悪役令嬢転生モノの、逆転ざまぁされる悪役ヒロインに転生した。平民(孤児)のままでいいんですけど不自由ないですし…
悪役令嬢転生モノの、逆転ざまぁされる悪役ヒロインに転生した。平民(孤児)のままでいいんですけど不自由ないですし…
悪役令嬢転生モノの、逆転ざまぁされる悪役ヒロインに転生した。平民(孤児)のままでいいんですけど不自由ないですし…
@syatines
悪役令嬢転生モノの、逆転ざまぁされる悪役ヒロインに転生した。平民(孤児)のままでいいんですけど不自由ないですし…
「バニラ!ようやく会えたぞ、わが娘!」
でっぷりとした腹をどうにかしようという気がなさそうな貴族のおっさんに”わが娘”とか言われて、前世の記憶が雷のごとく降ってきた。
迎えに来たのはコーシューニュ男爵という男。
そこで、前世の記憶を思い出したのだ。
私は日本で女子高生をしていたが、交通事故に巻き込まれて死んだんだろう。
最後迫りくる大型クレーンを見た記憶がある。
そして「やべぇ…読んでた小説の悪役令嬢逆転ざまぁものの世界だ」と理解した。
定番のざまぁ系でざまぁされるヒロインである私は、孤児として生活していたある日、男爵家に引き取られ貴族学校に通い、天真爛漫さと節操のなさを発揮して高位貴族を虜にする。
最後には王太子に手を出してその婚約者である悪役令嬢に虐められたと主張。
王太子は悪役令嬢に婚約破棄を突き付けて断罪するも、当然冤罪。
また、バカな王太子はそれが政略結婚で、国のバランスを保つためのものだと理解していない。
取り巻きの高位貴族もごくつぶしで今回の騒動に端を発して、追放、幽閉され亡き者になる。
実際問題、悪役令嬢はそんなバカ殿下を好きではない。
政略結婚だから仕方がなく婚約しているにもかかわらず、王太子は自分を好きな悪役令嬢が嫉妬をしたのだと勝手に思い込み、ヒロインに転がされる。
結果、王太子は廃嫡、幽閉コンボ。
ざまぁされるヒロインは、高位貴族をたぶらかした悪女として処刑。
最終的に、まだ当時10歳にもならない第二王子が立太子する。
当の悪役令嬢は幼馴染の公爵家次男を迎え入れて女公爵になる。
つまり、貴族になると私は滅びるわけだ。
舞台は中世っぽいけれど、上下水道もお風呂もあり半端に日本っぽい世界。
私は孤児だけど、同じ孤児たちと教会の孤児院で毎日楽しく生活していたわけ。
御年12歳。
ここで、この野心丸出しのキモデブ男爵の娘だと連れていかれるわけ。
理由は、このキモデブが手を出したメイドが生んだ子が私だから。
自分の奥さんとの子供がいるからと、金だけ渡して追い出された私と母は市井で暮らしていたが、屋敷を追い出された1年後。私を生んだことによる体の負担からか死んでしまった。
てかね、14歳で妊娠出産はまずかろうよ…ロリコンかよ、くそ男爵。
そんな危険なところに12歳で行きたくねぇがな。
「貴女には断る自由もありますよ」
「何を言うのだ、神官殿。親子は親とともに暮らしたほうが良いに決まっているではないか」
キモデブ男爵を見てから、微動だせず一切しゃべらなくなってしまった私に、孤児院を切り盛りしている神官さんが助け舟を出してくれた。
このキモデブ男爵は、私が教会で聖魔法を使って役に立っていると聞いて、聖女候補にしたくて引き取りに来ているだけなのだ。
「国のために役に立てるんだぞ」とか何とか言っているが、今までほったらかしにしていた癖に何言ってんだこいつ?
なんでヒロインちゃんはこんなキモデブについていったのだろう?
