第12話 可愛い人は肝っ玉母さん【2】
「さあ! ここが我が家自慢の大風呂だよ」
「おぉ……広い。大きい」
連れてこられた風呂場は大きく広かった。
シャワーと蛇口のセットが二つあって、湯船も五、六人は余裕で入れる大きさだ。
というより、日本でいう温泉施設を縮小したイメージそのままだ。
ちょっと設備が前の世界と変わりないことに驚いてる。
「うちは風呂好きが多くてね、お風呂にはこだわっているんだ」
「いいですね。俺も風呂好きです」
「いいよね、お風呂! じゃあ、入ろうか」
「あ、はい。では、すみませんがお風呂いただきます」
「うん! じゃあ、服脱いでねー、中で待ってるから」
「はい…………って、え?」
「え?」
え、今中で待ってるって言った?
「中で待ってるって……俺、一人で入るんですよね?」
「え? でもリン君、まだゼン君に魔力の使い方教えてもらってないでしょ?」
「魔力の使い方? は教えてもらってないというか。俺って、魔力持ってるんですか?」
「あれ? 私たちがカリファデュラ神の子供であるということは聞いた?」
「あ、それは聞きました」
「基本的にカリファデュラ神の子である私たちは皆魔力を持っているんだよ。もちろん、そのカリファデュラ神の子であるリン君も持っているはずだよ?」
へえ! 俺って魔力を持っているのか!
ということは、火を出したり何か浮かせたり色々できるのかな。
生まれてこの方、魔力とか感じたことはないと思うんだが、生まれつき魔力ってやつを持ってたから気づかなかったのか?
思わず手をわきわきと握ったり開いたり身体を見渡したりしてみるけど、いつもの俺だ。
「で、魔力の使い方教えてもらってないんでしょ? ――――お風呂、魔力使わないと水、でないよ?」
「え゛っ!」
なんですと!!!!
「湯船のお湯は私が入れたからきちんと温かいし溜まっているけど、シャワーとか使おうと思っても魔力使えないからお湯どころか水すらでないから不便でしょう? だから、お風呂入るの手伝うよ」
とても純粋な笑顔でそういうパルフェット様。
確かにシャワーが使えないのは困るけど……湯船のお湯を使えばどうにかなるのでは?
パルフェット様には大変お世話になっているみたいだし、これ以上お世話になるのも申し訳ない。
それに何といっても、いい歳した俺が裸でこんなに可愛い人にお風呂のお世話になるのは恥ずかしい…………!
「あの、パルフェット様。俺、湯船のお湯使って一人で入ります。恥ずかしいので…………」
「えぇー? でもプティはやる気満々だよ?」
『ほら』と指さすその先には、可愛い可愛い天使ちゃんのプティ君が、すでに泡立てて右手に持ったスポンジを『ん!』と突き出してパルフェット様の言うとおりやる気満々で立っていた。
なんと可愛いことか!
天使ちゃんが俺が来るのを待っているじゃないか!
「断れるの? あれ」
「ぅぐ……そ、それは」
「無理だよね! じゃあ、諦めて、服脱ごうか!」
「ぇ゛っ! いや! あ、あの……」
ちょっ!ちょっとまってぇぇええええええええ!
そのふわふわと可愛らしい見た目と反してパルフェット様は力強いというか、肝っ玉があるというか、流石は子持ちというか…………。
はい、逆らえませんでした……。
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