第35話 免許皆伝?そして楽しいイベントへ【3】
「リンタロウ、俺はドゥース様と話をしてくる。
少し皆と休憩をしていてくれ、なるべく早く戻ってくる」
「ん、わかった」
「あと、この預かってたブレスレットはこのままパルフェット様に俺が返しておくから」
そう言って懐に入れていたブレスレットを見せてくるゼン。
「あぁ! そうか、ありがとう。あとで俺からもパルフェット様に貸していただいていたお礼を言う」
「わかった。パルフェット様にもそうお伝えしておく」
ゼンはそう言うと、子供達にも今から休憩と伝えてドゥース様と話をしに向かった。
子供達と俺はその後姿をいってらっしゃいと手を振りながら見送る。
けど………………。
「そんなに事件起こってるんだ……何を盗まれてるの?」
「それが……ちょうどリンタロウ様がいらっしゃる約半年前くらいから徐々に増えた形なのですが、最初は領民が育てている鶏がニ、三匹いなくなって…………」
最初の事件は被害が少なく、鶏小屋の入り口の鍵が開いていてただの鍵の閉め忘れによる脱走と思われたが。鶏小屋の主人はかなりの几帳面な人物であった為、その可能性は低いと考えられ窃盗ではないか? と一度話が広がりすぐさま領主であるドゥース様の耳に入り警備の強化を行なったそうだ。
この素早い対策のおかげで、領民よりそれ以上の窃盗被害の話は出てこなかったらしく、窃盗犯は捕まらなかったが念のための警備強化継続という形で一度落ち着いたとの事。
しかし、それから一月後にまた別の所から家畜が数匹盗まれたと報告があり、もちろん警備をしているのだが、その被害は徐々に派手になっていき、小さな家畜がメインに盗まれていたのがどんどん大きめの家畜になっていき、一度に盗まれる数も増え、今では牛まで盗まれているという。
って、牛って……あの毛刈りしたばかりの牛!?
「ここの牛も盗まれたの!?」
「いえ、我が家ではなく他の領民が飼育している牛なので、我が家はまだ被害を受けていないのですが、つい一週間前にも領民の牛が二頭盗まれたと報告がありました……。
うちもいつ盗まれるか分かりません」
「そういえば、ゼンはドゥース様とここ最近よく話しているもんな…………」
「手口がどんどん巧妙になっていっているらしく……単独犯ではないとの事で最近は犯人の捜査に力を入れているとか」
それって……めちゃくちゃ大変な事件なんじゃ。
ゼンは俺が起きてからは訓練に時間をたくさん使っている。
そんな大変な事件が起きているのに俺がゼンの時間を貰っちゃってていいのか?
そんな俺の考えが思いっきり顔に出ているせいかベルトラン君がフォローの言葉を入れてくれた。
「ゼン様は元々リンタロウ様のためにこちらに滞在されています。俺達はリンタロウ様をぜひ優先して頂きたいと思っていますのでお気になさらないでください」
むしろ、リンタロウ様のゼン様の時間を俺達が貰っちゃって申し訳ないくらいです。
そう笑顔で言ってくれるベルトラン君。
やっぱりとても気遣いができる優しい子だな。と、ベルトラン君の温かい気持ちに俺も温かくなる。
だが。
ゼンが俺のっていう言葉はちょっと気になる。
俺、あんな変態所持した覚えはないぞ。
そんな事思っていたら。
「皆ー! 上に居るんでしょう?」
パルフェット様のお呼び出しがかかった。
皆仲良く屋敷の中に戻り、パルフェット様のもとへと集まる。
「はーい、みんな集まったね。今から休憩って聞いたと思うけど、休憩はなし!」
「「えぇー!?」」
おぉ、突如として休憩なしのお言葉。
双子お兄ちゃんズは文句を垂れたが、その他は俺も含めて首を傾げる。
「どうしたのですか?母上、また突然ですね」
「まあね! これから皆を市場に連れて行きまーす! あ、文句を言ったシャルルとサロモンはお留守番でーす」
「「えぇぇええええええ!! やだ! 母上の鬼!」」
「わぁい! いちばー!」
「母上に素直に謝れば連れて行って下さる。謝れ」
「「ごめんなさい! 連れてってください!」」
パルフェット様は素直に謝った双子お兄ちゃんズを許し、市場に連れていくと言った。
ていうか、市場なんてあるんだ!
と純粋に興味を持った俺に、パルフェット様が説明してくれた。
どうやら、パルフェット様の言う市場というのは、半年に一度、二週間ほどの長期に及んで領民の牧草地の一角を借りて大きく開かれているらしく。その市場でこの領地の特産品などをいろんな国の商人たちが買い付けなどをしたり、逆に商人から領民がこの領地には無い、いろんな品を買ったりする結構大規模なものらしい。
その市場では美味しい物もたくさん出るし、他国の珍しい品も流れてくるらしいので子供達は市場に行けることを大喜びしたみたいだ。
まあ、そんな俺も話を聞いてかなり楽しみになった。
「さあ! 皆、支度をして! お昼前には飛竜でしゅっぱーつ!」
「「「「おぉー!」」」」
「リンタロウ様……だいぶ、我が家に馴染みましたね」
「あ、つい、ノリで……」
パルフェット様の掛け声に応じる双子お兄ちゃんズとプティ君、そして俺。
ベルトラン君の言うとおり、だいぶ、馴染んだな。
俺…………って、ちょっと待て。
飛竜に乗れるのー!?
また違う楽しみに気づいた。
まじで、楽しみじゃん!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます