第9話 抗議の準備

翌日、朝早く起きた有島は、スラムの広場に大勢の人が集まっていることに気づいた。

「……なんだ?」

どうやら抗議しようとしているらしく、看板を作ったり、しゃべることを考えていた。

「どうしたんですか」

「どうしたんですか?見ての通り、抗議するために準備してんだよ」

「そこの段ボールの上に乗ってる人は?」

「あの人はこの反対運動を始めようとした人だよ。俺たちの英雄みたいなもんさ」

有島はその人の近くに来た。その人はマイクに向かってしゃべることを考えているようだ。

「本当に抗議するんですか?」

「あん?なんか文句あるか?」

「だって、反対運動なんて警察に止められるかもしれないじゃないですか。実際そういうこと多いしさ」

「確かにそうかもしれんがぁ、抵抗することに意味はある」

「そ、そうすか。大丈夫かなぁ?」

「安心しろ。俺の体を見ろ!この鍛え抜かれた身体ボディーを」

男は服を脱いだ。かなり鍛えられていて、マッチョとも呼ぶべきだろう。

「おおすげぇ」

「だろ?俺ら無能力者は能力が使えないが、努力することで能力と等しいものを手に入れることができるのだ。お前も何かできないか?」

「えっとですねぇ。ああ僕魔術が使えます。塾行ってるんで」

「それだ!魔術はなんのためにあると思う?無能力者でも能力が使えるようにと、開発されたものだ。しかし努力が必要。能力者が才能を具現化した存在と言うならば、無能力者は努力を具現化した存在とも言うべきだろう。この筋肉、30年間鍛え続けたんだぜ」

「へぇすごいですね。(これならマジで抗議成功すっかも)僕も反対運動手伝います」

「サンキュー」

有島は倉庫に戻った。

「おいお前ら起きろ!!!!!!」

ゆさゆさと2人を揺らして起こそうとしている。

「…なんでよ、眠い」

「何その汚れ、落とし甲斐がある」

「起きろお前ら!!!!!!」

「…んも、うるさい〜。もう少し寝させて」

「あ、結衣、外に新型スカイラインがあるよ」

「あれは10月末発売だからあるわけない」

今は9月末だから、あと1ヶ月後だ。

「(クッソ)じゃあ………、フォルクスワーゲンあるよ」

「どこ⁉︎」

彼女は勢いよく起き上がった。

「引っかかったな。広場行くぞ」

「なんでよ。フォルクスワーゲンは?」

「だからあれはウソだって。いいから彼も起こして、一緒に広場行くよ⁉︎」

「なんでよ。フォルクスワーゲンは?」

「見たいならそいつ起こせ!!!!!!」

2人は麻法を起こした。

「せっかく洗濯機とデートする夢みてたのに」

「もう怖くなってきた」

「フォルクスワーゲン!!!!!!」

「だからウソって言ってんじゃん。こいつら少しは世間と合わせたらどう?(車好きはよくあるけど、洗濯中毒は見たことない)」

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