あぁ、そういえば元の性格は金にはがめつかったな…男爵の言葉巧みに騙されて多少の貴族教育を受け”高位貴族と仲良くなりなさい”を曲解し、孤児院では最年長の女の子だった反動から、突然美男子に囲まれてちやほやされ性格がゆがんでいくんだったか…さて、明確に断らないと。
「え、嫌ですけど?今まで何もしてこなかった人に、急に親だといわれても信じられません。
私は今、神官様から聖魔法の使い方を学んでシスターになり、この教会へ恩返しするのです。
それに私、貴族になんてなりたくありません」
「そんなことを言わないでくれバニラ。
こんな所よりおいしい料理も、暖かい布団もある幸せな暮らしができるんだぞ?」
「お断りします。今の発言は教会とその施設を侮辱したと思っていいですよね? ね、神官様」
「その通りです。貴族同様の生活をすることはできませんが、栄養を考えた温かい食事も、一人1つはベッドと机を確保している当院を侮辱することは、国だけでなく、神へも冒涜といえましょう。
男爵、本人が拒否しておりますので、お引き取り願います」
「ぐぬぬ…これであきらめたわけではないからな…」
「次は聖騎士団を同席させますかな?」
「っ!失礼する」
あわててキモデブが帰っていった。
これで私の貴族化フラグはなくなったはずである。
仮にも男爵で貴族であるキモデブが引いたのは、この神官殿が、筆頭公爵家当主の弟さんだからだ。
一応聖職者になったので、貴族ではないのだが、その後ろ盾は大きい。
この教会も、公爵家から多大な寄付金をもらっているので、かなり快適な生活が送れているのだ。
10歳までは相部屋だがそれ以降は個室をもらえる。
さすがにトイレとお風呂は共同だが(※ちゃんと男女は別)ご飯もおいしいし、何の不満もない。
なんなら、孤児としていられる15歳までにシスターになれれば、その後も教会で生活できる。
何の後ろ盾もない娘だったバニラはそれでよいと考えていたようだ。この教会の宗派は聖職者でも婚姻が許可されているので余計だろう。
前世を思い出す前のバニラもそう思っていたようだし、その道を踏襲しよう。
貴族になると、15歳から貴族学校に行かなくてはいけない。
そこで、王太子や高位貴族と会うわけだが、そもそもいかなければシナリオなど進まないだろう。
「神官様、私はここで勉強をつづけ、将来はシスターになります。
ですので、お貴族様のもとに行く気はありません」
「それでよいでしょう。彼はあまり良い噂を聞かない男です。
あなたの聖魔力はかなり高いですから、しっかり制御できれば立派なシスターになれますよ」
「はい、神官様。頑張ります」
こうして、貴族になることを捨てた私は、この王都の教会で必死に勉強を始めた。
てか、名前がバニラで、ピンク髪のゆるふわショートヘアの私がコーシューニュ男爵家の娘になどなったら、バニラ・コーシューニュになってしまうではないか。
ばーにら・ばにら…これ以上はいけない。
どうも、このバニラってヒロインは頭の出来が良くなかったらしい。
簡単な本は読めるのだが、難しい本が読めない。
これは国語の勉強が必要だな…聖書を読めないとシスターにはなれないだろうよ。
勉強しとけバニラよ…聖書は山とあるから借りて勉強だ。
計算は私の持っている知識のほうが上だからこれ以上頑張らなくてもよいかな?
しかし、魔法の練習だけはしっかりしていたようだ。
上手くやると金になるからな…
聖属性の魔法は治癒魔法やバフ魔法が多いので、孤児たちの傷の治療や、バフあり鬼ごっこなど小さい子の面倒も見ていたようだ。
てか、バフかけての鬼ごっこはどう考えても危ないからやめさせなさいな…室内で遊ばせると壁に穴あくぞ?
