第8話 情報屋が来た


 今日も、いい天気だ。というわけで、魔鳥箱が鳴いているので、届け物を取りに行く。玄関に着いたところで、ドアを開ける。



「おはよう」


「……」



 私は、何も言わずに扉を閉めた。だって、この世界の住人ではない男の人がいたからだ。まだ、リーヴェルシュタールには、女性しかいない。気のせいかもしれないため、もう一度確認のため開けてみた。



「いきなり閉じないでくれ」


「……」



 私は、ドアを閉じようとしたけど、足が入って閉められなくなった。



「なぁ、1度目なら許すけど、さすがに2度目は無理がある」


「何か知らない人がいる時は対応しないでくださいって、言われた記憶があるので」


「あー、よくできたお嬢さんだ事!頼むから、話だけ聞いてくれよ」


「他を当たってください。こっちだって色々あるので」


「じゃあ、情報はいらないって事か?」


「え?情報?」


「そうだ。俺は、情報屋のれいだ。ここに情報屋がないからって事で派遣されて来たんだが」


「あー、なるほど。ここで商売をさせてくれないかって事ね。あったらありがたいけれど、リーヴェルシュタールには、換金できるものはないし、お金もないわよ」


「ええ?どこかで使っていて、情報屋にお金を渡したくないのか?」


「お金使えないから!そもそもないんだって!私も情報屋の力が必要だから、お金があったら払うわよ!」


「ルーナ、どうしたの?」



 ここで、誰かに呼び止められる。ドアの向こうを覗いたら、怜奈れいながいた。



「情報屋が欲しいけれど、お金がないから無理って話をしているの」


「ふぅん。その情報屋って、あなた?」


「ああ。俺は零。よろしくな」


「うーん、お金が必要なのね。それなら、私が何とかできそう」


「えっ?」


「そういえば、怜奈はゴールドビーだったね。どんな種族かはピンと来ていないけれど」


「私は、お金を作り出すことができるわよ。まいと違って、お金だけだけれど」


「舞は、何ができるの?」


「森に生成するであろう資材なら、簡単に再現できるわよ。木材とか、どんぐりとか。で、どのぐらい必要なの?」


「ああ。ひとつの情報につき500リィンって所かな。それ以上にもそれ以下にもならない」


「「安っ!」」


「ああ。うちは安く、正しく、素早くをモットーにしているからな。とりあえず、契約でいいか?」


「いいよ。どうせ、情報屋は探そうとしていたし」


「ありがとな」


「これを機に、他の物も買った方がいいんじゃない?お金の心配はしなくていいしさ」


「でも、私も働く事にするよ。怜奈だけに無理はさせられないし」


「へぇ。ならお気に入りの働き所が見つかるように、いい情報持って来よう」


「お願いするわ」



 こうして、リーヴェルシュタールに、情報屋がやって来た。零は、ここには住めないから、お金が貯まるまで待つそうだ。だから、まだ住人ではない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る