幕間1 捜索は昼食の後で
「おい!そっちはいたか!」
「いない!くそっ、どこいきやがった!」
炎天下にも関わらず黒いスーツに身を包んだ男女がしきりに目的の少年を探したが途中で見失ってしまった。しきりに市内に散らばっている仲間の報告を聞くがどれも芳しくない。
「姐さん、申し訳ありません。どうやら完全に見失ってしまったようです」
仲間からの連絡を受けた大柄の男はごつごつとした手でスマホを操作し通話を切った後申し訳なさそうに目の前にいる黒いスーツ姿の女性に大きく頭を下げた。
「そう、仕方ないわね。一旦皆をここに集めてくれる?」
「はっ!かしこまりました」
黒いコートに身を包み腰まで伸びた艶やかな黒髪を風に靡かせながら彼女は嘆息した。
「まいったわね……はやく保護しないとやつらが先に彼を捕まえてしまうわ」
「それだけは何としても阻止しなければいけませんね。やはりあいつも連れてきた方が良かったのでは?」
「それは駄目。あの子はまだ私の言う事を聞かないのよ。もう少し調教が必要だわ」
「それもそうですね……この後はどうします?」
「……丁度12時を過ぎた頃ね。皆でどこかで美味しい蕎麦を食べましょう」
「姐さん、幾ら何でも悠長に構えすぎでは―――」
「無駄に体力を消耗してやつらに負けたらそれこそ大きな損失だわ。だからいざという時の為に腹ごしらえをして万全の態勢を整えるわよ」
「はぁ……姐さんがそう言うなら……」
「あなたは真面目すぎるのよ。もっと肩の力を抜きなさい」
手元でスマホを操作した彼女は飲食店の口コミサイトを開き暫く調べていたがやがてお目当ての店を見つけたのか目を輝かせながら男に言った。
「ここのざるそば、かなり美味しそうよ。ここで決まりね」
「姐さんが決めた店ならどこへでもお供します」
「もう、だからもっとリラックスしなきゃだめよ」
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