日曜日には、教会にお祈りに来た人たちのケガなどを魔法で治していたようだ。
見た目はかわいらしい女の子なので大変人気のシスター見習いだった。
お布施としてお小遣いも結構もらえたから、よけい頑張っていたようだ。
そら男爵も目をつけるわ。街でも人気なシスター見習いだもん。
相当噂になっていたようだ。
*****************
前世の記憶を取り戻してから2年。
私は14歳となった。
あれからしっかりと勉強を重ね、聖書を読むだけでなく、その解釈を解説した本や、当時の歴史書などもかじり始め、王都図書館への出入り許可をもらって必死に勉強した。
おかげで、神官様からもシスターになる推薦状をもらい、先日シスター試験を受けた。
受かれば正式にシスターとして、この教会に仕えることになる。
この2年で私は成長したのだが、小説では胸も大きくコルセットがなくてもくびれが目立つほどの肉体美を誇ったらしいのだが、教会で栄養バランスが取れた適量の食事をしたからか、なんだか脂肪がほぼついていない。
寸胴とは言わないが、ずいぶんとモデル体型になったと思う。
これはこれで美しいと思うので文句はない。
超絶美少女シスターが生まれるな。
後日、合格の通知が着て、神官様から正式に祝福を受け正式にシスターとなった。
「おめでとう、シスターバニラ。これで正式に神につかえるものですね」
「ありがとうございます、ゲオルグ神官様。ご指導のおかげでございます」
「そうですね、あの男爵が来てから貴女は心を入れ替えたといっていいでしょう。よく頑張りました」
神官長ゲオルグ様26歳。
さすが公爵家の出なので、その年になってもイケメンさんである。
この2年間、私に親身になって勉強を教えてくれた家庭教師状態のお兄さんに恋をしてしまったといっていい。
でも、ゲオルグ様と呼ぶことは許してもらえたけれど、さすがにそれ以上の進展はまだない。
26歳と14歳じゃさすがに犯罪かなとは思うが…恋に年齢なんて関係ないはず!!
今日からは、何度でも当たって砕けてやる!!
そんなある日のこと、公爵家の方々が視察に来るとのことで、ゲオルグ様とお出迎えをした。
「え、なんでバニラがここにいるのよ…」
降りてきたのはゲオルグのお兄様の公爵閣下とその娘マルガレーテ様がいらっしゃったのだが、そのマルガレーテ様の一言がこれだった。
これ、マルガレーテ様も前世の記憶持ちだな…私がここにいて困ることなどあるのだろうか?
「お父様、私この若くしてシスター試験を合格されたシスターバニラと少々お話ししたいのですが、よろしいかしら?」
「あぁかまわない。その間に私はゲオルグから教会の現状を聞いておくから好きになさい」
「シスターバニラ、よろしいかしら?」
これは拒否権ねぇわぁー
「はい、ではどちらでお話を?」
「ゲオルグ叔父様、懺悔室をお借りしても?」
「いいが、なぜ懺悔室なんだい?」
「少々込み入った話をするので、ご許可願います」
「…わかったバニラ、粗相のないように」
「はい」
そうして貴族用の懺悔室に来たわけだが、さっきからマルガレーテ様が頭を抱えておられる。
「あの、ヴォルフショール公爵令嬢どうされましたか?」
「…単刀直入に聞くけど、あなた前世の知識もちね?」
「え、あ、はい」
「そうよね…こんなヒロインに転生すれば運命を変えたくなるわよね…はぁ、どうしよう」
「えっと、どうされましたのでしょう?
