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「やはり邪魔してきたか」
ロザーラが仕立屋のキングソンで注文をしてから数日後。
王宮にある自室でマルカラン王子は優雅に紅茶を飲みながら、ステリックに関する報告書を読んでいた。
「自身が公爵家なのを利用して婚約を約束し、土壇場で金だけ受け取り婚約破棄。しかも責任を彼女に押し付け自分は逃げたまま。貿易商の第一子息という立場を利用し麻薬や違法な武器、果ては奴隷まで輸出入。他にも領民に対する度を過ぎた私刑……最悪だな」
そもそも、ステリックがロザーラと婚約破棄したのも他にいい女性を見つけたからだけではない。
彼女の家であるフランコ侯爵家が昔、ステリックの悪事を暴いたのも原因である。
輸入の際に荷物から記録上にはない品が見つかったという事件で、彼の家が罰金を払って終わりという些細な結末に終わった。
それでもステリックからすれば違法な輸出入に対する監視が厳しくなり、ロザーラへ逆恨みするには十分な理由だろう。
「ステリックが貿易商を営んでいる事を自慢する為、彼女へ事業している所に案内し、その途中で見つかるとは……呆れたもんだ。おまけに逆恨みで婚約破棄までするとは。で、次の報告書は何かな?」
机にあるもう一枚の報告書の封を破り、中を見た瞬間にマルカラン王子は呆れた顔をする。
「……案の定、ステリックが難癖を吐けてきたか。わざわざキングソンまで出向いて、ロザーラの邪魔をするとはな。よっぽど彼女の事がお嫌いらしい」
ロザーラの為にマルカラン王子が用意したオッカムは、王国でも随一の大きさだ。
当然、そんな宝石をドレスに使用するとなるとあちこちの貴族の耳に入る。
ステリックもその話を聞き、湯水のように家の金を使ってまで星のドレスに国一番のオッカムが使われようとするのを邪魔しようとした。
公爵家の権力を使い、キングソンへ二度とドレスを仕立て上げられない様にしてやるぞと脅したり、自分は王家とも繋がりがあるぞと嘘を吐いてまで。
全く、あんな優しい彼女へ婚約破棄してからも貶めようとするなんて、許せんな。
「舞踏会に彼女がオッカムを身に着けながら踊れば、ステリックの面目も丸つぶれだろう。公爵家の権力と金を使ってまで邪魔をしたのに止められなかったのだからな。当然、奴の逆恨みも過激になってくるだろう。そうなれば……私の出番だな」
マルカラン王子は手紙を置き、ゆったりと紅茶を啜る。
のんびり落ち着いた様子を見せながらも、頭の中では既に次の準備が整っていた。
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