第07話「少年と鮭祭り」

「ホ~~ムラ!」



 ボクはボクの家のカマドで寝てたサラマンダーのホムラのしっぽを炎に耐性のある左手でつかんだ、ホムラが慌てて振り払いボクをシャーと威嚇いかくする。


「ヒロ! ホムラのしっぽつかんじゃダメでしょ!!」


 フェアリーのフェイがボクの耳を引っ張り、耳の中に顔を突っ込むように叫ぶ。


「わっ! ビックリした!! フェイ酷いよ」


「酷いのはヒロよ、ホムラのしっぽ大事なのに」


「えーいいじゃん、切れてもまた生えて来るんだし」


 ホムラは二本足で立ちその燃え盛るサラマンダーのしっぽを抱えてボクをにらむ。


「はは、ごめんごめん、ホムラも行くでしょ鮭取り」


 ホムラはボクの前にトコトコと歩き胸をトンとその短い手で叩く『オレニマカセロ』と言ってるみたいだ。



「クマ吉は?」



 ボクは鮭取り用に手作りした木のモリを何本か持ち、川で食べるみんなと食べる為に作ったデザートのモンブランを竹で編んだ箱型のバックに入れたあとフェイに聞いた。


「クマ吉は先に行ったわ、あいつ足が遅いから」


 そりゃフェアリーのフェイに比べたら灰色グリズリーのクマ吉はのろまなのだろう。


「じゃボクらも急ごう、クマ吉に鮭全部食べられちゃうよ」


「わかった、ホムラ、ヒロも私も全力で行くけどついて来れる?」


「あっ、また人間語だったわ」


 フェイはそう言ったあともう一度精霊の言葉でホムラに話、そしてボクがホムラ方を向くとホムラはまるで人間みたいに親指を立てた。


「準備OKって事だね」



***



 ボクは全力疾走する、大樹の森を駆け抜ける、時おり手でその大樹をつかみ押しながら加速し方向転換しどんどん加速する、フェイはその綺麗な羽でホムラも最近出来るようになった飛行能力で飛んで追って来る、が、ボクには追い付けない、ボクは風のように軽やかにそして力強くさらに加速した。



「ん? クマ吉?」



「おーーい! クマ吉ーーーー!!」


 ボクは川沿いを下るクマ吉を見つけると大きな声を上げクマ吉に手を振った。


 クマ吉もボクに手を振る、フェイ以外の精霊や動物とは人間の言葉は通じないけれど、それでもコミュニケーションはとれる、結構なかいい友達だ。



***



「おいクマ吉、イクラばかり食べるなよ!」



 クマ吉はボクの言葉を無視して川の岩場に上げた鮭のお腹を押して平らな岩にイクラを溢れさせイクラだけを食べている。


「ヒロ、クマ吉は冬になると冬眠するんだから栄養の高い内臓や卵がいいんだってさ、クマ吉はあんたと同じで精霊じゃないのよ、いっぱい食べなきゃ!」


「まあいっぱい鮭いるからいいんだけど、なんかもったいないな……」


 ボクは水よりも多い赤鮭あかじゃけの群れが川を真っ赤に染めてビチャビチャと音を立てて川を登って行くのを見つめた。



「ねえ、取り放題だよフェイ!!」



「赤鮭はどんなに取られても卵が無くならないようにいっぺんに川を登って来て卵産むの、まあ自分で食べる分を取るだけなら世界から赤鮭が居なくなる事はないから安心して取りなさい、ヒロ」


「わかった、今年の冬を越えられる分だけ取るよ」


 ボクは持ってきた木のモリで赤鮭を数珠繋じゅずつなぎに次々と刺していった。


「ホムラ~そこに寝て、この三匹、いや四匹はここで焼いて食べるから」


 ボクはそういうと甲羅干しのように寝転がったホムラの背中で赤鮭を焼き始めた。


「四匹? 私甘く無いのは要らないわよ」


「ほら、クマ吉も生の方が良いって言ってる」


 クマ吉はイクラに飽きたのか内臓をおかずにガリガリと頭を食べていた、もしかしたら頭の方がおかず? それともデザートかも?


「ちなみに頭はもっとイクラを食べるための箸休めでデザートはヒロが持ってきたモンブランだって」


生赤鮭なまあかじゃけの後のモンブランって美味しいのかな?」


「今日の私はモンブランが主食よ♪」


「ちぇっ、焼き鮭を楽しみにしてたのはボクとホムラだけか……」



 ボクとホムラはホムラの背中で美味しそうな香りを漂わせ始めた赤鮭を二人で食べた。


 ホムラはしっぽをフリフリしながら嬉しそうだった。

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