やっぱり私がヒロインじゃないとまずいとか?私断罪されたくないんですけど」
「いえ、いいの。
ただ、面倒なことになってはいるわ。
あなたほどの美少女を逃すとバカ殿下を壊滅に追い込めるかどうか…」
「えぇ…まぁあのバカ殿下が国王になんてなった日には、国の行く末が心配ですけど」
「そうでしょ?それは父も同意見よ。
だから機を狙って引きずりおろすのに、あのシナリオは好都合だったのよ。
そうすれば貴族の膿を一掃できるしね…
しかし、コーシューニュ男爵がなくなった奥さんと娘の代わりに血のつながった孤児を引き取ったと噂されているから、てっきり貴女はもういないと思っていたのに…
まだいたとは誰をかっさらたんだ?あの男爵」
「え、私以外にも隠し子がいたんですか?!」
「あー実際問題、貴女にあのキモデブの血は流れてないわよ。
キモデブ男爵のでっち上げ。
聖女候補になれそうな孤児の女の子の背景を調べ上げて自分の娘だって言って回っているのよ。
そういう意味ではあなたは最有力のターゲットだったはずなの。
実際あなたのお母さまは”男爵家でメイドをしていた”からね…ただ、あのキモデブ家のメイドではないわよ」
「は?まじすか」
「それに、貴女には多分貴族の血は流れてないわ。
私が厳密に調べ上げたけれど、貴女の父親は男爵家の家令のはずだから」
「まじでー?」
「まじでー」
「私の苦労とはいったい…」
「まぁシスター資格は立派な後ろ盾だから損はないでしょう」
シスター資格はかなり上位の身分証明なので、かなり便利だ。
街の中でいろんなところへの入場制限がなくなる。
何なら王宮のロビーにも入れる。あそこも聖地のひとつだから祈りをささげられるのだ。
「ところで、ヴォルフショール公爵令嬢はなぜこちらに?」
「私のことはレティでいいわ。
今日は、バニラっていうシスターがいるっていうから見に来たのよ。ゲオルグ様はお父様の弟でしょ?
うちが出資している孤児院を知る必要があるとついてきたわけ。
そしたら平気な顔であなたがいるし…ちょっと発育悪い?」
「胸見て話してんなら、張り倒すぞ、巨乳」
「いや、ちょっと原作と比べるとあまりにも貧相なもんだから…ごめんね?」
それは私も思うよ。
悪役令嬢のほうが発育いいもん。お貴族様は違うなやっぱり。
「まぁバニラが転生者でシナリオに絡んでこないのは分かったからいいわ。計画は一部修正する」
「あ、はい。巻き込まれないのであればソレで」
「ちなみに、貴女すでに別件に巻き込まれているわよ。
今日お父様が教会にきたのだって、ゲオルグ卿があなたと婚姻したいって手紙が来たから来たみたいだし」
「は?まじ?そんな素振りなかったのに???こっちとしてはバッチこいだけど」
「そうなの?その割に奥手なんじゃない?」
「14歳と26歳じゃ犯罪臭がすごくて…」
「気持ちはわかるわ…私も中身だけで言えばアラフォー…やめましょう、この話。
私、おねショタは趣味じゃないのよ…」
「精神年齢と実年齢に揺れる心ですよね」
「他人事ね、貴女」
「他人事なので」
「まぁいいわ。たまには遊びに来るから、その時は前世の話でもしましょう」
「じゃあ必ず懺悔室へお通しいたしますね」
「そうね」
悪役令嬢レティ様との会話から数日、私はゲオルグ様にその気があるとわかったので、猛アタックを開始。
「私も貴女に好意を持ってしまった。頑張る貴女は美しく、とても好感が持てた。
今後も、一緒に教会を切り盛りしてもらえないだろうか?」
「はい!」
と、上記の告白を引き出すことに成功し、正式にお付き合いを始めた。
ゲオルグ様もさすがに年齢についての引け目があったらしい。
それでお兄様の公爵様にご相談したそうだ。
「別にもう貴族ではないのだから好きにすればいい」といわれて、覚悟を決めたとのこと。
問題は覚悟を決めて告白されてから、私に対してゲロ甘になったこと。
人目がないとすぐイチャイチャしようとする。
