらどう?」
「それいい! あさひちゃんもきっと気に入ると思う」
「それじゃあ、明日の朝作って冷やしておくわね」
晩ごはんは、チーズ入りハンバーグカレー。
わたしが好きなものを詰め込んだこのメニューは、ちょっと特別な日のごちそう。
急いで帰ってきたお父さんも、嬉しそうに迎えてくれた。
修行はどうか、楽しくやれてるか、友達はできたかと、次々と質問が飛んでくる。
わたし、この家の子でよかったな……。
◆◆◆
翌日の昼過ぎ、わたしはお母さんが作ってくれたローズヒップ&ハイビスカスティーを持って、あさひちゃんの家へ向かった。
あさひちゃんは、仲良しグループの中でも特に仲良しな友達。
家が近いこともあって、一時期は週二くらいであさひちゃんの家に遊びに行ってたこともある。
もちろん、むこうも同じくらいの頻度でうちに来ていた。
「そらちゃん久しぶり!」
「久しぶりー! おじゃまします」
「あら空ちゃん、久しぶり。聞いたわよ、山奥にある全寮制の中学に通ってるんですって? 学校はどう? 大変じゃない?」
「あさひちゃんのお母さんこんにちは! えっと……電波が繋がらないのは困るけど、でも楽しくやってます!」
「そう、それならよかったわ。あとでケーキ持っていくわね」
「ありがとう! あ、そうだ、お母さんからこれ。ローズヒップ&ハイビスカスティー! シロップは入ってます、って」
「まあ綺麗な色! 私もいただいてもいい?」
「もちろんです! たくさんあるからぜひ」
「そらちゃん、2階行こーっ」
2階にあるあさひちゃんの部屋へ入ってしばらくすると、あさひちゃんのお母さんがケーキとローズヒップ&ハイビスカスティーを持ってきてくれた。
「そらちゃん、これ何? すごく綺麗な色!」
「ローズヒップ&ハイビスカスティーっていうんだって。甘酸っぱいイチゴみたいな味がするから飲んでみて。ケーキおいしそうー! いただきますっ」
「いただきます。 ――っおいしい! 本当にイチゴみたいな味がする!」
「でしょ? 私も久々に飲むんだけどね。昔入院してたときに、お母さんが作ってくれたの」
本当はくーちゃんだけど!
でもあさひちゃんは【魔法空間師】の家系じゃないから、《魔法空間》のことは内緒なの。
「あさひちゃんはみんなと同じ中学だよね。いいなー」
「…………うん。そう、なんだけど、でも実はあんまりうまくいってないんだ」
「えっ?」
「クラス離れちゃって、今のクラスの子になじめなくて。ひなちゃんたちは、それぞれ今のクラスの子との関係で忙しくて」
そう、だったんだ……。
まさかあさひちゃんも寂しい思いをしてたなんて。
「だから久々にそらちゃんに会えて本当に嬉しいの! そらちゃん、これからも友達でいてくれる……?」
「そんなの当たり前だよ! わたしたち、数か月会えないくらいで切れちゃう仲じゃないでしょ!」
「そっか、そうだよね。よかったあ。なんか元気出たよ。ありがと」
「もー。あさひちゃん変な心配しすぎ!」
わたしたちはその後も、授業が難しくてついていけないって愚痴ったり、動画サイトで面白動画を見たり、SNSでバズっている投稿で笑ったり、マンガを読んだりしながら終始何気ない会話で盛り上がった。
ふと気がつくと、外はもう薄暗くなっていた。
「もうこんな時間!? そろそろ帰らなきゃ!」
「うん、また遊ぼうね」
「もちろん! 夏休み中はこっちにいるから、いつでも」
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