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ロザーラは馬車を降り、改めて仕立屋のキングソンを眺める。
王国が誕生した時から存在すると言われている、白い壁に古式の彫刻が彫られている店を。
今までドレスを仕立てていた店とは違う、落ち着きながらも荘厳で綺麗な姿に彼女は圧倒される。
……本当に私達、こんな店へ来ていいのかしら?
父が運転手に馬車を奥の駐車場へ留める様に言い、そのまま店に入ってからもロザーラは周りを見回すのを止められなかった。
普段から客を呼ばず、むしろ選ぶ側な店の内装は落ち着いており、飾られているドレスも派手さがありながらも気品に溢れていた。
「……あれ? あの人はもしかして……」
店を進みカウンターにいる店員へ話しかけようとする父の傍で、ロザーラは見覚えのある仮面と出会った。
オッカムという宝石を飾り付けられた仮面を被っているのは、間違いなく王立図書館で出会った道化師である。
確か宮廷道化師と言っていたわね、彼。
王家に勤めていても道化師の身分は庶民と同じ筈、こんな所にいて大丈夫なのかしら?
「やぁ、また会ったね。招待状はもう届いたのかい?」
「招待状って……貴方が王子様に話をつけてくれたの!? 凄いじゃない!」
「いや、僕は話をしただけだよ。通してくれたのはマルカラン王子のお陰さ。でも随分と早く来たんだね」
「えぇと……実はそうじゃないの。父が王子様からのお誘いだからと、無理にでもこの店でドレスを仕立てて貰おうとして……無茶だと言っても聞かなくって。全く、王子様が手紙を届けてなかったらどうなってた事かしら?」
「あはは、それは大変だね」
「まっ、今となっては過ぎた話よ。それでこの店は幾らで仕立ててくれるのかしら? なるべく安めにしてくれると嬉しいのだけど……」
「心配ないよ。その辺も王子様が何とかしてくれるって。君の話を聞いて同情したんだって」
「本当!? 良かった、あのステリックとの婚約でたんまり持参金を巻き上げられて困ってたのよ!」
「……本当に酷い人だね、そいつは。それじゃ、後は店の人に任せるよ。じゃあね」
「また今度。ねぇ、もし次に会ったら一緒に本でも読まない?」
「本か、それゃいいや」
雑談も終わり、奥の部屋で採寸に入るロザーラ。
その途中で舞踏会で着るドレスの相談を店員とし、彼女は悩んだ後に任せると言う。
「では、王子様とお揃いというのはどうでしょう? 舞踏会でも目立つ事、間違いなしですよ。刺繍も色も合わせましょう」
「な、なるべく落ち着いた感じで頼むわね。あまり目立つと、いざ踊れなかった時に恥ずかしい思いをしますし」
「大丈夫ですよ、彼は……いえ、何でもありません。ではお望み通りに昔ながらの伝統的なドレスはどうでしょう?」
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