そらーなるべく禁欲なさいとの神の教えがあるので、クウネルエッチについては欲望をさらけ出すことをしないはずなのだが、今までそういったことを控えていた反動か、ゲオルグ様のスキンシップが激しい。
まぁ嫌ではないのでそのままにしているが。
ちなみに、結婚は許されているが、婚前交渉は宗教上ご法度なのでものすごい勢いでゲオルグ様が結婚の準備をしている。
神官の結婚は王都の中央神殿で行わないといけないので、手順があるらしい。
家の教会も王都の教会ではあるが、孤児院併設の街中にある普通の教会だからな。
ゲオルグに告白させてからも私の生活は大きくは変わらなかった。
実はこの教会、シスターがいなかったので試験に受かった後の私は、正式にシスターとして孤児たちの面倒と、神官と同じく懺悔を聞いたり、祝福したりという仕事をしていた。
ちなみに、高位神官は跡継ぎを作ることが許されているが、それ以外の下級神官は“タマなし”が多い。
一応は禁欲の為と自分で選べるらしいのだが、大体の神官は受け入れるそうだ。
それにこの教会の神官は神官長のゲオルグのほかには2人ぐらいしかいないし、幼いころに取っているので、見た目は割と女の子っぽい。
彼らと一緒に教会を切り盛りしながら、ゲオルグ様から甘やかされる日々が続いた。
ちなみに、私の勉強時間が甘やかし時間に変換されただけだったりする。
「今日もバニラは可愛いな」
私はゲオルグの膝の上に乗せられ腰を抱かれ、頭をなでられている。
「げ、ゲオルグさすがに恥ずかしいのだけど」
「いつもやっているのにまだ恥ずかしい?そういうところも可愛いね」
チュっと髪に口づけを落とされる。
そういえば、ちゃんと口づけしてないな。
「ねぇゲオルグ、ちゃんとキスをしたいのだけど…」
「結婚するまでだめ。僕が耐えられない」
おう、神官長としてそんなに欲望垂れ流しで大丈夫か…いやどうも、私の勉強時間と処するこの時間で存分に補充してバリバリ神官としての仕事はしているからよいのか。
*****
毎日膝の上に乗せられて猫かわいがりされる日々が続き、半年ほどたった15歳のある日、寝起きの私にシスターの正装を着なさいと言われ着替えたら、中央神殿へ担いでいかれた。
「神の名のもとに、二人の婚姻を認める」
中央神殿の大神官の前で、二人両ひざをつき、胸の前で腕を組んで御祈りのポーズ。
聖油をお互いの額につけて、これで正式な夫婦になった。
高位の神官が婚姻するのはかなり厳格な審査があるらしく、時間がかかったと言われたが十分早いのでは?
ぶっちゃけ、今夜が怖い。
いや、でも好きになった人と夫婦になるんだからよいのか。
未だに彼のアップを見ると照れてしまうのだけれど。
結果的に馬車の中からひどい目にあった。
さんざんキスされてフヤケさせられ、そのままお姫様抱っこで寝室に連れていかれてベッドに投げ込まれた。
お猿さんかっ!
いや、人のこと言えなかったわ。
流石悪役ヒロイン、男を喜ばせる体をしているらしい。
ゲオルグが瞬く間に果ててしまったし、初めてのはずなのに私は痛くなかった。
それに、私自身も驚くほどの性欲があったようだ。
小説の設定どおりの肉付きで男を次々と物色していれば、魔女だと処刑されても仕方がないわ。
この国そういう節操が無いのを嫌うし。
ただ、現在進行形で私とゲオルグは節操がないのだが…
中央神殿から帰ってきてから、ずいぶんと時間がたったようだ。
もう外くらいよ。
今私はゲオルグの腕を枕にさせてもらって寝ている。
これ、絶対起きた時腕しびれて動かなくなる奴だ。
ゲオルグを起こさない様に寝返りを打つ。
それほどたくましいという感じではないけれど、男性なんだなぁという感じの胸板に耳を当てると、彼の鼓動が聞こえてまたドキドキしてしまう。
聖職者がこんな自堕落でいいのか?とおもったがまぁいいか今日ぐらいは。
翌朝、レティ様からお手紙が届いた。
婚姻おめでとうと、どうだった?という下世話な内容だった。
私もだが、彼女も前世は喪女だったようで、年齢=彼氏いない歴だったらしく、そういった経験がなかったのだ。
わるいか!
