第2話 最初の目的地、北海道
熊本空港から東京の空港を経由して約五時間、北海道に俺たちは到着した。
「涼しいですね、北海道は」
「そうだな、それじゃあまずは予約している旅館に行こうか」
と、言うことで俺たちは空港から一時間くらいの山の中にある旅館へ向かった。
部屋が一人一部屋の三部屋予約されていた。
「針川さん、大丈夫なんですか三部屋も使ってお金は」
俺の遠慮がちな質問に
「お金の心配を君はしなくてもいいから。今回の旅をしっかり楽しんでくれ」
そう笑いながら答える針川さんだったが俺はどうしても後ろめたさが消えなかった。
荷物を部屋に置いて針川さんに連れられ行ったのは近くの漁港だった。
漁港に着いて針川さんはまずプレハブ小屋のような場所に入っていった。
その間俺たちは自由に周りを見ててもらって構わないとのことだったが何もする気になれない俺は防波堤に座り海を眺めていた。
すると彼女が隣に来て
「夏なのにすっごい涼しいね」
と、言いながら座った。
俺は何も返さなかった。
この時、俺はなぜこんな場所に来てしまったのだろうかと思っていた。
(なんであの時死ねなかったのだろうか。そうすればこれ以上人に迷惑をかけることも無かったのに。それに俺が居なくて困る人は誰もいないんだから)
そう考えているとさっきの小屋から出てきた針川さんが俺たちを呼ぶ声がした。
呼ばれて針川さんの所まで行くと
「今から釣りをするぞ」
と、言いその手には三本の釣り竿とバケツ、そしてエサがあった。
その後ろから出てきた六十くらいに見える人も釣り竿をもっていた。
針川さんに連れられ漁港の一番外側の防波堤まで行くと
「じゃあ今から四人を二人ずつのチームに分けて二時間の釣り対決をする。チームはくじを引いて決める」
そう針川さんが言ってくじを引いた結果、チームは針川さんと彼女、俺とついてきた漁港の人となった。
釣り対決が始まりそれぞれ用意をして釣りに入った。
始まって約三十分、俺の釣果は一匹の手のひらくらいの魚だけだった。
(なんでこんなことしてるんだろうな)
と、思っていると隣にいたチームの人が
「君にとって人生とはつらいものばかりだったのか」
急に話しかけられてびっくりしている俺に続けて
「わしは四十年ほど前に親に連れられここへ来た。都会から来たこともあって少しばかり目立っていた。しかしそれが中学生になるころいじめへと変わっていった。その時わしも死を選ぼうとしてしまった。だがその時楽しかった思い出を思い出すと死ぬことがとてつもない恐怖へと変わっていった。すべてを失うくらいだったら抗い続けてやると思って今まで生き続けてきた。君には失いたくないものはなにもないのか」
そう告げられた時俺の口はようやく開き
「何も楽しいことがなかった人生ですから。親も近くにいることはなく学校ではミスばかりで周りの人に助けてもらってばかりで。テストの成績も伸びることことはなく部活もうまくいかない。周りに迷惑ばかりかける人がいなくなった方が周りのためです」
俺の答えにその人は
「ならばこの旅行で周りに迷惑をかける事とはどういうことか考えなさい。そして旅行が終わってからわしに手紙をくれ」
そう言われ意味が分からなかった。
その後は何も喋らず釣りを続けた。
「周りに迷惑をかけることはどういうことか」それがどう意味か分からず考え続けいつの間にか勝負は終了していた。
「結果は俺たちの勝ちだな」
嬉しそうにハイタッチをする針川さんと彼女だった。
釣りが終わるとちょうど日が傾き始めていたので今日はこれで終わりとなり旅館へ帰った。
その間も俺はずっと考え続けていた。
それから四日間は自由に過ごした。
町に行って観光したり、旅館でゆっくりしたりとそれぞれ思い思いに過ごした。
最後の日となりその日はみんなで少し高い山に登り記念撮影をした。そして漁港の人たちに挨拶をして旅館を後にして飛行機に乗り次の目的地へと向かった。
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