第28話 娘二人の思惑

しかし、我が姪ながら、凄いな。


今井くんの秘書になる条件に白金女学院の卒業を課したら、


「叔父様、大丈夫です! もう単位は全部取得済みですし、ゼミにも入っていないし白金女学院は卒論を義務でありませんから、実質遊びに行っている様なものですから」だと。


あの、名門白金女学院の単位を3年で全部取得、真理曰く後はただ遊んでいるだけだと言う。


なら、自由にさせて良いだろう。


まったく、もって本当に【トンビが鷹を産んだ】そういう事だ。


此処まで優秀なら、少し位融通をきかせてやっても良いだろう。


普通に恋愛に現を抜かすなら問題だが、相手はあの今井くんだ。


バツ一で齢をくっているが、それ以外は問題は無い。


儂が望む男が相手なのだ、応援位はしてやろう。


ならば、一緒に居る時間が多く作れるようにしてやるのが良いだろう。



「暇ですね~」


「暇だな」



「今は自由時間みたいですよ」


「そうか、それじゃそろそろお昼にするか?」


「はい、今日は何処に行きますか?」


「そうだな、蕎麦でも食いに行くか」


「良いですね、お供します」



俺は神谷がしていた仕事を受けついだ。


だが、この仕事は基本凄く暇だ。


どんな仕事かと言えば【会社が困った時のみする仕事だ】、今回の様な表からどうにもならない地上げや、総会屋やヤクザとの交渉。


完全な裏仕事だ。


俺は最初てっきり神谷がさぼっているのかと思っていたが【本当は違った】


この会社の社員は優秀だ困った事はなかなか起こらない。


その状態なら、俺は何もしないで良い。


その代り、困った事が起きたら、それこそ死ぬ気で仕事をしなければならない。


それが例え、ヤクザや場合によっては政治家相手でも...引けない。



よく考えたら、神谷は働き者だな、この仕事の他に表の仕事の手柄まで横取りしたり、していたのだから。


恐らくは【部長どまり】から脱出したかったのかも知れないな。



まぁ、どっちみち俺から妻を寝取った時点で同情の余地は無いが...




俺は、久々に兎屋に来た。


兎屋は、明治時代から続く蕎麦屋で、文豪に愛された事で有名だ。



「へぇ~ これはこれでお洒落ですね」


「まぁな、ただ結構高いからそうそうはこれない」


「ザルそば1枚で1800円、嫌ですね、常務なんですから、全然安いじゃ無いですか? この天ザル御前の4000円で良いんじゃ無いですか?」


「あのなぁ」


「あの、一言言わせて貰いますが、こう言うのは全部経費で落とせば良いんですよ」


いや、それは不味いんじゃないか?


「それは不味いだろう」


「あの、今井常務がついているのは裏の仕事です、だから領収書すら無くても問題はありません」


「本当に良いのか?」


「はい、だってヤクザに使う裏金、買収につかう裏金に領収書は貰えませんからね...前任者は使途不明金の山でしたよ」


神谷とか、父と言わないのは俺への気遣いからだな。


「はははっまさか」


「多分、ラブホテルから何から全部、会社のお金だった筈です」



そんな立場の奴が、俺の預金を嫁経由でなんで、奪う必要があったんだ。



まさか...本当に遊び半分だったのか...



「そんな奴が何で」



「何で俺の金や家族をですね...それは彼奴がクズだからです」


「真理さんは、その親の事は」



「我が親ながら、本当のクズだと思いますよ? まぁ私としては、赤の他人となんら変わりません、産んでくれたそれだけが唯一の感謝ですね」



それなら良い...俺がやった事で父親が酷い目に遭ったと【知ったら不味いのでは無いか?】と思ったが大丈夫そうだな。


いやその前に、魅了が掛かっているから、俺を責める事が出来ないのかも知れない。



「それで、いつ位から親の事が嫌いだったのかな」


「そうですね...多分高校生の時には大嫌いでしたね...何しろ私の友人にまで手を出すクズでしたから」


「そうなのか? だが、母親は違うだろう?」


「母親ですか? 大嫌いですね、父親が手を出した私の友人に何をしたと思いますか?」


顔が曇ったから多分、相当酷い事でもしたんだろうな?


