第36話 びっくりキラキラ市場【1】
「はーい! 皆用意できたね! 出発するよー」
「「うぇーい!」」
「うえーい!」
パルフェット様の掛け声に、元気に答える双子お兄ちゃんズとプティ君。
今から全員で市場へと向かうのだ。
…………うん、本当の本当に全員で向かう。
ドゥース様もセリューさんもゼンも。
屋敷の中が空になってしまうが、守護の魔法を屋敷と牧草地にしっかりかけて全員でお出かけだ。
そして、皆お出かけ用に服を改めたのだが。
ドゥース様とパルフェット様は市場に視察や商談などのお仕事目的で向かわれるらしくかっちりとした正装だ。
お二人は一緒に向かわれるが、市場に付いたら別行動となる。
そんなお二人の息子である子供達もいつものツナギや普段着ではない。
とは言っても彼らはドゥース様達に付き添うわけではなく、市場をいろいろと見て周ることがメインなので正装ではなく綺麗でおしゃれな一般服を、そして俺も綺麗めの一般服をパルフェット様からお借りして着替えている。
ゼンとセリューさんはあまりいつもと変わらず、冒険服と執事服だ。
市場では子供達といろいろと周るつもりだが、その途中で俺とイケメンは身分証を取得しに都心部へと向かう旅の際に.必要な物を買い揃えることになった。
俺も魔力操作がかなりできるようになり魔力制御装置も外れたし、そろそろここに滞在する理由がなくなってきてしまたので次の準備にかかるというわけだ。
確かに、俺が目覚めてからあと数日で二週間になるわけだし、ゼンが言っていた予定通り。
ここを離れるという実感が湧かないのだが、あと数日で俺はここを離れることになる。
ゼンは初めに…………。
――――今後の人生どう歩んでいきたいか考えるといい。
そう言ってくれたが、俺はまだ今後の人生どうしたいかなんて思いついていなかった。
ある程度の身分や生活は保障されるという話だが、どこまでの保証かはそういえば詳しく聞いていなかった事に今さら気づく。
一番大事な聞くべきところであるはずなのに、ここでの穏やかな生活のおかげですっかり頭も心の気持ちも緩んでしまっているようだ。
――――――今後の生活、考えないとなあ。
「リーン!」
「行くぞー!」
「あ、はーい」
とりあえずは市場だ!
「ぅっわ! 高っ! コワ!」
「リンタロウ、あまり動くとブレて落ちてしまうよ?」
「脅すな!」
なんとなんと! とうとう俺は初の飛竜に乗っているー!!
と言っても、ゼンの相棒である飛竜の背に同乗させてもらっている形なんだけどな。
だって俺、飛竜に乗るの初めてで一人で騎乗なんてもちろんできないから。
俺の後ろで飛竜の手綱を握り、操縦しているゼンがわざわざ脅してくるのだが、結構シャレにならん。
どんどん高くなる景色に恐怖も湧くが、飛竜に乗れているというわくわくとした高揚感もまた同時に湧いてくるので、今の俺の顔はごちゃ混ぜで凄いことになっているだろう。
「もう少ししたら風も高度も安定するから、大人しく捕まっていてくれ。安定したらゆっくり周りを見渡せる」
『ここの領地はとても景色が良いから眺めると良い』とゼンが言うので素直に俺は言うことを聞くことにした。
ちなみに飛竜は、大人二人が余裕で乗れるくらい力持ち。
実際俺もゼンと二人乗りで、最初こそ揺れたが今はだいぶ安定してきている。
特にゼンの飛竜はリッシュ家に複数いる飛竜よりも、大きくてガタイも良いので安心して乗っている。
二人乗り以上は、小さな子供があと一人くらいであったら三人乗りできるらしく。リッシュ家で一番大きい飛竜にドゥース様とパルフェット様、そしてプティ君が同乗しており。あとはセリューさんとベルトラン君が、それぞれ双子お兄ちゃんズを前に乗せて合計四匹の飛竜でのお出かけだ。
「リンタロウ、そろそろ周りを見てごらん」
「ぁ…………、わぁー……すっごい!」
絶景かな絶景かな!!
ゼンの言うとおり目の前の景色は素晴らしかった。
昼間で明るい日差しに照らされているリッシュ領は、青々とした木々や牧草地などがつやつやと輝いて広がり、所々に花も見える。
そして進むにつれて見える建物も日本では見ない建物で、遠くから見えるサイズ感のおかげもあって可愛らしい。
上からだと小さく見える牛達が、前の世界とは違う見た目のせいかその白い姿が幻想的にも見える。
たまに視界に入る鷲に似た鶏がちょっと違和感を演出しているが、ご愛敬だろう。
「やっぱり良い所だな……ここ」
俺の独り言に後ろに居たゼンは答えてはくれなかったが、伝わってくる雰囲気が同意してくれているので良しとしよう。
目的地の市場だが、その時々によって開催する場所が変わるらしく、今回はリッシュ家からちょっと離れた場所の領民の牧草地だという。
だが、飛竜だとそこまで時間がかからないらしく、約十五分ほどで目的地の市場へと着いた。
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