第11話 みんなのパシファティ(後)
「くるる、測って」
「無駄な気がするけれど、まぁいいわ」
くるるの表示は、『鳩を操りし者』だった。だけど、注目して欲しい所はそこじゃない。操れる数が168羽で、現在32羽操っているらしい。
鳩は、そもそも希少動物で操れる人物も限られてくる。どうしたら、そこまでの鳩と出会えるのかが分からない。
「え?」
「操れる数が増えているわね。すごい」
「先輩、さすがですよ!先輩の右に出る鳩使いは、もう居ないんじゃないですか?」
「さすがに言い過ぎよ、ひより」
「先輩が、謙遜しながら、私の名前を呼ぶのはいいですね!最高の朝ですよ」
「ひより、調子に乗らない。後、朝じゃない。もうお昼よ」
「2人は、知っていたの?」
「ええ。そりゃあ、もちろん」
「先輩の事は、先輩から教えてもらった事なら分かりますよ」
どうやら、2人は前に教会で測ったらしい。という訳で、2人は免除にする事にした。ちなみに、ひよりは、『動物を操りし者』だった。
「残すは、
「おう」
零が、水晶に手をかざすと、現れたパシファティは、『他人の死期を決められし者』だった。それと、もうひとつ、『死者を操りし者』だった。2つ以上のパシファティが出たのは、私を除いて初めてだ。
物騒なパシファティだったので、使い方に十分気をつけるように言った。そしたら、零が泣き出した。
「ちょちょちょ、どうしたの?!」
「すまんっ……。師匠をっ……思いっ……出して」
「師匠?」
「ああ。師匠が使っていた能力だったんだ」
「ああ、なるほどそれで……」
「正直、師匠を探すために今まで資金を貯めて来たんだ。でも、師匠の能力がここにあるって事は……。師匠は……」
パシファティは、基本的に思いが原動力だが、他人を思い続けても、他人のパシファティは盗めない。仮に、他人のパシファティが盗める時、それは『その人が亡くなった時』である。
零は、ずっと『師匠』のことを思い続けたのだろう。しかし、最悪の形で受け継いでしまった、という訳だ。つまり、零の『師匠』は、もうこの世にいない。
さらに酷なのは、パシファティは、教会や水晶が置かれている場所で、パシファティを見ないと、そのパシファティは使う事ができない。
教会などの方がパシファティが出るのが正確だけれども、場合によっては、水晶を置いてあるだけの所に行く人もいるだろう。教会は、お金が1回6,000,000リィンかかる。パン1個が50リィン、家を買うのが、大体25,000リィンなのでかなり高い。だから、裕福な家庭しか払う事ができない。
彼は、おそらく、水晶が置いてある所で何とかしようとしていたのだと思う。お金を貯めていたって言っていたので。しかし、お金が浮いた代わりに、『師匠』の生存がないものになってしまった。
私は、零にこういった。
「力の強い人物だったら、幽霊になっているよ。何とかしよう」
「そうだな。幽霊になるのを、期待して待とう」
こうして、パシファティを見る事は、終わった。だが、この翌日に、あんな事になるなんて、誰が予想をしたのだろうか。
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