「解らないな」


「妻子ある男性に手を出した、つまり不倫したと相手に訴えたんですよ! 相手は高校生で、無理やり関係を父が迫ったのに..」


やっぱりとんでもないクズだ。


「それでどうなったんだ?」


「相手は高校生ですが、私と同じ白金の付属高校です、退学を恐れて示談ですよ...少額ですが慰謝料をせしめて」


確かに、名門の大学付属高校の生徒が【不純異性交遊】をしたら退学になるかも知れない。


しかも、白金に通う位だからお嬢様なのだろうから、そんな事が明るみになったら将来に差し支える。


だから泣き寝入りしかなかった、そういう事か。


「凄い話だな」


「ええっ...その友人は、その時の事がショックで未だにカウンセリングに通って半分引き籠りです、ですから今井常務が両親にした事は気にしないで結構ですよ、まぁ死んでも良い様な人間ですから」


高校から恨んでいたなら【魅了】のせいじゃないな。


気に病む必要は無い。


「なら良かった」


「はい、話は戻りますが、そんな訳で、お蕎麦所かステーキだろうがフレンチだろうが全部経費で落としても問題ありません」


「まぁ、秘書が言うなら、大丈夫か?」



結局誘惑に負けて俺達は天ざる御前を堪能した。




【恵美SIDE】


私は、結局、進学を辞める事にした。


今現在の私は高校が終わったら、直ぐにアルバイトに通っている。


アルバイトは倉庫での事務作業にした。


このアルバイトは倉庫の在庫管理などがメインの仕事だ。


今からバイトしながら、そのまま卒業したら正社員として働くつもりだ。


これで良い...今の私はキャンパスライフよりお父さんが大切だ。


ここの仕事もお爺ちゃんの伝手できつい仕事にして貰った。



お母さんとは、普通に話しているが、私にとっては【敵だ】


だってお母さんが不倫をしなければ私はお父さんと暮らせていた。


だけど、それよりも、私が成りたいのはお父さんのお嫁さんだし。


今更、娘に戻りたい訳じゃない。


親子だったから、本当に結婚は出来ないけど、血は繋がっていないから【事実婚】で良いんじゃないかな。


うん、恋人みたいに一緒に暮らせれば良いと思うよ。


その為にはお母さんは邪魔だよね。


まぁお爺ちゃんやお婆ちゃんの手前仲良くしているけどね。




ここ暫く、お父さんを見ていない。


接近禁止命令が出ているから、会えないけど、こっそりと見に行った事がある。


お父さんは、思ったより軽傷だったのかも知れない。


もしかしたら後遺症があるのかな? 凄く心配だよ。


だけど、私が見たお父さんは、普通に歩いていた。


スーツ姿が凄く凛々しくカッコ良い。


ただ、普通のカッコしただけで、輝いて見える程のイケメンだ。


友達と話した事を思い出した、よく考えたら、ヨレヨレの服を着ていても、うんお父さんはイケメンだ。


そんなお父さんが【普通のカッコしたら】うん、凄くカッコ良いよ...お父さんを見ているだけで幸せな気分になる。


気のせいか凄く若返った気がする、すごいなぁ~ お父さん本当は42歳なのに、どう見ても20歳そこそこにしか見えない。


多分、大学生で充分通用しそう、うん今のお父さんならお母さんより絶対に私の方がお似合いだよ。



お父さんの部下なのかな? 若い女の子と一緒に居た。


若い子が良いなら...私の方が上だよね。


まだ、現役の女子高生だし、そして何よりも私は【若い頃のお母さんにそっくり】なんだから。


だから、お父さんの理想な筈だもん。


もう齢とっておばさんになってきたお母さんより絶対にいける筈だ。


お爺ちゃんに頼んで、お父さんと会うチャンスを作って貰う事に成功した。


本当は2人きりが良いんだけど...残念ながらお母さんとお爺ちゃん、お婆ちゃんも一緒だ。


此処で、何か...進展させないと私の未来は見えてこない...


どうしようか? 今から何か考えないといけないよね。



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