ライトノベルへの期待と不安

名興文庫

『ライトノベル』とは何か?

https://naocoshi.com/column002-1/


 大変な反響です、私も興味深く拝読しました。

 寄稿文を発表したのち、公開された


『ライトノベル』の未来とは

https://naocoshi.com/column003-1/


 拝読して笑ってしまいました。誰かを嘲笑するわけではなく、文章の仕掛けが純粋に楽しかったのです。お気を悪くされたら、すみません。


 そんな私は、古典や一般文芸ばかり読んできたので『ライトノベル』がわかりません。そもそもジャンルを書きたいのではなく、物語を書きたいので執筆する際にジャンルを意識していません。

 数年の間、フォロワー様の作品を拝読して「これが『ライトノベル』なのか!」と衝撃を受けた、その程度の知識経験しかありません。

 

 ただライトノベルに触れてこなかった私だからこそ、ライトノベルに寄せる期待があります。


 すべてのライトノベルがそうだとは言いませんが、鉤括弧や三点リーダの自由な使い方、大胆に擬音を使用している点は、他に類を見ないと思います。


 前述の例ですが、複数人が同時に発声した場合

『志村後ろー!』

 このように書くのがルールです。

 しかしライトノベルでは

「「どうぞどうぞ」」

 こう書くと、何人が声を合わせているのか一目瞭然です。

 三点リーダについても偶数使用が正規ではありますが、読点と三点リーダ二重の中間の「間」が欲しいときがあります。


 後述の例は、恐縮ですが馬路まんじ先生の名前を挙げさせて頂きます。お察しください。


 そういうのは地の文で書くんだ、描写しろ。


 もちろんです、わかっています。

 しかし地の文が疾走感を損ねてしまう、ルールに縛られて身動きが取れない、ライトノベル用法が最的確、そうとしか表現しようがない、という場面があるはずです。


 台詞ばかりになるじゃないか。


 会話劇が面白い小説に、まだ出会えていないんですね、それは残念です。

 一般文芸作品ですが、最初から終盤まで独白という短編を読みました、味わい深い作品でした。

 強風に見舞われた祭という、わちゃわちゃした雰囲気を台詞の羅列で表現した短編もあります。驚かされましたが、そこに地の文が入ると状況が整理されてしまいます。雑然としたほうがいいんです。


 漫画・アニメの手法を、さらに日常的に触れるSNS用法も、文芸に取り込んでいます。これがライトノベルの画期的な点です。


 何分ライトノベルに明るくないので寄せられる期待はこの程度しかありませんが、ライトノベルがジャンルの垣根を越えて、文芸界を新しい世界へと導いてくれる日を待ち望んでいます。


 と、輝かしい話ばかりではありません。同時に懸念もしています。

 膨張して破裂してライトノベルが消える可能性だってあります。むしろ、こちらの可能性のほうが遥かに高いです。


 ライトノベルを執筆されている皆様は、コミカライズやアニメ化を意識していませんか?


 執筆する際に、を思い浮かべて文章に落とし込む。それはライトノベルに限った話ではなく、すべての文芸作品に当てはまることです。だから実在の土地を舞台にする際、現地を調査したほうがいいです。実際、執筆する上で役立ちました。


 しかし「イラストがつくから美少女を描くときは美少女とだけ書けばいい」というのは、文章の放棄ではありませんか?

 絵画や音楽や漫画や映像……数多ある表現手法から何故、小説を選択したのでしょうか?

 文章で、それも小説でなければ出来ない表現をしていますか?


 確かに、私も自分が書いた小説が漫画やアニメやドラマになることを夢想しています。

 それと同時に、表現手法が変われば違う作品になるなぁ、一所懸命こねくり回して書いた文章も漫画になれば1コマ、映像になれば一瞬だ! という取らぬ狸の寂しさも感じています。

※一コマ、一瞬の映像だから楽、とは思っていません。


 コミカライズやアニメ化を否定するつもりは、ありません。小説が広く読まれる要素として大事なことです。出版社にとっても、ビジネスとして強く望んでいることでしょう。

 しかし目の情報は強烈です。ビジュアルに寄せた文章では、ビジュアル化した際に敵いません。


 あなたの小説に、小説の面白さはありますか?

 ビジュアルに負けないくらい、あなたの小説は面白いですか?

 究極を言えば、ビジュアル化が不可能な文章を書けていますか?

 文章を選んだのだから、文章の面白さを物語に叩き込めよ。

 これは、自分自身への戒めです。


 漫画もアニメもドラマも面白いけど、原作には敵わないよ、と仰って頂けることを目標にして、私は物語を紡ぎます。

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