第59話 暗闇で明かされた新事実【4】
「今回の最初の目的はもちろんその子供でした。希少な治癒の魔力を受け継いだ子供。それと、とても価値のあるリッシュ領の牛毛。狙わずにはいられないでしょう? ですが、ここの警備隊も領主もその妻もとても優秀すぎて簡単には盗めませんからねえ」
まるで一つの物語を語るかのように朗々と喋りだしたリーダーの男。
だが、その口から出ているのは立派な犯罪の話だ。
「とても長い月日をかけて作戦を練りましたよ。それはもう気が遠くなるほど! これまでに何度無能な部下をちぎり燃やし捨てたか分かりませんし、どれくらい使い物にならなくなったかもわからない。
けど、そんな苦悩がようやく報われ、いざ! 作戦実行! というその時、あの冒険者が来てしまった」
とても心地よさそうに語っていたリーダーの男だったが、最後の言葉は氷よりも冷たいのでは? と思ってしまうほど低く冷たく、むしろその声を聴いたものを刺殺さんばかりの声音に周りがというか俺が一瞬凍り付いてしまうほどだった。
なんだ?
その冒険者を、心底憎くて殺したいという気持ちが一切隠されてない言葉は。
「……あの冒険者って」
正直言うと俺の身近に居る冒険者というと、あいつしか思い浮かばないし、今までリッシュ領で過ごしててあいつ以外の現役冒険者にはまともに会ったことないので絶対あいつだとは分かってはいるのだが、とりあえず今にも人を燃やしそうなオーラを溢れ出しているリーダーの男に聞いてみることにした。
ちょっと話を聞いてほしそうにしてるような気もするし……。
「そう! おにーさんの傍をなかなか離れてくれなかったあの金髪の冒険者! あれはダメです。あんなこの世界に今や五人しかいないS級冒険者なんて厄介以外の何者でもない。 ひとつの所に長く留まらない流浪で有名な冒険者だったので、すぐどこかへ行くかと思いきや、今度はあなたが現れて一向に消えてはくれなかった! 本当にもうどうしてくれようかと……」
ん?
……うん?
まあ、金髪冒険者という言葉を聞いた瞬間、あぁ、やっぱりゼンの事ですね、はいはい。
と思ったけど、何?
世界に五人しかいないS級冒険者?
ナニソレスゴイノ???
「……はは、あいつが、S級冒険者? いやいやいや! まっさかあ! あいつ確かに腕は立つっぽいけど、そんな凄い奴なわけが」
「え、おにーさん。聞いたところ彼が後見人なんでしょう? 何も聞いてないんですか?」
「…………」
「…………」
き…………聞いてねえ!!!!!!!
そりゃあ、今俺は現実逃避しましたとも!
したけれども! それは聞いてねえ!
俺はあいつが上級冒険者だとしか聞いてねえっつーの!!!!
え、なんだよ。
世界に五人しかいない?
S級冒険者?
なんだよ! そんなウルトラスーパーなレアリティ高めな役職名!!!!
前の世界のゲームとか、小説とかの価値観で考えてるけどリーダーの男の口振り的にも間違ってない価値観だろ! それ!
そんな凄い奴に保護されたの? 俺!
何? 異世界人の保護ってそんな凄い奴がするものなの?
身分高い奴とか力がある奴とは聞いたけどさ!
なんなの! あいつ!
いろいろはぐらかされたり、隠されたり、わざと言わない事あるなとは思ってたけど!
それは言ってもいいんじゃないのか!?
聞かない俺も悪い! でも!
何回目か忘れたけど!
俺!!! 聞いてねえ!!!!!
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