第5話 超絶イケメン 【2】
負けた。
生まれてこの方、自分は美形に入る部類であると思っていたがそれは間違いで、これからは考えを改めようと思うくらい目の前にいる男は超絶イケメンであった。
肩にかかるかかからないかくらいの髪を、ハーフアップにしているその男の結ばれていない前髪から滴る水が、まるでその男を飾る宝石に見えるくらいに様になっている。
まさに水も滴るいい男とはこういう男のことをいうのだ。
色気が半端じゃない。
「っ*ΑΓΔΦ・とケΟβ?」
「へっ?」
「っ*ΑΓΔΦ・とケΟβ? ΣァルΔγ」
「…………ぇ、何?」
そんな超絶イケメンの口からこぼれた声音は、それはそれは男の俺でも一度聞けば惚れてしまうようなとろりとしたイケメンボイスであったが。その男が発したおそらく言語と思われるものに理解が追い付かず惚れそうと思った俺の考えは一瞬で消え去った。
一応、俺は二か国語以上話せるマルチリンガルなのだがこの男が話した言語は全くもって理解できなかった。
え、むしろどうやってんのその発音。
男はへ?と聞き返した俺に同じ言語らしきものと、プラスアルファを加えて再び声をかけてきたが理解できん。
俺の目がよっぽど訝しがっていたのであろう。
男は困ったように笑いながら、水にぬれたせいで顔に張り付いていた前髪を少し鬱陶し気にはらい、空を見て少し考えこんだ末に俺の頭にその大きな手のひらをのせた。
「*ΘΠ」
「????」
次に発した言葉は一番短い。
言葉は理解できないが、その声音と表情、雰囲気からなんか謝られてる?? と、俺は漠然と思い男の様子を窺う。
すると男は俺の頭の上にのせていた手に、というよりかは指にぐっと力を入れて頭を掴むように力を加えた。
思わず逃げようかと思ったが力強く掴まれており軽くかわそうと身を引いたくらいではびくともせず。優し気な表情から真剣な顔に変化した男が次に発した言葉はもう言葉として理解できず、音としか理解ができななかった。
「――――――!!」
「……っづぁ!!!!!!」
男が発した音を聞いた一、二秒後。
頭に激痛が走った。
むしろ、頭といわず全身を突き抜けるような痛みだ。
何が何だか解らず、視界がぼやけ身体が傾く。
意識が飛ぶ直前、霞む視界の中見えた男はまた優しい表情に戻っているように見えた。
そして倒れこむ俺を優しく支えてくれているようで、そこまでは意識を保てたので状況を把握できたが、限界が来た俺の目の前は真っ暗になる。
視界は暗くなったが意識が完全に飛びきる前の俺の耳に聞こえたのは、男のとろりとした優しい声で。
「おかえり……」
そう日本語が聞こえた気がした。
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