第32話 宗教法人
竜ケ崎組の組長から連絡があり、向かう事にした。
約束の場所に行ったら...なんだこれ。
寺だな...しかも何故か墓石が撤去されて、墓地だった場所にはお墓が建っていなかった。
「これは一体、どういう事ですか?」
「ははははっ、流石の今井様も驚きましたか? うちの傘下の金融関係が借金のかたに宗教法人の寺と墓所を取り上げたんです」
寺を取り上げてどうするんだ?
「それで、どうしろと言うんだ?」
「なにを言っているんですかい? 今井様は女神イシュタス様の使いじゃないですか? だからこれを差し上げます」
【差し上げます】って何を言っているんだ。
これ、くれるの? こんな都心の一等地にある寺だぞ...
「いや、差し上げますって、俺が...」
「何を言っているんですかい? 今迄儂はこういう仕事をしているから神社や寺には沢山の寄進をしてきたんだ、だが幾ら祈っても何も良い事なんてなかった...本物がいるんだから、今度からそっちに祈りますぜ」
ヤクザって凄い、いや竜ケ崎組が凄いのか。
この寺、何千坪あるんだ、それより、墓のがあった場所の持ち主はどうなったんだ。
「この、多分墓地だった場所は」
「ははははっ、儂たちの墓を作る為に立ち退かせました、儂を始め竜ケ崎の者全部と、山戸連合の小林を含む全員の墓石を作ります、まぁ全員仏教や神道を辞めて、イシュタス教に入信でさぁ...さぁ教主様、儂たちはこれから信者です、何をすれば良いのでしょう...」
「まぁ、とりあえず、イシュタス様に1日一回祈ってくれれば良いと思う」
俺は一方的に力を貰っただけだから、知らないな。
だが、あの女神に祈ってくれる、それは良い。
この世界のインチキな神や仏と違い、イシュタス様は居たのだ。
まぁ...滅んだんだけどな。
その能力は俺の中に宿っている。
「そうですか、ならそうしましょうぞ」
本堂にはしっかりと大きな、イシュタス様の像があった。
多分3メートルは超えると思う。
その斜め後ろに俺の像があるのがこそばよい。
しかもこの本堂、多分100人近くの人間は入れそうだ。
そして、庫裏だ、まぁ実際には家だな...鉄筋コンクリート作りの四階建てでエレベーターもある。
内装は実際には豪邸だ。
これは宗教者の為の物じゃなくて贅を凝らしたものだ。
俺が楽しめるように作り替えてある。
大きな風呂にシアタールーム...なんだこれ。
成功者が住むようなとんでもないもんだ。
「ああっそうしてくれ、そのうち教義みたいな物つくるさぁ」
「有難うございます、それではこれを受取り下さい」
宗教法人の戸籍...俺の名前になっている。
更に言うなら、この土地や建物も宗教法人の物=俺の物という事なのか?
「これ全部、俺の物...良いのかよ」
「本物の神の代行者が何を言うのですか? 余の中には偽物の宗教者がのさばっているんです、本物ならこれ位あっても当たり前です」
「なら、遠慮なく貰っておこう」
殆ど必要な物があるから身一つで此処にこれるな。
「そうして下さい、あの泰章様、それで一つお願いがあるんですが...」
やはり、何かあるのか?
「言ってくれ、まぁ出来る範囲ならやってやるから」
「それでは、代替の決闘をお願い出来ますでしょうか?」
「決闘?」
「はい」
なんでも関西の組と揉めていて、このままいくと抗争になる。
そうなるとお互いに大きな犠牲が出るし、警察も動く。
そうならない様にお互いの組が選んだ者が戦って、勝った方が意見を通す。
そういう事だ。
「俺を担ぎ出すと言う事は相手はそれなりに強い、そういう事か?」
「はい、相手は【死神】と言う二つ名があり、本名は戸沢蛇治、裏社会では凄く有名な男です」
「それって竜ケ崎組ではどうにかならない位強い...そういう事ですか?」
「まぁ飛び道具使えば別ですが、素手で戦ったら、恐らくはボクシングのヘビー級のチャンプでも敵わないという噂です」
「それは本当か?」
「まぁ尾ひれがついていますが、今迄、殺し合いで一度も負けなかった、それは事実です、その中には格闘技の名だたる相手もいました」
世話になっているしこの位は良いか。
「まぁ、その位の事はしてやるよ、決闘して勝てば良いんだろう」
「はい、ありがとうございます」
【代替決闘】
「なんだ、竜ケ崎の、戦ってくれる相手が見つかったのかい? まぁ死神相手じゃプロでも逃げ出すからな、戦うのは余程の馬鹿だ」
「死神?...わはははっこっちに本物の女神の使いだぜ、そんな奴が敵う訳がないわ」
「気が触れたのか? 裏の世界のナンバーワンなんだぜ死神は...例え、ボクシング、プロレスの世界チャンプでも勝てないな」
「そうかい、儂はそう思わないな...そこにいる方に勝てる人間いや生物はこの世に居ない」
「あーあ可哀想に、あのガキ、死んじまうぞ」
本当に好き勝手言ってくれる。
「お前、俺の事知らないのか? まぁ知らないなら仕方が無い、土下座して降参したら許してやる」
「そうですね、俺は余りこう言うのに慣れて無いから胸を借りるつもりでやらせて貰うよ」
「そうか...ならば死んでも文句言うなよ」
「これは相手を殺しても良いのか?」
「こういうのは殺しても、ヤクザが全てもみ消してくれるから問題は無い...まぁ死ぬのはお前だ」
親切なんだか、残酷なんだか解らない奴だな。
「そろそろ初めて良いか...ファイト」
事前に話をした限りでは、何でもありだ。
相手はプロだ、少しは本気にならないとな。
俺は殺気を込めて殴り掛かった、直撃をさせたら此奴は死ぬ。
だから【掠らせる】事にした。
余り大きく怪我しない様に腕を狙った。
「まぁハンデだ、先手はお前で良いぞ」
余裕ぶって、こんな事を言っているが、もう既にモーションに入っている。
右腕上腕筋を掠らせた。
ブチブチ....ビチャッ。
嘘だろう、これでも駄目なのか?
死神の腕の肉が削ぎ取られ、骨が見えていた上腕筋の肉の半分が千切れて地面に落ちた。
「痛ぇーーーーーーーっこの野郎、絶対に殺してやる」
何がやりたいんだか...首筋を狙って手刀が飛んできた。
そのまま、受けてやったら。
バキボキッ
「うわぁぁぁぁぁぁーーーーっ」
指が纏まって折れたな。
「どうした、もう止めるか?」
「うるせーーーーーっ、お前なんか一瞬で殺してやる」
仕方ないから相手の腕をとり一本背負いで投げ飛ばした。
そして、今度は肋骨を掠らすように蹴った。
ピシッ、ボキボキ。
肋骨の骨が折れて、さらに皮が裂け、骨が剥き出しになった。
「ぎゃぁぁぁぁぁーーーーーーっ 負けだ、負けで良い」
あっさりと、負けを認めた。
普通のこの世界の人間じゃ、オーガ所か多分オークにも敵わない。
幾ら人間で強くてもこんな者だろう。
「俺は医療も得意だ、もしその怪我が気になるなら、あとで俺の控室に来い...じゃぁな、死神さん」
それだけ伝えると俺はリングを降りた。
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