あと、ちょっと心配した「ゲオルグロリコン説」はどうも私限定発動らしく安心した。
実際に現在孤児院に居る10歳の女の子には何とも思わないらしいので。
私以外の孤児で魔法が使えるものは居ないので、15歳になると、どこかへ就職する必要がある。
肉体的に恵まれていれば聖騎士団という教会所属の軍隊に入ることもできるし、それ以外も読み書き計算は教えているので、就職先はある。
この世界、平民の識字率はそれほど高くない。
跡取りのいない町工場や商店などが引き取ってくれることも有る。
後は聖職者になる道だね。私はこの道をたどったわけだ。
ゲオルグとの婚姻後は、私の勉強時間は孤児たちへ勉強を教える時間に変わった。
私が先生として読み書き計算を教える。
だいぶシスター服も着慣れた。
黒いローブに金糸の刺繍が入る一般的に前世で思い浮かべる「シスター服」だ。
モデル体型を維持しているせいで外観は“つるーん・すとーん”なので、顔が可愛いので人気だが、教会に来る信者の方々から性的な目で見られることはない。
というか、そういう目で見るとゲオルグがすごい目で信者を威圧する。
ある意味厳格な神官になっているわね…そういう目で見られることは実際あるからね…しょうがないね、フェチの1つだし。
で、夜はゲオルグにたっぷりかわいがってもらっている。
私もゲオルグ以外に可愛がられる気はない。
しかし、子供ができないんだよな…もしかしてゲオルグ、タマはあるけど種なしなのか?ちょっと心配になる。
1年ほどの結婚生活を送っているある日のこと、レティが教会へやってきた。
私は無条件で懺悔室へ通す。
座っていいなど何も言わないのに、さっさとソファーに腰掛けると、頭を後ろに反りすごいため息を吐いた。
「はぁぁぁぁぁ、無いわぁぁ、アレは無いわぁぁ」
「どうしたのですか?レティ様」
「いやぁ男爵が連れてきた女が、貴女を一回り不細工にした感じで、左目の下にホクロがあるのが差なのだけど、同じピンク髪だし、背丈も一緒。名前もバニラ。原作通りの巨乳で制服はちきれそうだし、節操無いし…私、貴女と取り違えたのかしら」
「あれですか?シナリオの強制力?てか、私より一回り不細工って何」
「わかんない。男爵は、ああいう女の子が好きなんだなって、わかるけど。ちなみに町娘感が増したって感じに美少女を下方修正した感じよ」
「わかりたくないですね。てか、それは充分美少女なのでは?」
「同意よ、腹立たしいわよね。あなた美少女すぎよ」
「お言葉そのままお返しします」
レティの話によると順調にシナリオは進行中らしい。
バカ殿下はすでに虜だとか。
調べてみると、どうも“バニラ”を名乗る男爵令嬢はすでに高位貴族とも“関係”を持っているらしい。
「節操無いですね…神罰でも与えましょうか」
「これ以上シナリオ変えないで。いい感じで断罪できそうなんだから」
「そういえば、レティ様は女公爵になられる?」
「その予定だけど結婚相手は違うわよ。家格は開くけど、婚約破棄された傷物令嬢ってことでねじ込むわ。
私の専属執事と結婚予定よ」
「わっお、すごいですね。でも、そうなると相手は平民なのでは?」
「公爵家の執事が平民な訳ないでしょ、子爵家の次男坊よ」
「あ、はい、そうですか」
「結婚式はゲオルグ様に祝ってもらう予定だから、あなたも来てね」
「しっかり断罪し返してやってくださいね」
「任せなさい」
変なところでシナリオの強制力ってあるんだなぁと思ってしまった。
てか、私以外にもバニラなんていたのか。
