第30話 動物園にて

しかし、元義両親は良く可笑しく感じなかったな。


多分、これ以上の若返りは無いと思うが、どう見ても高校生位にしか見えない。


まさかこの年齢で固定なんてあり得ないよな? 此処からちゃんと齢をとっていくんだよな。


そうじゃ無ければ問題だ。


会社でも、既に話が出始めている。



「今井常務...急に若返りましたが、何か秘訣でもあるんですか?」


「サプリとか飲んでいるからかな、あとそこそこ体は鍛えている」



正直言えば自分でも解らない。


これも勇者のせいなのか?


少なくとも勇者は歳をとらない、そんな事は無い筈だ。


だが、自身のスキルを見たら


【不老不死】


齢をとらない。


【若返り】


自分の一番輝いていた時期の体を維持できる。



こんなのがあった。


多分、いや絶対にこのせいだな。


此処までくると勇者と言うより、最早、異世界の能力保持者としか思えない。



「それだけですか? それだけでそんな若返るんですか? 何処かのエステに通ったとか? 整形とかじゃ無いんですか?」


「どう見ても、高校生位にしか見えません」



「しいて言えば、ストレスのない環境になって、病院に通院しているから健康的な生活になったからだと思う」



「そう言えば...すいませんでした」


「そうですね、気がつかなくてすみません」



悪いと思うが、元嫁と元娘と神谷のせいにした。


俺が悲惨な生活をしていたのは周知の事実。


他の人はホワイトなのに俺だけブラックだったのも知っている人間も多い。


この環境から抜け出したから...それで押し通そうと思う。


しかし...別人とか、甥っ子と誰も思わないのが不思議だが【都合が良い】から気にしないで良いだろう。



「それじゃ、俺は仕事に戻るから」



「あっすいません、今井常務お引止めしまして」



「別に構わないよ、それじゃあな」



そそくさと自分に与えられた部屋に戻った。



今の俺はホワイトどころか、クリアだ。


何しろ、部屋で遊んでいるだけで良いのだから。



「真理さん、本当に何もしないで良いのか?」


「はい、今井常務の仕事は【会社に困った事が起きた】その時以外はありませんから、スマホさえ繋がれば別に何していても構いませんよ、なんなら私とデートします? 多分、要社長も喜ぶと思います」


「本当にこんなに暇で良いのか?」



「はい、その代わり、問題が起きた時は本当に危ない仕事ばかりですからね」



確かにそうなのだろう?


ヤクザの力を借りなければどうにもならない...そんな仕事だ。


だが、俺には関係ない。


命のやりとり...それが成立しない。


拳銃やライフルで撃たれても【痛いじゃ無いか】ですみそうな体。


多分、バズーカーで撃たれても、大丈夫な気がする。


少なくとも、どんな存在も、魔族や魔王には匹敵しないだろう。



本当にそうなのか?


少し、試して見た方が良いだろう。



「そうだ、真理さんデートしないか?」


「デートですか?良いですね...何処に行きましょうか?」



生物的な強さを見たいなら...あそこが良いだろう。




「動物園と水族館ですか?...何故此処に?」


《案外、子供っぽい所も...ん? 今井常務、良く見たら私より若く見えるんだけど、何で気がつかなかったのかな~》



「まぁ子供の頃よく来たなって思ってな...久々に来たくなっただけだ、まぁ若い子には退屈だと思うけど」


「そんな事ないですよ? 私は今井常務と一緒なら何処に行っても楽しいです」



ガッツポーズまでとって若いって羨ましいな。


此処には、昔、陽子と恵美を連れてきたな、それより今日は実験だ。



【動物園にて】



【ライオンの場合】



俺はこの動物園で怖い者など存在しない、雌も全て俺の者だ。


【キングオブキングス】とは、正に俺の事だ。


最も、この檻の中にいる以上は【試す事】は出来ない。


また、他のオスライオンに会う事も無いだろう...


もし、俺が野生にいたら、全ての雌は俺の者だ。


どんな奴も俺には敵わない。


【何だ、彼奴は...怖い、怖すぎる】



あれは...人間なのか?


人間が、俺に恐怖を与える、馬鹿なそんな事はあり得ない。


だが...俺は死にたくないから...




「今井常務...ライオンってあんな風にお腹を見せるんですか?」


「俺も初めて見たが、猫みたいだな」


ただ睨んだだけでこれか...凄いな。



ちなみにトラも同じ行動をとった。




【白熊の場合】



俺は地上最強の肉食動物。


この世界に恐れる者は居ない。


沢山のエサを貢いで貰っているから、此処にいて大人しくしているだけだ。


今日も大きな肉の塊を頂いている。


しかし、どいつも此奴も人間は弱そうだな。


何時でも殺せ...殺せ...えっ...


嫌、止めろ...そんな目で俺を見るな、嫌だ死にたくない。



「あの白熊、急にエサを齧るの止めちゃいましたよ」


「そうだな...食欲がなくなったんだろう」



此奴もただ睨んだだけでこれか?




結局、像もサイもカバも...ただ睨んだだけで、戦意喪失したようだった。




水族館にて



【シャチの場合】



「今井常務、ショーが始まらないんですが」


「どうしたんだ」



【シャチの体の調子が悪く隅から動かないので中止となりました】



「折角、ショーを楽しみにしていたのに残念ですね」


「そうだな」





魔族と偏に言うが、ドラゴンみたいな奴やオーガもいた。


それに比べれば、この世界の獣は遙かに弱い。


海に潜って巨大なクジラとかと戦うなら解らないが、少なくとも動物園や水族館に居る様な生物に野生であっても恐れる必要は無いだろうな。


そう思った。



「しかし、今井常務、動物たちなんだか様子が可笑しくありませんでしたか?」


「気のせいじゃないかな?」


「そうですね」



まぁ理由は俺なんだけどね。








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