第19話 魔力解放【1】







「リン大丈夫か」

「大丈夫かー?」

「リンにいちゃ、いたいいたい? プティが治す」

「それより母上に治してもらいますか」

「ぷっ……くくく。 くぅ…………ふぅ、ぎっくり腰ではないから治癒では治らないんじゃないか?」



 心配の台詞は言ってても双子は俺を突いて遊んでいるので絶対心配はしてないだろう。

 プティ君は俺に手を当ててたぶん治療しようとしてくれてるんだと思う。

 手が触れている場所がじんわりと温かくなっている。正直治ってる実感はないが……。

 プティ君では無理だと分かりきっているっぽいベルトラン君が母上パルフェット様を召喚しようとしているが丁寧に断っておいた。

 何故ならこのクッソ笑いを堪えようとして堪えきれてない、イケメンの言葉に同意だからだ。


 本当に!お前覚……(以下略)









「では、ちょっと話が脱線してしまったが元に戻して、次はリンタロウの魔力がどんなものか確認しようか」

「「わーい! 見る見るー」」

「みるぅ!」

「どんな魔力なんですかねえ。楽しみです!」



 俺、腰抜かしたままですけど、俺のこの状況はスルーなのね。

 分かったよ……。


 ていうか、俺、魔力の使い方分かんないの。

 どうすんの?



「俺、皆みたいに魔力出すなんて使い方分かんないから出来ないけど。……そもそも皆って、いつからそんなに魔力が使えるの?」

「「生まれつき」」



 即答した双子は、俺の事またこいつおかしなこと聞いてるよといった顔でこちらを見てくる。

 お兄さん泣いちゃうぞ。



「ベルにいちゃ、プティも? 生まれつき?」

「プティもそうだな。俺達というかこの世界で魔力の出し方は基本あまり教わりませんね。母親のお腹の中にいる時にその母親の魔力の流れとかを感じ取りながら成長して生まれるので、大体の子供は親の影響で生まれつき無意識に魔力を出したりできます」

「たまーに、腹の中で魔力を感じ取れないで、リンタロウみたいに生まれてから魔力使えないどんくさいやつがいるけどな!」

「超どんくさいやつ!」


「……はぁー、ふん!」

「「っほ!!」」



 ひょいっと突然ベルトラン君が双子お兄ちゃんズに鉄拳制裁を振り下ろすが、慣れたことだからか双子お兄ちゃんズは見事に鉄拳を受け止めているではないか。



「「ぬははははは! いつまでもやられる俺達と思うな!」」

「お前らは本当に何処で要らぬ言葉を覚えてくるんだ! 領主の息子として言葉に気をつけろと!」



『あとリンタロウ様に謝れ!』と言うベルトラン君と『『何故だ! ホントのことだ! だから俺達がいろいろ教えてやるんだ!』』と言う双子お兄ちゃんズはギリギリと腕をお互い押し合っている。


 うん。俺ってどんくさいやつと思われていたのね。

 これでも俺って割と何でもできるほうなんだぞ。


 ベルトラン君、そいつらやっちゃって。


 攻防の末、双子は新しく頭にたんこぶをつけている。



「ほら、教えて差し上げるのだろう」

「どんくさ……じゃなくて、そういう魔力を使えない奴は親とか教会の神父様とか」

「大人に魔力の使い方を一度教えてもらうんだ!」

「あと謝りなさい」

「「ごめんなさい」」



 ギロリと睨みを利かせているベルトラン君の視線から、逃れるように視線をあちこちにずらしながらそう説明してくれる双子お兄ちゃんズ。

 根は純粋でいい子達なので素直に謝ったし、許してやろう。


 俺もたいがい子供に甘いな。



「ということで、後見人でもあり、今回の先生でもある俺が魔力の使い方を教える」

「おぉ、なるほど?」

「……腰の抜けたリンタロウ君は動けないだろうからこのままやりましょうねー」

「言い方ムカツクんだよ! さっさと教えろ!」



 まったく!こいつ俺を弄って楽しんでやがる!

 顔がいいからって許されると思うなよ!



「はいはい。噛みつかない噛みつかない」

「本当に噛みついてやろうか。さっさと始めろ」

「かしこまりました。


 …………じゃあ、両手を貸して。


 今から俺の魔力でリンタロウの魔力の源に触れる。そうして、リンタロウは自分の魔力がどこにあるのか、どういう形をしているのかを感じ取るんだ。感じ取れたら俺がその魔力の解放を促すからそのまま身を任せて魔力を身体の外に出す。そうして身体から放出された魔力が周りに流れて変化する」

「ほうほう」



 イケメンは俺の傍に座り両手を差し出してきたので、俺は素直に差し出されたイケメンの両手の上に自分の両手を重ねて置いた。



「俺達も魔力解放をするところを見るのは初めてなので勉強になります」

「リンは何がでるかな」

「何が出るかな」

「何が出るー?」

「皆はいい子に見学してるんだぞ」

「「「「はーい!」」」」



 子供たちはわくわくした表情で俺とイケメンの周りに座り込んだ。


 イケメンもそうだが……んー、皆距離近くない?

 これ、魔力が出てなんか変化した時大丈夫か?



「じゃあ、いくぞ」

「ぉ、おう……」



 ちょっと緊張してドキドキするが、イケメンはいつもの優しい瞳でこちらを見てくるので緊張した気持ちが違う意味でドキっとした。

 …………気がするだけだからな。









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