第37話 変わらない物 欲しかった物

「おはようございます、今井常務!」


魅了は解いた筈なのに真理さんの態度は変わらなかった。


これは真理さんなのかマリアーヌなのか?


どちらなのか解らない。


素直に聞いてみるか?



「今の君は真理さんなのか?それともマリアーヌなのか?」


「もうそのどちらでもありません! 二人の心が合わさり1人となりましたので真理アーヌというのが正しいと思いますわ」


二人の心が一つになる...大丈夫なのか?


「それって記憶とかはどうなっているのかな? 大丈夫なのか?」


「う~ん、マリアーヌの記憶も真理の記憶もありますね、思考やその他は2人の考えが統一されたような感じです、うふ、好きな女性を2人纏めてお嫁さんに出来るなんて最高ですね」


陽子や恵美と違って何も変わらない。


と言う事は、本当に愛してくれているという事か...全く違うじゃないか?


「どうかしましたか? さっきから私を見つめて...もしかしたら惚れ直しましたか?」


「ああっ完全に惚れ直した」



「そうですか、面と向かって言われると照れちゃいますね」


これが嘘でない事が解る。


本当に愛して貰っているのが伝わってくる。


ただ、見ているだけで幸せな気持ちになる。


多分、これが愛されるそういう事なのだろう。


今迄も俺の愛は一方通行だった。


ちゃんと俺の気持ちに答えてくれたのはマリアーヌだけだった。


それを自分の手で殺さなくてはならない時、どれだけ悲しんだか解らない。


そのマリアーヌを返してくれた女神。


そして、自分の中に受け入れてくれた真理。


どんなに感謝しても感謝しきれない。



「今になってみて解る、俺は君を2人を心の底から愛している」


「本当ですか? マリアーヌだけでなく、真理でもある真里アーヌを愛してくれるのですね」



「ああっ勿論だ」


「それじゃ結婚してお嫁さんにしてくれますか?」


「良いよ」


「そこは【良いよ】じゃなくてですね、愛しているとか一生離さないとか欲しいです」


「なら【愛している】【一生離さない】これで良いかな」


「もう、取り消しは利きませんからね! 直ぐに叔父様にも報告しますからね」


「ああっ、その位の覚悟はあるよ」


「嬉しい」


真理アーヌが俺に飛びつくように抱き着いてきた。



多分、俺が一番欲しかったのはお金でも権力でも無く【愛】だったのだろう。


今一番欲しかった物が手に入った...


その喜びは物凄く大きい。


これからは本当の意味で一人で無くなる...そう思ったら嬉しくて仕方ない。



「これからもずうっとお願いしますね」


この笑みを俺は一生忘れる事は無いだろう。



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