第43話 【最終話】 教皇

俺はイシュタス様に祈った。


その結果、神託がおり...この世界には本当に神も仏もいない事が解った。


確かに言われて見れば、そうかも知れないと思う事はある。


信者と言う事なら数万を超える数を持つ宗教もあるのに...神にあった仏にあった。


そういう人物は少ない。


俺の友人が癌にかかった時にお見舞いに行った事があるが...信心深いお年寄りが普通に死んでいた。


この世界では奇跡なんて滅多に起こらない。


【神も仏もいない】そう言われたら、そうなのか...そう思ってしまう。



俺行った異世界も、よく聞く異世界の話しは...神が存在し、スキルやジョブを貰える。


今の世界はどうだ...昔であれば【救世主】としてそう言った力を貰った存在がいた。


だが、今は恐らく世界一の宗教者になっても、ヒールに近い能力も使えない。


よく怪我人を治療する事を【手当て】というが...もしかしたら昔はこの文字の様に【手を当てるだけでけがを治せる存在が居た】のかも知れない。


だが...今は居ない。


そう考えれば...本当に今の世の中には神も仏もいない事が解る。


つまり...今の地球こそが...幾つもの宗教で言われている、末世なのかも知れない。


【確か仏教だと弥勒菩薩が救ってくれるような話を昔きいたな】


だが...俺はまだ会った事は無い。




《それで、俺は一体何をすれば良いのでしょうか?》


《そうですね、私の教えでも広めてみては如何でしょうか? 神も仏も何処にも居ませんから....貴方にとって世界が平和になる様に自分で考え行動すれば良いと思います》


《そんな事は私に出来るのでしょうか?》



《救世主はこの世界に貴方しか居ません...ですが貴方がしなくても、世界は今のままです、気楽に考えて構いません》


《そうですか》



結局、俺は出来る事はする..そういうスタンスで活動する事にした。






【数年後】


この世界から、教会やお寺はなくなった。


俺はあの日を境に自分のスキルやジョブの恩恵を惜しみなく使った。


国立の癌センターに行っては...パーフェクトヒールで病人を片っ端から治してみせた。


病人は山ほどいる...死に掛けの人間は沢山いるから、能力の使い場は山ほどある。


500人位の治療をやってのけた後テレビの取材を受けた。


そこから火がついて、沢山の者が連日、俺たちの教会に来るようになった。


俺が治療する条件は【女神イシュタスを信仰する】そういう条件をつけた。


つまり...俺の治療を受けたければ...お寺の檀家や教会に通うのを辞めなければならない。


俺はイシュタス様の使いなんだから当たり前だ...



誰もが治せない病人や怪我人をどの位治したか解らない。


そして、イシュタス様を信心した者にはスキルを与える様に考えた。


ただ、このスキルは治療だけに留めた。


今では俺はイシュタス教の教皇となり...スキルが使える者は司祭を名乗る事を許した。




今の俺は勇者でなく【教皇】と皆が呼ぶ。


そして俺の横には、愛したマリアーヌが真理と重なり居る。



残りの人生は女神イシュタス様に感謝して生きていく...



何も考えず生きていた人生に比べれば...遙かに良い人生だ。




【完】






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