第24話 昇進
何だこれは...一体何がおきたんだ。
辞令 今井泰章を、常務取締役に任ず。
辞令 要真理を常務取締役の秘書に任ず。
可笑しいな?
確かに以前はそこそこ頑張っていたが、その功績は神谷にとられていた。
もし、その功績があったとしても、今の俺は係長だ。
良い所、課長、万が一でも次長の筈だ。
この会社には副社長が居ないから、実質、ナンバー3異常だ。
「今井、どんな魔法を使ったんだ? お前を嫌っていた神谷部長が居なくなって、異例の出世だな」
うん、俺にも解らない。
「いや、俺にも何がなんだか解らないんだが...」
「ちなみに、お前の仕事の殆どは俺が引き継ぐ事になった」
「すまんな...それで常務って何すれば良いんだ?」
「もう机も無いからな、とりあえず、社長の所に行くしか無いんじゃないか?」
「そうだな」
【社長室にて】
「よく来たな今井君」
「社長これは一体どういう事ですか?」
これが同性に魅了を使った結果なのか?
まぁ魅了を同性に使うと【信頼】もしくは【友情】が高まるから...その結果がこれか。
「いやぁな、実は専務の使い込みが発覚してクビにしたんだ、今の常務をそのままスライドして専務に昇進させた、その空位になった常務を君にしてみたんだ」
「凄く光栄ですが、流石にこれは...」
「確かに異例の出世ではある、だがこれは試金石でもあるんだ」
「試金石?」
「そうだ、実は神谷部長が失踪してな、都市開発計画が進んでいないんだ、その仕事を君に任せたい...それで失敗すればすぐに部長まで降格だ」
いや、既に可笑しい、係長だった俺からしたら【失敗しても部長】というのはかなり可笑しい。
幾ら魅了がきいているにしても...他にも何かある筈だ。
「それでも、凄く好待遇すぎます」
「はっはは、隠せないか、実はね、私の姪が君の事を凄く気に入ってね、今井君とお付き合いしたいそうなんだ」
要真理の事だ。
神谷が失踪...恐らくはヤクザ絡みで消された可能性が高い。
そうなるなら【真理に魅了を掛ける必要は無かった】
はぁ~ 自分で自分の首を絞めたな。
「ですが、真理さんは相当若いですよね、親子ほど年の離れた私が付き合うなんて」
「何を言っているんだ、君との交際を望んでいるのは他ならぬ真理だ、無論、儂も賛成だ」
「ですが、私は慰謝料の請求の時に会いましたが、真理さんの母親の裕子さんに嫌われていますよ」
「儂の妹の事は気にしないで良い...それに今直ぐと言う訳では無い...まぁとりあえず、今井君の秘書にして置いたから、まずは上司部下から付き合ってみたまえ」
「社長がそうおっしゃるなら、とりあえず上司部下という関係から見させて頂きます」
「そうだな、本当は見合いからそうも考えたが、流石に君が離婚したのは義理の弟の不始末からだ、幾ら姪とはいえそこ迄は出来ない、それじゃ頼んだぞ」
「はい」
しかし、どうすれば良いんだ...まぁ今日はやる事も無さそうだ。
常務室に行く事にした。
しかし...流石は役員の部屋、豪華さが半端ない。
凄いな...ドリンクバーにシャワールームに専用トイレ。
これにベッドがあったらホテルだ。
「今井さん、昇進おめでとうございます」
真理がいた。
まぁ当たり前と言えば当たり前だ...俺つきの秘書なのだから。
「ありがとう」
そう答えた。
「社長目指して二人で頑張りましょうね」
「そうだね」
社長を目指す? これで大体答えが出てしまった。
今回の人事では、恐らく社長だけでなく、真理の考えが大きいだろう。
神谷は社長に恐らく嫌われていた。
だが、社長は妹や姪の真理にはかなり甘い。
俺じたいが【魅了】を社長に掛けて高評価な所に、真理の想い人...そんな事が加わり...多分こうなったのだろう。
社長か?...余りなりたいとは思わないな...
「どうかされましたか?」
「そうだな、俺は何から仕事をすれば良いんだ?」
「父がやり残した、開発からしてみては如何でしょうか?」
「そうだな、どんな仕事か教えてくれるかな?」
「はい」
まずは出来る出来ないは別に...資料を見させて貰った。
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