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キングソンの店員が提案したのは、星のドレスと言われている物だ。
裁縫技術がまだ発達していなかった頃、刺繍の代わりに星を縫い付け飾ったドレスである。
作り自体は簡素だが、シャンデリアに照らされる黒いドレスの中、光り輝く美しさからいまだに一定の人気がある。
当然、縫い付ける宝石の種類と量によっては並の貴族にすら手の出せない代物だが……。
「星のドレス、ね。いいと思うけど少し値が張るし止めておくわ。別なのにしてくれないかしら」
「そうですか? 王子様からのお達しでドレス代は出さなくていいと聞いていますが。どうします?」
「ええ!? ……そこまでされたら断るのも悪いわね。ではお願いするわ」
「畏まりました。では、縫い付ける宝石の種類はいかがいたしましょう」
「そうね……オッカムを胸元に、残りはダイヤモンドがいいかしら」
「オッカムでございますね。では、ご提案通りに仮起こししますね」
キングソンの店員が紙に描き起こしてロザーラに見せたのは、予想より遥かに大きい宝石が縫い付けられている星のドレスだった。
……これ、本当に大きいわね。
服の代金は王子様が出してくれるとはいえ、少し金がかかり過ぎな気がするわ。
ステリックとの婚約破棄で同情してくれるのは嬉しいけど、あまり負担をかけ過ぎるのは宜しくないわよね。
「……もう少し抑え目の方がいいわね。これ、宝石代も含めて王子様がお出しになるのでしょう?」
「ご心配なさらず。その程度の出費など王家にとって痛くもかゆくもありませんよ。私どもといたしましては、もう少し派手にするのもお勧めいたしますが」
「いえ! これで大丈夫です。……王子様って凄いわね」
話を切り上げ、早めに決める事にしたロザーラ。
これ以上、ドレスの話をすると際限なく値段が上がってくるだろうし、申し訳がなさすぎるわ。
相手は王子様、私なんかの為にドレス代を出してくれただけで十分だもの。
ロザーラはそれからドレスについて相談を終わらせ、早々に切り上げてキングソンを出る。
既に店員から父へ相談が終わったと話が通っていたのか、馬車を用意し待ち合せていた。
「おぉ、予想より早かったな。では帰るぞ、ロザーラ」
「分かりました、父上」
そうしてキングソンの店員から全員で見送られた後、父が馬車の中で不思議そうな顔をしながら話しかけてきた。
「なぁ、ロザーラ。いつの間に王家の人間と仲良くなったのだ? 前はそんな素振りすら見せなかったのに」
「……えぇと、実を言うと……私もよく分かってないのです。ただ、王立図書館で宮廷道化師と出会った位で……あっ、でも、その宮廷道化師は王子様と仲がいい様子でした」
「宮廷道化師が? ……信じられんが、それ以外は考えられんからなぁ」
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