第32話 本篇外小話 上手な子供のあやし方

 

※ほとんど会話文のみとなります。








 それはある日の出来事であった――――――





「ぅわぁぁあああん!!!!」

「おー、よしよし。プティ君泣かないでー」

「ひっぅ、ぅっく……あぁぁああああああああん!!!!」

「うわぁああ! さらにヒートアップ! ど、どうしたら!? こういう時俺って兄弟いないし!? 友達もいないからこういう経験がないしー!?」

「すみません! リンタロウ様! プティはこうなると泣き止まなくて……!」

「えっ!? じゃあどーすんの!?」


「もう、しょうがないなあ」



 偉大なる母パルフェット様の降臨だ。



「ふぇぇええええええん!!!!」

「パ、パルフェット様! 早く! プティ君を!」

「はいはい。プティがこうなったらもうあれをやるしかないでしょ」



 パチィン!



「「さーんじょう!!!」」

「ぇ、指パッチンで双子召喚?」

「は、母上……リンタロウ様の前であれをやるというのですか?」

「当たり前でしょ! こうなったプティをどうやって泣き止ませるつもり?」

「ぃや、そうは言いましても……リンタロウ様も驚かれるかと…………」

「(え、なになに。何すんの?)」

「それじゃあいつまでたっても泣き止まないでしょ! つべこべ言わずにさっさとやる!」

「っう……………………わかりました……」



 うわぁ、ベルトラン君めちゃくちゃテンション下がって、凄く恥ずかしそうに顔を赤くしてる。

 まじで何すんの?


 俺はちょっと何が起こるのかと興味半分、不安半分で腕の中にいるプティ君をベルトラン君に渡した。

 泣き叫ぶプティ君を抱えたベルトラン君と双子お兄ちゃんズは俺とパルフェット様から距離をとる。



「ひっく、うわぁあああああああん!!!」

「はぁ…………やるぞ、お前達」

「「おう!!」」



「はぁ……すぅー…………せぇーの!!」

「「はい!!」」


「プッティ!」


「あ、そーれ!」


「プッティ!」


「あ、よいしょ!」


「プッティ!」


「あ、ほいさ!」


「プッティ!」


「あらよっと!」



 ベルトラン君がプッティと叫びながらプティ君を高い高いしてる……。

 そして、合いの手を入れながら一回一回、キラン! ペカッ! プリン! と変な顔やポーズを決めてベルトラン君の周りを盆踊りの要領で踊りまわる双子お兄ちゃんズ。



「え、本当にナニコレ」

「可愛いでしょ? 私が仕込んだんだ」

「あんた子供に何させてんですか!?」

「いやあ、私の小さい頃にされていたあやし方なんだけどね? 上の子四人はあまり泣かないしぐずらないしで手間がかからなくてやらなかったんだけど、プティは私に似てぐずると手に負えなくて。プティはよく私に似てるでしょう? 試しにやってみたら泣き止んだんだよ」

「こんなやり方で泣き止むわけが」

「でも、ほら」



 パルフェット様の指の先を見てみると。



「きゃっ! ぁはは! もっともっとー」


「プッティ!」


「あらよいっしょ!」



「うそぉおおおおお!?」

「いやあ、念入りに仕込んだかいがあるってものだね。ベルトランは恥ずかしがるから主に仕込んだのは双子だけど」



 俺はこの家の不思議をまた一つ見てしまったと、踊り狂うキレッキレの双子と羞恥にまみれてるベルトラン君を眺めて思うのであった。






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