第18話 開講!驚愕の《魔法のお勉強会》【2】
「お前らなぁ! 魔力操作までしてどうする! 時と場所を考えて節度と限度を覚えろってあれほど言ってるだろう! しかも誰があれを元に戻すと思ってる! 爆発させるな!」
そう言ってベルトラン君が左手をひっくり返った土に向けると、さっきまでひっくり返っていた土がズズズズ……と元の程よい固さの地面へと戻っていくではないか。
地面の形は戻っていくけど地面に生えていた草は戻っておらず所々草がはげてるから、その場所がひっくり返った場所なんだと分かるけど。
「いやあ、三人とも素晴らしい魔力放出と魔力操作だな。お父上からの遺伝もあるだろうが元の魔力量がそこそこないと、子供でこの規模の土の操作は難しいだろう」
「え…………これがこの三人の魔力の性質特化ってこと?」
イケメンが三人の所業に関心しているのを横目に、俺はひっくり返ったが元通りの形になった地面へ行って、実際に足で踏みしめてみたりと確認してみるたのだが。
その地面はさっきひっくり返ったとは思えない、他の地面と踏んだ感触の変わらない地面だった。
草がはげてるけど。
「俺たちの性質特化は父上からの遺伝で土を操作したりするのが得意なんです。本来魔力をただ放出して流すくらいだと土がちょっと盛り上がるとか軽く動く程度なのですが、今のはこの馬鹿二人が魔力操作で地面をひっくり返したので爆発しました」
「「ごめんなさい」」
涙を浮かべながら謝る双子お兄ちゃんズの頭を鷲掴みしたままそう言うベルトラン君。
ベルトラン君。
俺ビックリして腰抜かしそうになったけど、ちょっと感動も大きく混じってるのでそんなに怒らないであげて。
双子お兄ちゃんズのベルトラン君に掴まれてる頭が痛そう。
俺はベルトラン君を宥めようとしたところ、俺の胡坐の上に居たり、俺の行く先について来たり傍から離れなかったプティ君が草のはげた地面に突然両手をついて「んぅ~…………」と唸り始めた。
どうしたの!?
驚いて具合でも悪くなってしまったのかとちょっと心配になりプティ君を抱き上げようとしたその時。
「んぅ~…………やっ!!」
ぽん。
「え……草が生えた」
「プティの性質特化は、母上の遺伝で再生と治癒です。まだちょっとうまく魔力を使えないので草がちょっと生えるとか、小さい擦り傷が治る程度ですが」
「母上は綺麗に草を戻すぞ!」
「傷も綺麗に治す!」
「む~……もっと生やすつもりだったのに」
マジで?
草生やしたプティ君にも十分ビックリだけど、パルフェット様そんなことできんの。
俺は不服そうな顔をしているプティ君の横に座り、プティ君が生やした草を触ってみた。
本当に生えてる。
なまものだ…………。
もう驚きで、開いた口が塞がらない俺は変な顔をしているのだろう。
双子お兄ちゃんズが俺の顔を変だと言ってるから間違いない。
もちろんそんなこと言う双子お兄ちゃんズはベルトラン君に叱られているが。
それを面白そうに見て笑いこらえてるイケメン。
お前マジ覚え……(以下略)
だが、俺の驚きはこれで終わらなかった――――
「こらー! シャルルにサロモン! またやったんだね! あれほどやめなさいって言っただろう!」
爆音を聞いたパルフェット様が屋敷の外に出てきていた。
玄関先でちょっとぷりぷり怒っている姿もまた可愛かったのだが、『しょうがないなー』と言いながらパルフェット様は自分の左手を口元に近づける様がとても美しかった。
瞬く間にパルフェット様の手の上にサラサラとした光の粒子が集まりだし、とても綺麗な光景で思わず見惚れたのだが、パルフェット様が最後にその集まった粒子にふぅ、と息を吹きかけると粒子は空気を舞い草がはげてしまっている地面に降り注いだ。
降り注いだ光の粒子が地面に入り込むと、はげてしまっていた草が一瞬で綺麗な牧草に生え整う。
「流石はパルフェット様。お見事です」
パチパチとパルフェット様を称賛し拍手を送るイケメン。
「おや、どうもありがとう。いいかい、二人とも! 次またむやみにやったらおやつ抜きだからね!」
「「はーい……」」
イケメンに褒められたことに素直にお礼を言い双子お兄ちゃんズに釘を刺したことで、用が済んだパルフェット様はさっさと屋敷に戻って行かれた。
俺はというと元通りに牧草の生えた地面をぺたぺたと触り、生き生きとしている草の感触に驚愕を通り越してしまっていた。
「…………これって、この世界では普通なの?」
「他にもこういう治癒系や再生系の魔力を持つ者はいるが、パルフェット様はその中でトップクラス。安心しろ、普通じゃない。」
肝っ玉母さんパルフェット様は可愛いだけでなく魔力も凄まじかった…………。
あぁ、そうそう。
腰抜かしそうとか言ってましたが、もちろん最後の驚きで腰が抜けました。はい。
こっち来てからの俺、前の世界の人に見られたらやばいだろうな…………。
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