話を聞く限り、あっちが本当のバニラなのだろうな…
あれ?私悪役ヒロインじゃなかったのか。まぁいいか。
*****
つつがなく日々が過ぎて結婚してから3年ほどたちました。
未だに私たちはラブラブですが、子供ができません。
もしかして、私の身体に問題があるのでしょうか?調べようがないけど。
まぁ低年齢出産になるぐらいならいいのか。
そして、今日は“バニラ・コーシューニュ”の処刑の日だそうです。
面白いので試しにさらし者にされている間に見に行ってみたら、あんまり似ていませんでした。
ただ、原作小説の挿絵にはそっくりでしたね。
なんだよ、本当に私じゃなかったのかよ…
ただ数日後、教会にきた人に聞いたところによると、あの顔もメイクだったらしく、数日後にはメイクもはげてかわいらしかった顔は醜くなっていたそうです。
なんと実年齢は23歳。ようサバ呼んだな…悪役ヒロイン。
本名はどうも違うらしく、さらには高級娼婦だったようだ。
思春期男子になんてものをぶつけるんだ…そらぁ手玉に取られるだろうさ。
そう考えると、私は何者だってなる。
どうもキモデブ男爵は当初立てた計画を変える手間を省くために、替え玉としたようだ。
同じ“バニラ”なんて名前なので気分は悪いが、レティが全くの無関係と公式発表してくれたおかげで、特に現状問題は起きていない。
石投げられなくてよかった。
今回の騒動でコーシューニュ家はお取りつぶし、その他の高位貴族男子も劇中通りに進んだようだ。
唯一違う点は、元王太子殿下もともに処刑されるらしいこと。
コイツだけが特別頭がおかしかったということにしたいらしい。
表向きは王家の体面は保たれているが、実権はヴォルフショール公爵家が握っている状態だとか。
貴族社会も大変であるが、レティの御父上が政治をしてくれるならこの国は安泰だろう。
てか、今までもそうだったらしいが、国王の発言力をごっそり削いだおかげで、進まなかった改革も進みそうだと、レティからきいた。
本当にこの国の膿を出し尽くしたんだなと思う。
例の事件から、2年後、ようやく私は妊娠した。
長かった。あんなにシテいるのに子供出来ないから、一生子供出来ないのかと思っていた。
ゲオルグも半ばあきらめかけていたらしく、ちょっと快楽に傾倒しすぎていたようだけど、子供ができたようだと告げたらもろ手を上げて喜んでくれた。
ゲオルグの魔力と私の魔力を継いだ子は、相当な聖魔法の使い手になるだろうと、今から上級神官の英才教育をする気らしく、毎日聖書の朗読をゲオルグがお腹に聞かせている。
女の子なら聖女、男の子なら聖人になれる可能性が高いとのことだ。
この教会から聖人が出れば、それは誉なのだが、あまり期待しすぎては子供にプレッシャーになるから、やめてあげてとは言っている。
小説のシナリオが完了してからは、完全に私の人生だ!とはレティの話。
今度、例の執事と結婚するらしく、招待状が届いている。
てか、私は舞台側だろレティよ。
ゲオルグの補佐やぞ私。シスター服はお腹目立たないから助かるわ。
悪役ヒロインに転生したと思っていたが、結局私はなんでもない人だったわけだ。
まぁやっぱり好きに生きるのが一番なんだなとの教訓を得た気がする。
悪役令嬢転生モノの、逆転ざまぁされる悪役ヒロインに転生した。平民(孤児)のままでいいんですけど不自由ないですし… @syatines
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